不動産(土地や建物)を相続して、相続登記(名義変更)をしようと思っているが、そのための費用っていったい総額でいくらくらいかかるのかとお悩みではないでしょうか。
相続登記にかかる費用は、登録免許税と言われる税金が固定資産税評価額の0.4%、そして、専門家に依頼する場合には専門家の報酬が最低5万円ほどかかります。
また、相続人以外が相続で財産を取得する場合には、登録免許税の税率が0.4%から2%になったり、不動産取得税と言われる税金もかかることがあります。
ここでは、これら相続登記にかかる費用を詳細に解説しますので、ご自身でおおよその費用感を計算できるようになって頂くことが可能です。
1.登録免許税と言われる税金が固定資産税評価額の0.4%かかる
相続登記を行うにあたって必ず必要となる費用は、登録免許税と言われる税金です。 この登録免許税は、以下の算式で簡単に計算することが可能です。
相続登記(名義変更)を行う不動産の「固定資産税評価額」 × 0.4%
なお、ここの固定資産税評価額については、毎年5月頃にその不動産の所有者に対して市区町村から送られてくる「固定資産税の納税通知書(課税明細)」に記載があります。
書式については、市区町村によって異なりますが、該当物件ごとに、「評価額」と言う欄がありますので、そちらに記載されている金額が、上記算式で使用する「固定資産税評価額」となります。「課税標準額」という欄に記載されている数字ではありませんので間違えないように注意してください。
例えば、この固定資産税評価額が3,000万円の土地を相続した場合には、3,000万円×0.4%=12万円の登録免許税がかかります。
2.相続人以外が相続で財産を取得した場合
通常であれば、相続によって不動産を取得する者は相続人ですが、例えば遺言書があって相続人以外の者が相続財産を取得することもあるかと思います。
そういった場合は、固定資産税評価の0.4%の登録免許税がかかるという上述の取り扱いが変わってきますので、こちらで解説していきます。
2-1.登録免許税が0.4%ではなく2%かかる
相続登記(名義変更)を行う不動産の「固定資産税評価額」 × 2%
相続人以外が相続した相続した場合の相続登記については、前述の0.4%の割合が2%となります。
なお、インターネットの一部情報で相続人であっても遺言書で「遺贈する」と記載されていたら2%かかりますというような記述がみられますがこちらは誤りです。 昔はそのような時代もあったようですが、現在は改正され、相続人であれば遺言書に「遺贈する」と書かれていても「相続させる」と書かれていても特に関係なく0.4%の率が適用されます。 判断基準は単純に、相続により不動産を取得した者が相続人かもしくは相続人以外かという点です。
2-2.不動産取得税もかかる
相続人以外が相続した場合の相続登記においては、登録免許税の他に、不動産取得税と言われる税金も追加でかかってきます。この不動産取得税は相続人が相続登記を行った場合にはかからない税金です。
この不動産取得税は、原則的には、
土地については固定資産税評価額×3%
建物については固定資産税評価額×4%
となっていますが、例えば住宅用の土地であれば減額の特例があったり、建物についても住宅用であれば様々な軽減の特例が用意されていたりします。
ここでは詳細な解説は省略致しますので、詳しく知りたい方は、「不動産取得税|東京都主税局」を参照してください。
なお、相続人以外でも包括遺贈によって不動産を取得している場合には、この不動産取得税はかからないことになっています。包括遺贈とは、遺言書によって財産を割合で相続することを言います。詳しい説明はここでは省略しますので、詳しく知りたい方は、「知らないと損!包括遺贈・特定遺贈の違い徹底比較ガイド」を参照してください。
3.相続登記にかかわるその他実費
相続登記にかかわる必要な費用は、原則、
固定資産税評価額×0.4%
の登録免許税で、相続人以外が相続登記をする場合にはこの登録免許税が
固定資産税評価額×2%
になるのに加え追加で不動産取得税もかかる可能性があるということは前述のとおりですが、これら以外にかかる費用としては以下のようなものが考えられます。
- 相続登記を行う際に必要となる書類の取得費用実費 → 数千円程度
- 専門家(司法書士)に依頼する場合の報酬
必要書類の取得費用については、例えば戸籍謄本等の取得費用ですが、こちらは数千円程度となります。 また、専門家に依頼する場合の報酬については、次項において詳細に解説いたします。
4.専門家(司法書士)に依頼する場合の報酬相場
相続登記手続きは、ご自身で行うと、手間と時間がかなりかかってしまいますので、よほど時間に余裕がある方でないとご自身で手続きをされることはオススメしません。実際に、相続税申告を行っている弊社のお客様でもほぼ100%の方が、司法書士にお願いしておられます。
なお、司法書士の報酬相場は、最低5万円程度からとなっていますが、当然その内容やボリュームによって、報酬は変わってきます。
- 戸籍謄本等の身分関係書類の取得代行もお願いするかどうか
- 遺産分割協議書の作成もお願いするかどうか
- 相続で取得する物件は複数かどうか
- 相続で取得する物件は複数の相続人で共有で相続するかどうか
- 登記を申請する法務局の管轄が複数かどうか
上記のような要素で報酬が変わってきますが、該当する項目が多ければ多いほど、報酬が高くなるイメージを持っていただければと思います。 なお、もっとも報酬に影響を与える要素としては物件数です。複数の物件の登記を行うにはそれなりの工数がかかりますのでやはり報酬も高額になります。 ただ、数か所程度であれば、全て込みにしても5万円から十数万円の間に報酬は収まると考えて良いでしょう。
5.相続登記を依頼する司法書士の選び方
相続登記の手続代行を依頼することができる専門家は、司法書士です。 では、相続登記を依頼する司法書士はどうやって選べば良いのでしょうか。
相続登記は名義を変更するという手続きですので、どの司法書士に依頼しても結果(名義が相続人に変更される)は変わりません。ただ、依頼する司法書士によって、以下のようなことに違いが出てくるでしょう。
- 依頼してから登記が完了するまでのスピード
- 司法書士報酬
- 接客対応の良し悪し
このようなことを総合的に考えると、やはり相続登記の業務に慣れている司法書士に依頼することが良いでしょう。業務に慣れていれば、やはり登記手続きの効率・スピードも速く、報酬もリーズナブルで対応も良くなるということが想定されるからです。
なお、相続税申告を税理士に依頼しているのであれば、その税理士を窓口にして司法書士を紹介してもらうことも良いかもしれません。理由として、相続税申告で必要な資料と相続登記で必要な資料で重複して利用できるものが多数あるため、相続税申告を行う税理士と相続登記を行う司法書士の連携がうまくとれていれば、業務もスムーズとなり、その分効率的に作業ができ報酬も低くなるからです。
そういったお付き合いの方は、まずインターネットなどで依頼できる司法書士を探し、報酬を確認する。やはり報酬は低い方が良いので、低いところに問い合わせてみると良いでしょう。その上で電話をして対応を確認し、問題なければ実際にお会いしてお話しを聞いてみるのが良いと思います。またその際に、相続登記が完了するまでに時間についても確認するのを忘れないようにしましょう。
6.まとめ
相続登記にかかわる必要な費用は、原則、固定資産税評価額×0.4%の登録免許税で、相続人以外が相続登記をする場合には、この登録免許税が固定資産税評価額×2%になるのに加え、追加で不動産取得税もかかる可能性があります。
これらの費用は、固定資産税の課税明細書さえあればご自身で確認することができますので、一度計算してみて下さい。(提供:税理士が教える相続税の知識)