土地を相続したときに心配になることとして代表的なものは、相続税はいくらかかるのかということと、相続税以外の手続きは必要なのかということです。
この記事では、土地を相続したときに気になる相続税と相続手続きについてご紹介します。
相続をしたら相続税を払わなければならないことはご存知の方が多いですが、相続税をどのように計算するかについて正確に理解できている方は少ないのが現状です。たとえば「5,000万円の土地を相続したから20%の税金がかかって、自分は相続税を1,000万円支払わないといけない」というようにお考えの方が多いのですが、それは誤解です。
また、土地の相続手続きを行わず、親や祖父母の名義のまま放置されている例が多々ありますが、あまりおすすめできることではありません。
これからご紹介する内容で、土地を相続したときに何をするべきかをご理解いただければと思います。
1.土地を相続したらするべきことは相続税の納税と相続登記
土地を相続したとき、するべきことは次の二つです。
- 相続税を納める
- 土地の相続登記をする
相続税は期日までに納めないとペナルティーがかかる
相続税は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内に現金で一括して納めることが定められています。
10か月もあれば余裕があるようにも思われますが、この期間内に遺産の分配について遺族どうしで話し合わなければなりません。遺族どうしで少しでも意見の違いがあると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。
期日を過ぎると、延滞税、無申告加算税などが課され、負担額が増します。相続税の納税は、期日を守ることが大切です。
土地の相続登記は早めに済ませるのがベター
土地は登記することで所有権が記録されます。相続した土地は、相続登記をして所有権を相続人のものに書き換える必要があります。
相続登記には期限がありません。実際に、親の名義や祖父母の名義のまま土地を使っている方もいることでしょう。相続登記をしなくても当面は実害はないのですが、相続登記をしないで長期間放っておくことにはデメリットがあります。
相続登記をしないで長期間放っておくと、親から子、子から孫へと代替わりするにつれて相続人が増えていきます。のちに、土地を売却することになった場合は、これらの相続人全員の同意を得る必要が生じます。代替わりを経て相続人が増えると、普段から連絡を取っていないどころか、会ったこともない親戚と話し合うことになり、手続きが非常に面倒になります。
後々のことも考えて、相続登記は早めに済ませることをおすすめします。
2.相続税を納める
相続した財産には相続税がかかります。土地を相続した場合も、相続税を納める義務があります。
しかし、「5,000万円の土地を相続したから、この土地の相続税は○○円」というように、土地の価格だけをもとに相続税の額を求めることはできません。
なぜなら、相続税は土地以外の財産をすべて含めた遺産総額をもとに計算するからです。
この章では、土地を相続したときの相続税の計算方法について順を追って説明します。
2-1.遺産総額を計算する
先ほどお伝えしたように、土地の価格だけがわかっても相続税の額は計算できません。相続税を計算するためには、まず、土地以外の財産を含めた遺産総額を計算します。
遺産総額を計算する具体的な方法は、「土地の相続税を計算する3つの手順を徹底解説」ご参照ください。 (「1. 遺産の総額を決定する」で、遺産総額の計算方法が詳しく説明されています。)
土地の価格を計算する
相続税を計算するときは、財産の価格は時価ではなく、「相続税評価額」という相続税を計算するための価格を使用します。
土地の相続税評価額は、固定資産税評価明細書に記載されている価格を1.14倍することで、おおよその額が求められます。
土地の相続税評価額の計算についてさらに詳しく知りたい場合は、「これで分かる!相続税路線価から土地の価格を計算する方法」をご参照ください。
2-2.相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除がある
相続税を計算する上での遺産総額が計算できれば、次は、相続税がかかるかどうかを確認します。
相続税には基礎控除があり、遺産総額から基礎控除額を差し引いた部分が課税の対象となります。つまり、遺産総額が基礎控除額より少なければ相続税はかけられません。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(※)
(※)相続放棄した法定相続人も数に含めます。法定相続人の数に含めることができる養子(普通養子)は、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までです。
2-3.相続税の申告と納税
遺産総額が基礎控除額を超えて相続税がかけられることがわかれば、できるだけ早く相続税の申告と納税の準備をしましょう。
相続税の申告は税理士に依頼する
相続税の申告と納税の期限は、通常は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。
相続税の申告書の用紙は各地の税務署に備え付けられているほか、国税庁のインターネット上のサイトからもダウンロードできます。しかし、不慣れな人が自分だけで相続税の申告書を作成することは、極めて困難です。何とか作成できたとしても、遺産総額や税額の計算を間違えている可能性が高いです。
相続税には、さまざまな特例や税額の控除があり、結果として相続税を払わなくて良くなる場合もあります。特例を適用できることを知らずに、納めなくても良い税金を払ったり、逆に特例が適用できないのに特例を適用した税額で申告して、追加で税金を払ったりすることもあります。
相続税の計算を間違えて税金を払い過ぎたのであれば、返してもらうことができます。一方、税金が不足していたのであれば、不足分を支払った上に過少申告加算税がかけられるため、余計な負担が生じます。
こうした危険性を避けるため、土地を相続した場合は、相続に精通した税理士に相続税の申告を依頼することをおすすめします。
納税資金は早めに用意を
相続税の納税は原則として現金で一括納付します。相続した財産が不動産など現物だけというような場合は、納税のための資金を用意しなければなりません。
納税期限までに納税資金が用意できなければ、場合によってはせっかく相続した財産を処分することにもなります。相続税には延納や物納といった制度がありますが、適用するにはさまざまな制約があります。
納税資金の準備には早目にとりかかるようにしましょう。
2-4.相続税の税額を確認する
相続税の申告書を手順に従って作成すれば、相続税の税額は計算されます。しかし、どれぐらい相続税がかかるかを早く知りたい方も多いのではないでしょうか。
そこで、相続税の総額の目安を求めることができるツールをご紹介します。
相続税シミュレーション設定された項目に必要事項を入力して「相続税を計算する」ボタンを押すと、相続税の目安となる額が示されます。・ 遺産総額:「2-1.遺産総額を計算する」でご紹介した方法で求めた遺産総額を入力します。・ 配偶者の遺産取得割合:未定であれば50%と設定します。・ 法定相続人:多くの場合、被相続人の配偶者と子になります。その他の例については、「相続順位を知りたい方必見!誰が相続人になるのかを知る方法」をご覧ください。
このツールで表示される税額は税法上の各種の特例を反映していないので、あくまでも目安にすぎませんが、簡単な入力でおおまかな税額を知ることができます。
3.土地の相続登記をする
土地を相続すると、相続税の納税以外に、相続登記という手続きが必要になります。
3-1.相続登記の手続き方法
相続登記は、相続した土地がある場所を管轄する法務局で行います。郵送やインターネットによる申請もできます。
手続きに必要な書類は次のとおりです。
- 相続登記申請書
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本または抄本
- 相続関係説明図
- 固定資産税評価証明書(登録免許税の算定根拠として添付)
- 不動産を相続する人の住民票の写し
- このほか必要に応じて、遺言書、遺産分割協議書、印鑑証明書
相続登記には登録免許税という手数料がかかりますが、登録免許税の額は固定資産税評価額の0.4%です。
相続登記の手続きは自身で行うこともできますが、司法書士に依頼することもできます。特に、戸籍謄本の取り寄せは、本籍地が遠い場合や相続人が多い場合には非常に手間がかかります。そのような場合は、戸籍謄本の取り寄せから相続登記まで司法書士に依頼するほうが確実です。
4.まとめ
ここまで、土地を相続したときに何をするべきかについてお伝えしてきました。土地を相続したときにするべきことは、相続税を納めることと、土地の相続登記をすることです。
相続税の納税は、まず土地以外の財産を含めた遺産総額を求めて、その後、税額を計算するという流れになります。自分で手続きをすることも可能ですが、間違いのない納税をするためには、相続税に精通した税理士に申告書の作成を依頼することをおすすめします。
相続登記は土地の所有権を相続人のものに書き換える手続きです。期限は定められておらず、急いで相続登記をしなくても実害はありません。しかし、長期間放っておくと、将来売却することになった場合などに手続きが非常に面倒になります。手続きは司法書士に依頼することもできるので、早めに着手しましょう。(提供:税理士が教える相続税の知識)