平成27年より日本の全世帯に発送されて今後の運用拡大が見込まれるマイナンバーについて、「自分に関係あるんだろうか?」「知らないと損をすることがあるんだろうか?」と気になっている人も多いと思います。
実際にマイナンバーについて知っておかないと損をすることや注意点があります。
この記事ではマイナンバーの基礎知識をはじめとして、個人事業主、フリーランス、サラリーマン、税金の3つの大きなパートに分けてマイナンバーの具体的な利用シーンや知らないと損をする話をまとめていますので参考にしてください。
1.知っておきたいマイナンバーの基礎知識
この章ではまず全ての人が対象となるマイナンバーについての知っておきたい基礎知識を解説しています。
1-1 マイナンバーの基礎知識
マイナンバーは、一生使うものです。番号が漏えいし、不正に使われるおそれがある場合を除き、一生変更されませんので、大切にしてください。
【マイナンバーが役に立つシーン】マイナンバーを利用して生活が便利になると言われていますが、実際にどのようなシーンでマイナンバーが役立つのかをまとめてみました。・住民票、印鑑証明書、戸籍をコンビニで取得できる→別途マイナンバーカードが必要ですがすでに全国コンビニで利用できる状態で大変便利です。・健康保険や年金、納税者番号といった今までバラバラだった公的な個人番号が全てまとめられて便利になる→マイナンバーさえあればいちいち色んなカードを提示しなくてすみます。・引っ越す際に役所にマイナンバーを知らせるだけで「電気・水道・ガス等」の住所変更を自動的に行ってくれる→こちらはまだ導入されていませんが今後そうなっていく予定です。・年金の受給手続きや各種申請を年金事務所に行う際にマイナンバーを提示・後期高齢者医療制度の各種申請でマイナンバーさえあれば手続きできる→高齢者の方に親切な制度となります。マイナンバーさえあれば手続きが楽ですね。・災害で被災した際に助成金や補助金の申請、本人確認がマイナンバーで全て行える→被災者の本人確認等がスムーズになります。・「マイナポータル」というサイト上で様々な手続きが行えます(平成29年1月~)
この他にも私たちの生活の様々なシーンでマイナンバーが今後導入されて手続きが一元化されていく予定です。あなたが今、お持ちの財布の中身のカードは何枚ありますか?
その大量のカードが全て1枚になったら便利だと思いませんか?
マイナンバーについては個人情報の流出等のネガティブなマスコミ報道もありますが、基本的には私たちの生活を便利にするものだという認識のもとで上手く活用していくことが大切です。
マイナンバーのことについて分からないことがあれば、政府が無料電話相談窓口やHPで積極的な情報提供をしていますので活用してみてください。
【マイナンバーについて政府運営サイト】
1-2マイナンバーカードの申請は義務ではない
平成27年の秋ごろに日本の住民票がある全世帯に発送された封筒には以下の4点のものが入っていました。まだ受け取っていないという方はすぐにお住まいの市区町村役場に問い合わせをしましょう。
この①通知カードにマイナンバーが記載されています。このため通知カードを見ればあなたのマイナンバーは分かるのですが、②に「個人番号カード交付申請書」というものが同封されていました。
下記の図のような顔写真付きのカードの取得を申請するための申請書です。
平成27年のマイナンバー発送当時は「個人番号カード」という名称でしたが、分かりにくいという声が相次いだので、「マイナンバーカード」という名称に変更になっています。
このマイナンバーカードの申請は義務に思えますが、現状では申請が義務化されておらず政府としては推奨というスタンスです。
マイナンバーカードがあればコンビニで住民票や印鑑登録証明書が取得できるといった便利なこともありますので、そういったメリットを利用したい方は申請するとよいでしょう。
1-3マイナンバーを悪用した詐欺に要注意
マイナンバーについてマスメディアではネガティブな報道が多くありますが、その多くがマイナンバーによる「個人情報の流出」「詐欺」等といったものです。
マイナンバーをすでに導入しているアメリカ等では実際にマイナンバーを利用した詐欺事件が数多く発生しています。例えばこのような詐欺が想定されています。
○○区役所のマイナンバー管理係のものですが、あなたのマイナンバーが流出してしまったようです。つきましては現状のマイナンバーを変更する必要があり、変更手数料として3万円かかります。変更手数料については振り込みでも可能ですので、今から申し上げる口座に振り込んでください
こういった詐欺の手口です。
しかしポイントとしてはマイナンバーを直接利用して何か金銭を奪い取るというわけではなく、あくまで詐欺の糸口として「マイナンバー」という言葉を使っている点です。
このため必要以上にマイナンバーについてのリスクを感じる必要はなく、これまでと同様に詐欺に引っかからないように自己防衛していくことが大切ではないでしょうか。
2.【個人事業主・フリーランス・会社経営者編】
この章では個人事業主・フリーランス・会社経営者の方がマイナンバーについて注意しなければならない点を紹介していきたいと思います。
「個人事業主・フリーランス・会社経営者とマイナンバーがどういう関係があるの?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、(1)従業員を雇用している場合と(2)顧客からマイナンバーを預かる場合の二点において関係してきます。
2-1従業員に給料を支払っている場合
個人事業主が従業員を雇用している場合には従業員からマイナンバーを聞かなければなりません。それは下記のように雇用主としてマイナンバーを記載した書類を行政機関に提出する必要があるためです。
【マイナンバーの記入が義務づけられている書類】
- 給与所得の源泉徴収票
- 給与支払報告書
- 社会保険に加入している場合は、社会保険関係の書類
従業員にしっかりと説明してマイナンバーを提出してもらいましょう。また預かった従業員のマイナンバーは重要な個人情報ですので、鍵のかかった金庫等に情報を保管するかマイナンバーセキュリティについてサービスを提供している事業者に管理を依頼するといったマイナンバー流出阻止のための工夫も必要です。
【マイナンバー管理の方法】
- 社内の鍵付きの金庫に従業員から預かったマイナンバー書類を保管する
- 各システム会社が提供する専用のマイナンバー管理業務システムを導入する
- マイナンバー管理そのものを包括管理してくれる外部業者に管理をすべて外注する
2-2顧客からマイナンバーを預かる場合の管理上の注意点
業種によっては顧客からマイナンバーを預かる可能性もあります。そしてマイナンバーも個人情報である以上は外部流出しないように情報の取り扱いに注意が必要です。
顧客からマイナンバーを預かる業種としては次のような事業者があります。
・税理士事務所、会計事務所、社会保険労務士事務所等の士業事務所 税務署への各種申告書や申請書に納税者のマイナンバーを記載する欄があるため
・銀行、証券会社、生命保険会社等の金融機関 税務署へ提出する法定調書(投信、利息、保険金等)にマイナンバーを記載して提出しなければならないため
このようにマイナンバーを顧客から預かる事業者の特徴としては、「税務署へ提出する書類にマイナンバーの記載が必要であるため」という理由が挙げられます。
そういった意味ではそういった理由がない限りは顧客からマイナンバーを預かる機会というのはほとんどないでしょう。
マイナンバーを預かった後の情報管理が重要です。再度の使用予定がなければ情報を破棄するかもしくはセキュリティがある専用のソフト等でデータ管理するかのいずれかが考えられます。
3.【サラリーマン副業編】
この章では企業勤めのサラリーマンが関係するマイナンバーのことについて解説していきます。サラリーマンの場合、マイナンバーは仕事でそこまで影響はしないですが注意点もありますので確認しておきましょう。
3-1マイナンバーで副業が会社にバレない方法
マイナンバーの導入により企業から税務署へ提出される法定調書にマイナンバーが記載されるため、副業を会社に内緒でしているサラリーマンの方は不安を覚えているかもしれません。
しかし結論から言いますと会社にマイナンバーを提出しても副業がバレることはありません。あくまでも「税務署が」所得を把握するための取り組みですので必要以上に怖がる必要はないのです。
会社に内緒で副業をしているサラリーマンの方は引き続き下記の事項に注意しましょう。
【副業が会社にバレない方法】 ・毎年の確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」を選択すること
この一点に尽きます。確定申告書に住民税の徴収方法を「普通徴収」か「特別徴収」のどちらにするのか○を付ける欄がありますので忘れずに普通徴収に○をつけましょう。
特別徴収とは会社が給与から住民税を源泉徴収する方法ですので、特別徴収を選んでしまうと会社からの給料以外にも収入がある場合には会社に他の収入情報が流れてしまいます。これはマイナンバーの提出に関わらず普段から副業をしている人にとっては注意すべきことです。
3-2年末調整や確定申告でマイナンバーが必要
・勤務先に提出しなければならない理由 サラリーマン(給料を受け取る全ての人)は、勤務先からマイナンバーの提出を求められます。これは企業が従業員のマイナンバーを知りたいわけではなく、年末調整後に税務署に提出する源泉徴収票や法定調書にマイナンバーの記載が義務付けられたためなのです。
このため勤務先からマイナンバーの提出を求められた際には提出が必要となります。
・確定申告をしている人は確定申告書にマイナンバーの記入欄がある サラリーマンの人でも確定申告をしている人は確定申告書にマイナンバーを記入する欄がありますのでマイナンバーが必要となります。
【豆知識】サラリーマンは原則確定申告が不要サラリーマンは通常勤務先が年末調整といって、年末に医療費や扶養控除等を加味して一年の税金計算をしてくれます。その結果、税金が不足している人は追加で給料から天引きされますし、税金を払い過ぎている人は年末調整で還付されます。このため確定申告は原則不要なのです。ただし、次のような人はサラリーマンであっても確定申告が必要です。・年収が2,000万円を超える人・給与以外に年間20間年以上の所得がある人・2か所以上から給料をもらっている人で、1か所の給与所得が20万円を超える人等々
4【税金編】
ここまで本記事を読まれた方であれば、税務署はマイナンバーをもとに様々な情報を収集するということがイメージできたかと思います。この章ではマイナンバーと税金の関係について解説していきます。
4-1マイナンバーは税務署にとって都合がいい制度
税務署の仕事は納税者から適正な税金を納付してもらうことにあります。真面目に払っている人が損をするような状況にしてはならないという土台があります。
一方で日本の納税制度は「確定申告制度」であり、納税者が「自分で」税金を計算して納付する方法です(サラリーマンは源泉徴収なので自動天引き)。
そうすると収入をごまかしたり、財産を隠したりするいわゆる脱税を行う人もいるのが実状です。そこで税務署職員は日々、納税者の収入や資産状況を「調査」しているのです。
しかし1億人以上いる納税者のすべての収入や資産状況を把握することは容易なことではありません。
そこで登場したのがマイナンバーです。
確定申告書や、給料の源泉徴収票、各種支払調書等、税務署に提出するほぼ全ての書類にマイナンバーを記入してもらい、マイナンバー一つで全ての情報を一元管理できるような仕組みを考えました。
マイナンバー制度が定着した数年後には税務署はマイナンバー一つで納税者の収入や資産状況を把握できるようになると言われており、税務署の調査の事務手続きが大幅に軽減されます。
これがマイナンバーは税務署にとって都合がいいと言われる理由なのです。
4-2マイナンバーで相続税逃れが不可能になる
マイナンバー導入によって影響を受けるのが大きいのが資産家やいわゆる富裕層と言われる人です。
平成28年時点ではまだ導入されていませんが、平成30年までには金融機関の口座情報とマイナンバーが連動することがほぼ閣議決定されています。
税務署はマイナンバー一つで納税者の預金情報を網羅的にすぐに把握できるようになるのです。財産を多額に保有する資産家にとっては自分の資産内容が全て税務署にガラス張りになってしまうこともあり、将来の相続税を不安視する資産家が増えています。
【豆知識】マイナンバー導入前から税務署は個人資産を調べる権限があったマイナンバーが預金口座と連動することで税務署が個人預金を瞬時に調べることができるようになりますが、実はマイナンバー導入前から税務署は個人の資産を調査する権限を有していました。
具体例で見てみましょう。 余命半年のAさん。預金だけで1億円程度の財産があり、自分亡きあとの相続税を軽減させるべく近所のATMで50万円ずつを複数回にわたって引き出し合計5000万円をタンスの引き出しに隠しました。
Aさんに相続が発生し、相続人である子は税務署にタンスの現金は見つからないだろうと考えて、死亡時点で預金口座にあった5000万円の銀行預金のみを申告しました。
すると後日税務署がやってきてAさんが亡くなる前に引き出した5000万円はどこにいったのですか?と聞かれてしまいました。
これは税務署が故人の預金口座の残高や異動履歴を相続人の許可なく勝手に調べることができるためなのです。このようにマイナンバー導入前も税務署は財産内容を調べることができました。
マイナンバー導入によって変わる点は、
マイナンバー導入前よりも調査にかける時間が効率化によって軽減される
ということなのです。税務署には財産内容は知られてしまうという前提のもとで正しい相続税対策を行う必要があります。
参考:「 これさえ読めば安心!相続税の税務調査パーフェクトガイド」 参考:「 相続税がゼロ円に!税理士が厳選する相続税対策完全ガイド」
5.まとめ
この記事ではマイナンバーについての網羅的な基礎知識と、個人事業主・フリーランス・サラリーマンといった注意すべき事項がある対象者別にマイナンバーとの関連性を説明してきました。
また最もマイナンバーと関連性の高い税金についても解説してきましたので、理解が深まったかと思います。この記事を参考にマイナンバーについて自分にどのような関係があり、今後どのようなことに注意していかなければならないのかを確認してください。(提供:税理士が教える相続税の知識)