これは被相続人が遺言により、相続人以外の者に財産を贈与する「遺贈」があった場合の注意点となりますが、そもそも「特定遺贈」と「包括遺贈」とはどういったものなのかを簡単にご説明致します。

<包括遺贈とは>

特定受遺者
(画像=チェスターNEWS)

「財産の2分の1(50%)をAさんにあげる」

といったように遺言により一定の割合で包括的に財産を指定して行う遺贈のことをいいます。

この遺贈により遺産を取得した者(以下、包括受遺者)は相続人と同一の権利義務を有することになり、被相続人のプラスの財産のみならずマイナスの財産も承継します。

<特定遺贈とは>

「○○市の土地建物をBさんにあげる」

といったように遺言により財産を特定して行う遺贈のことをいいます。

この遺贈により財産を取得した者(以下、特定受遺者)は上記の包括遺贈とは異なり、財産が指定されているため、被相続人が債務を特段指定しない限り、受遺者自身が借金を引き継ぐリスクがありません。

ここで債務や葬式費用を相続税の計算上控除する事ができる者は、その債務などを負担することになる「相続人」や「包括受遺者」です。しかし被相続人が借金等の債務を特定して遺贈したときは、「特定受遺者」は債務を原則負担する事になりますが、相続税計算上「債務控除」ができません。

では具体例を1つ挙げてみましょう。

かねてより娘夫婦と同居していた被相続人Aさんは、娘の婿Mさん(相続人でない)に、「○○銀行の定期預金と自宅の土地建物、また自宅土地建物に係るローンを遺贈する」という内容の遺言を残していたとします。

この場合、MさんはAさんの相続発生後に土地建物に係るローンを支払っていく事となりますが、債務控除はできない事となります。またMさんが葬式費用を負担していたとしても同様に債務控除はできません。

上記具体例では「負担付遺贈(=土地建物をあげるから、ローンを返済してください)」という取扱いとなり、土地建物の相続税評価額からローンの額を差し引いた金額が土地建物の課税価格となるため、税金計算上負債の部分を考慮できる点に変わりはありません。

しかし本来の「債務控除」は出来ないため、あくまで特定受遺者が取得した財産の評価額を限度に、ヒモ付きの債務しか控除できない点が注意すべきポイントとなります。

一概に「遺贈」といっても、財産を取得する者が「相続人」なのか、それとも「相続人以外の者」なのかで債務控除や葬儀費用の取り扱いが異なってきますので、遺言作成の際には注意すべき点の1つとなります。

(提供:チェスターNEWS