会社員の場合、給与から天引きされている「厚生年金」。そもそも、「厚生年金を自分は将来受け取れるのだろうか?」「結局、月々いくらもらえるの?」など、少子高齢化のなかで不安が膨らむ人も多いと思います。
実際、年金にまつわる法制度は年々変化しており、ここを押さえておかないと、現役のうちにいくら準備しておけばよいのかがわかりません。ここでは、安心して老後を迎えるために知っておきたい厚生年金の受給要件や年金額について紹介します。
そもそも厚生年金ってなに?
・国民年金との違い
厚生年金保険とは社会保険のひとつで、主に会社に勤める従業員などを対象にした年金制度です。20歳以上60歳未満の人に加入が義務付けられている国民年金(基礎年金)に上乗せする形で保障され、保険料は会社と従業員が半分ずつ負担することが特徴です。
つまり、会社員であっても国民年金には加入しており、厚生年金は国民年金を内包しているといえます。年金制度では3種類の被保険者がおり、第1号被保険者は自営業や無職の人、第2号被保険者は会社員など社会保険に加入している人、さらにその第2号の被扶養配偶者が第3号被保険者にあたります。
ちなみに、任意で加入できる付加年金や国民年金基金などは、厚生年金に加入できない自営業者などに対して厚生年金に代わる年金として運用されている年金制度です。
厚生年金に加入できる人とできない人
・法人と従業員5人以上の個人事業所は加入義務がある
法人事業所と常時5人以上の従業員を抱える個人事業所は、原則として厚生年金保険に加入しなければなりません。ただし業種により適用されない場合もあります。例えば、農林水産業や弁護士などの法務業やサービス業、宗教業を営む個人事業所は、従業員が5人以上でも雇用保険への加入義務は生じません。
・アルバイトやパートでも厚生年金への加入義務がある場合も
また、厚生年金保険に加入している事業所で常時雇用されている70歳未満の人は原則として加入義務が生じます。アルバイトやパートでも、一般社員と比べ4分の3以上の勤務時間および日数条件で働いている人は厚生年金保険への加入義務が発生する可能性があります。
条件によっては年収が130万円未満であっても厚生年金への加入義務が発生するケースもあるので注意しましょう。特に近年は制度改正によって加入・支給条件が変わってきているので、自分の雇用条件が該当しないかどうか見直してみることも大切です。
気になる厚生年金の受給資格
・2017年8月の法改正、保険料を10年支払っていれば老齢基礎年金の受給対象に
基本的に、厚生年金(老齢厚生年金)は被保険者期間が1ヵ月以上あれば受給できます。しかし、老齢基礎年金は原則として保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が10年以上無い場合は受給資格がありません。2017年7月31日までは該当期間が25年以上必要でしたが、法改正により10年に短縮されました。
・70歳にならないともらえない?今後の年金制度について
昨今、支給開始年齢が65歳から70歳に引き上げられる話題が出ています。定年が60歳なので困った……という人も多いかと思いますが、実は1年以上の被保険者期間があるなどの条件を満たせば現状の制度でも60歳に繰り下げて年金を受け取ることが可能です。ただし、早めに受け取る分、受給額は65歳で受け取るよりも減額されるなどデメリットもあるので注意しましょう。
いくらもらえる?厚生年金の支給額はこう決まる
厚生年金は「報酬比例年金額」「経過的加算」「加給年金額」で受給額が計算されます。詳しく知りたい場合は日本年金機構のホームページや早見表で確認することをおすすめしますが、案外複雑で難しいので、ここではイメージを掴むために65歳以上で受給すると仮定したときのざっくりとした内容を項目ごとにご説明します。
・報酬比例年金額
厚生年金受給額の基本となるベースです。2003年3月分までは賞与を含めない平均給与を用いて計算されますが、制度改正により2003年4月以降分は賞与を含めた平均標準報酬額で計算されます。計算方法の大枠は、この額に生まれ年に応じた率と被保険者期間の月数を乗じるものです。
・経過的加算
これは特に複雑な項目ですが、簡単に言うと60歳以降にも厚生年金に加入していると受給額が加算されるという項目です。60歳までの40年間に480ヵ月全加入している人はそれ以上加算されることはありませんが、学生時代に支払っていないなど、猶予・免除期間がある人にとっては、この加算によって年金受給額を増やせるということになります。
・加給年金額
配偶者や子どもがいる場合に加算される家族手当のような制度です。重要なのは厚生年金保険受給時点での条件が考慮されること。つまり、加算が永遠に続くわけではありません。
厚生年金だけでなく、「じぶん年金」でも備えて
厚生年金には遺族・障害年金や年金額の上乗せなど手厚いメリットがあるのが事実です。
しかし、そもそも厚生年金には受給上限額があります。将来が不安な場合、「企業年金」や「確定拠出年金」「個人年金保険」など、さらに「じぶん年金」を上積みすることも大切です。無理のない範囲でしっかりと将来に備えていくために、年金制度の知見を広げていきましょう。
文・木村茉衣(ファイナンシャルプランナー)/fuelle
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