Scrapboxで思考のネットワークを作る
インプットに活用するのがEvernoteなのに対して、自分の思考をアウトプットするツールとして、私が最近愛用しているのが『Scrapbox』です。アイデアの整理も、原稿の執筆も、Evernoteを使うよりも速く、快適にできます。
何より秀逸なのが、タグの機能。入力したテキストから文字列を指定し、ワンクリックするだけで、その文字列をタグにすることができます。タグを作ると、同じタグが含まれる文書が自動的に抽出されます。
しかも、そのタグのページが即座に作成され、タグについての説明などを書くことができます。
【Scrapbox】
「目下、ライフハック関連で最も熱く注目されているツールがScrapbox。セミナーを開くと、即満員になります」と佐々木氏。
「Evernoteはアナログのファイリングと同じ『分類』の発想ですが、Scrapboxのタグづけは、それとは一線を画しています。分類するのではなく、タグにしたキーワードを含む文章を抽出し、一覧することができるのです。抽出された文書を眺めることで、連想が広がっていくので、情報整理と発想の両面で役立ちます」
Evernoteはフォルダごとに情報を分類して整理するに留まりますが、Scrapboxのタグは、直接の関連性があろうとなかろうと、同じタグを含んでいる文書を一覧できるのが特長です。意図しない偶然の一致や、意識していなかった思考の連なりが発見できます。有機的な言葉のつながりが発想を刺激してくれるので、著述業に従事する者にとっては重宝します。
営業職なら、顧客や取引先の名前をタグにする、といった形で、大いに役立てられるでしょう。
一方、本を書くときには、アウトライナー(箇条書きで入力するテキストエディタ)を使っています。文章を階層化して書けるので、タスクの整理などに最適なツールですが、本の章立てや構成を作るのにも大いに活用できます。
アウトライナーには様々なものがありますが、最も使いやすいのは『Dynalist』でしょう。外での移動中でも、スマホから音声入力すれば、すぐに文字化され、パソコンにも同期できます。
【Dynalist】
文章を階層化して書けるテキストエディタ「アウトライナー」には様々なものがあるが、最近急激に頭角を現してきたのがDynalistだ。
「チェックボックスを入れられたり、期日を記入しておくと、その当日にハイライトされたりと、単なる箇条書きができるテキストエディタを超えて、タスクやプロジェクトを管理できる機能が備わっています。有料プランなら、グーグルカレンダーと連携させることもできます」
日々、進化しているデジタルツール。検索性の高さや、クラウド機能による情報の取り扱いやすさといった従来の強みに加え、思考や発想をサポートする機能も、今後、さらに充実するでしょう。インプット、アウトプットの両面で、ぜひ活用していただきたいと思います。
佐々木正悟(ささき・しょうご)心理学ジャーナリスト
1973年、北海道生まれ。97年、獨協大学卒業後、ドコモ・サービス〔株〕に入社。2001年よりアヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、ネバダ州立大学リノ校実験心理科博士課程に学ぶ。05年に帰国後、効率化と心理学を掛け合わせた「ライフハック心理学」の理論を打ち立て、講演活動と執筆業に携わる。『Evernote 仕事術』(東洋経済新報社)、『イラスト図解 先送りせず「すぐやる人」になる100 の方法』(KADOKAWA)など、著書多数。《取材・構成:林加愛》(『THE21オンライン』2018年11月号より)
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