ベストではなくベターな朝食を目指す

理想を言えば、他にもとったほうがいい栄養や食材はいくらでもあります。しかし、朝食にそこまで手間と時間をかけられないという人は多いはず。だったら、ベストよりベターを目指せばOK。例えば野菜なら、昼食や夕食でも「サラダを1品プラスする」など、比較的簡単にとることができるので、朝食では「野菜はできたら食べる」くらいに考えておきましょう。

それよりも、「これだけはやらない」という線引きを決めることのほうが重要です。私がお勧めしないのは、朝食を菓子パンだけで済ませること。糖質が多くて血糖値が上がりすぎるし、タンパク質やビタミンもほとんどとれません。今まで菓子パンだった人は、それ以外のパンに替えるだけで一歩前進。おにぎりにすれば、さらにベターです。

中には「そもそも朝は食欲がなくて食べられない」という人もいるかもしれません。

考えられる理由は、寝る直前に食べているか、夕食の量が多すぎるかのどちらかです。食事と食事の間は5~7時間空けるのが理想。夜遅くに夕食をとると、食べたものを消化しきれないうちに朝食の時間がきてしまうため、「胃が重くて食欲がない」状態になります。また夕食を食べすぎれば、やはり朝までに消化しきれず食欲が湧きません。

これも理想を言えば、夕食の時間を早めるのが最も効果的です。ただ、仕事の都合でどうしても難しいなら、「夜は朝食のつもりで軽く食べて、朝は夕食のつもりでしっかり食べる」と意識を切り替えてください。

帰宅が遅くなったら、夕食では朝食に食べるような納豆ご飯と味噌汁だけで済ませる。その代わり、夕食に用意してあった肉や魚などのおかずは朝食に食べる。こうして夜を軽く済ませれば、朝はちゃんとお腹が空くはずです。既婚者の場合、「妻がせっかく用意してくれた夕食を食べないわけにはいかない」という人もいると思いますが、「これは朝に食べるよ」と言えば、夫婦間に波風も立たないはず。

仕事ができる人は自分の身体の声を聞く?

3食のうち、朝食抜きが一番デメリットがあります。どうしても食事を抜かなくてはならないなら、寝る直前に食べるような夕食を抜くほうがいい。大事なのは、朝食をおいしく食べられるコンディションに持っていく意識を持つことです。

私が企業で食事指導をしたり、トップの方々のお話をうかがって感じるのは、経営者の方々は「自分の身体の声を聞いている」ということ。一般的に「食べたいから食べる」とか「身体にいいと聞いたから食べる」というケースが多いのに対し、経営者は様々な食べ方や食事内容を試したうえで、「これを食べるとベストな体調を維持できる」と自分自身で判断をする。身体に合う食べ物や食べ方は、細かく言えば人によって異なります。まずは自分にとってのベストを積極的に知ること。これが仕事のパフォーマンスが高い人とそうでない人の差だと感じます。

仕事ができる人は、「ベストなコンディションから、ベストなパフォーマンスが生まれる」ことを知っています。そして、自分のコンディションを測る目安が「朝、快適に目覚められるかどうか」なのです。

快適に目覚められれば、朝食をおいしく食べられるはず。そのために、前日の夜から食事の時間や量をコントロールできる人は、先読みができるということ。先を読む力は、仕事に必須の能力です。つまり朝食を食べることを前提に生活することは、ビジネスパーソンとしての資質を鍛える訓練にもなるのです。ぜひ皆さんも、「朝食を食べる生活」へシフトしてください。

笠井奈津子(かさい・なつこ)栄養士/フードアナリスト
1979年、東京都生まれ。聖心女子大学卒業後、川栄養専門学校を経て栄養士となる。都内心療内科クリニック併設の研究所などで食事カウンセリングに携わり、1万通り以上の食事記録をチェック。現在は、ビジネスパーソン向けに企業内研修やカウンセリングを行なう他、ダイヤモンド・オンラインにて「仕事脳で考える食生活改善」を連載中。著書に、『成功する人は生姜焼き定食が好きだ』(晋遊舎新書)など。《取材構成:塚田有香》(『THE21オンライン』2018年8月号より)

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