自分は相続人になるのか?また、誰が相続人になるのか?こういった疑問から、法定相続人について調べていると、「相続順位」という聞きなれない言葉がたびたび登場します。

「相続順位」とは、法定相続人になることができる順番を示すものです。まず、亡くなった被相続人の配偶者は順位とは関係なく常に相続人となります。ただ、子供や両親、兄弟については、常に相続人になるわけではなく、法定相続人になれる順番がそれぞれ決められています。子供は1番、両親は2番、兄弟は3番と言った具合です。

この記事では、「相続順位」について詳しく解説をしていきます。「相続順位」が正しく理解できれば、どういった場合に誰が相続人になるのかということを正しく理解できるようになります。

「相続順位」の定義と代表的な3つのパターン&簡単判定フローチャート
(画像=税理士が教える相続税の知識)

1.相続順位とは民法で定められた遺産相続をすることができる者の順番

相続順位 相続人になれる者
第一順位 子(直系卑属)
第二順位 父母(直系尊属)
第三順位 兄弟姉妹

相続が発生した場合に、亡くなった人の法定相続人となれる者には民法で定められた順番(順位)があります。
これを相続順位と言い、子供は第一順位、父母は第二順位、兄弟姉妹は第三順位と決められています。

先順位の者がいれば相続人になることはできず、例えば第一順位の子供がいる場合には第二順位の父母や第三順位の兄弟姉妹は相続人になれません。

2.これだけ見れば、相続順位が分かる

相続順位とは、亡くなった人の遺産や借金等を誰が相続することになるのかを定めた優先順位のことです。この相続順位の確認方法を理解することで誰が相続人になるのかを知ることができます。

2-1. 相続人の順位は第3順位までのグループに分かれる

故人の遺産や債務は相続発生後に相続人に引き継がれます。そして故人の遺産や債務を引き継ぐ相続人は、民法によって定められています(民法886条~895条)。

この民法の定めを分かりやすく解説しますと、相続人になることができる人は3グループに分かれることになります。

その3つのグループに該当しない人は内縁の妻や同居人等、どんなに故人と親しい関係にあったとしても法律上は原則として遺産を受け取る権利は生じません。それでは次にこの3つのグループについてみていきましょう。

大原則:配偶者は必ず相続人になります。

第1順位:子供、代襲者※である孫・養子
第2順位:父母(父母が亡くなっている場合には祖父母)
第3順位:兄弟姉妹

※ 子供が亡くなっている場合には、相続する権利が子供の子供(孫)に移ります。これを代襲と言い、権利が移った孫のことを代襲者と言います。

この順位の意味について解説します。

まず考え方の中心となるのは

「相続人に該当するのかどうかを調べたい人が故人とどういった関係にあるか」

です。

例えばあなたが故人の兄である時、あなたは第3順位グループとなります。

そこで故人に子供がいた場合には子供は第1順位ですので、そこで相続人が確定しますのであなたは相続人ではありません。

次に故人に子供がいない場合でも故人の父が生きていれば父は第2順位ですので父が相続人となり、そこで相続人が確定しますのであなたは相続人ではありません。

最後に第1順位、第2順位に該当する関係性を持つ人がいない時にはじめて第3順位グループの兄であるあなたが相続人になるのです。

つまり相続順位とは相続人に該当するかどうかを判断する優先順位ということがいえます。

2-2. 相続人発見カンタンフローチャート

前項では相続順位の考え方について紹介しましたが、相続順位の考え方をフローチャートにして分かりやすく相続人を確定できる表を下記に掲載しています。

このフローチャートに沿って「はい・いいえ」で進めていくだけで誰が法定相続に該当するのかを知ることができます。

「相続順位」の定義と代表的な3つのパターン&簡単判定フローチャート
(画像=税理士が教える相続税の知識)

また本サイト別記事で相続人の範囲がすぐに分かる方法についてもより詳しく解説していますので、「相続人の範囲がすぐに分かる方法(簡単フローチャート付)」についての記事も参考にしてください。

2-3.相続順位の3つのパターン

前述の相続人発見カンタンフローチャートで、誰が相続人になるのかはお分かりいただけたかと思いますが、具体的に想定される代表的な相続順位のパターンを3つご紹介します。なお、いずれの場合も配偶者は相続順位に関わらず常に相続人となります。

「相続順位」の定義と代表的な3つのパターン&簡単判定フローチャート
(画像=税理士が教える相続税の知識)
「相続順位」の定義と代表的な3つのパターン&簡単判定フローチャート
(画像=税理士が教える相続税の知識)
「相続順位」の定義と代表的な3つのパターン&簡単判定フローチャート
(画像=税理士が教える相続税の知識)

3.よくある相続人の順位についてのQ&A

この章ではよくある相続人の順位ついてのQ&Aについて解説していきます。

Q養子は相続人になりますか?

A.養子縁組を行うと実の親子関係が法的に生じますので、養子も第1順位で相続人となります。

Q離婚歴がある場合に相続人の順位は変わるか?

A.まず婚姻関係にある配偶者は必ず相続人となりますが、離婚した時点で相続関係は消滅しますので相続人ではなくなります。また子供の立場からは親が離婚しても子であることには変わりないため親が離婚していても継続して第1順位の相続人であり続けます。

Q遺言がある場合には相続順位はどうなりますか?

A.遺言は相続順位にさらに優先して効力を発生しますので相続順位に大きな影響を与えます。例えば遺言で友人に全財産を相続させると記載されていた場合には、本来相続人でない友人が原則として全財産を相続する権利を持つことになります。

しかし民法は遺留分といって遺言によっても侵害することができない最低限の相続人の権利を認めていますので、本来相続人であった人は遺留分を請求することができます。

Q再婚した相手の連れ子は相続人になりますか?

A.再婚した相手の連れ子は血縁関係がないため相続人になりません。再婚した場合、夫婦間では婚姻によって相続関係が生じますが連れ子の場合には養子縁組をすることで子供と同様の立場としての相続関係が生じます。

このため再婚した相手の連れ子に将来相続が発生した場合に遺産を相続させたい時には、養子縁組をすることが重要です。

Q犯罪等を行った相続人の権利をなくすことはできますか?

A.相続人が重大な犯罪行為を行って有罪判決を受けているような場合には、相続人の廃除といって家庭裁判所が認めれば相続権をなくすことが可能です。

さらに相続欠格といって次のような事実があった場合には家庭裁判所等の認定なく自動的に相続権を失います。

参考条文

民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

民法892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

4.まとめ

この記事では相続順位についての解説を行うと共に誰が相続人になるのかを知る具体的な方法や、相続順位についてのよくあるQ&Aについて解説しましたので理解が深まったと思います。相続順位を知って相続人の範囲を知ることは相続対策や相続手続きの出発点となりますのでこの記事を参考に次のステップに進んでください。

なお、法定相続人についてのこの他の論点を詳しく知りたい方は、「 相続で必ず知っておくべき法定相続人の基礎知識」をご覧ください。(提供:税理士が教える相続税の知識