衝撃的だった日本電産 永守会長の発言

日本株銘柄フォーカス
(画像=cosma/Shutterstock.com)

「尋常ではない変化が起きた。46年経営を行ってきたが、月単位で受注がこんなに落ち込んだのは初めて」「この変化を甘く見てはいけない。いまからもっと悪くなったら、リーマン・ショックに近いことになっていく」

これは1月17日に通期の業績予想を下方修正した日本電産(6594)の永守重信会長が記者会見でお話された内容です。永守会長と言えば長年の日本電産の躍進を支えてきた名経営者として知られています。その永守会長が経営人生で初めて体験するレベルの落ち込みが起きたのがこの11月・12月の2ヶ月だったということです。その後23日に発表された日本電産の決算発表では表の通り10-12月の業績が大きな落ち込みを見せました。

日本電産の四半期決算推移

日本電産の四半期決算推移
(画像=マネックス銘柄スカウター)

また、ファナック(6954)の決算も非常に不安を抱かせる内容でした。下記はファナックが発表した地域別売上高と受注高の推移です。濃いピンクで示された中国の売上高および受注高が前年同期から激減(549→241・578→195)しているのがご覧いただけると思います。ファナックの稲葉CEOは「いつ回復に向かうのか、まったく見えないのが一番大きな問題」と話しています。

ファナック ファナック
(画像=ファナックの決算説明資料より抜粋)

以前から当レポートで中国経済の落ち込みによる業績悪化可能性を意識して守備的なポートフォリオを組むべきではないかとご説明してまいりました。引き続き同じような姿勢で臨むべきではないかとの考えは変わっておりません。

日経平均は2万4000円どころから2万円程度まで2割近く調整しており、中国経済の鈍化リスクは一定織り込まれていると考えていますが、中国経済に底入れの兆しが見られるまでは引続き保守的なスタンスでマーケットに臨むべきではとの考えです。その理由はいまだ中国関連の経済指標が底を打ったかどうか不透明な点にあります。いくつかご紹介してまいります。

まず、中国の製造業PMIをご覧ください。調査元の異なる2つの指標ですが、グラフの通り昨年の夏以降両指標とも悪化を続けており、現在は50を下回っています。31日に発表された1月の中国製造業PMIはわずかに改善しましたが、翌2月1日に発表された1月の財新中国PMIは48.3と前月の49.7から大きく低下し底割れのようになってしまいました。

中国の製造業景況指数の推移

中国の製造業景況指数の推移
(画像=Bloombergデータよりマネックス証券作成)

上記でご紹介したPMIは中国で調査した中国の経済指標ですが、日本から見た指標も明確な好転の兆しは見られていません。以下は国・地域別の工作機械受注の前年同月比の増減率の推移です。12月の中国は前年同月比-56.4%と大幅に減少しました。11月の-67%からするとやや改善していますが、とても底入れと判断できる数値ではないと思われます。

機械受注の推移(前年同月比)

機械受注の推移(前年同月比)
(画像=アイ・エヌ情報センターデータよりマネックス証券作成)

もちろん中国政府も手をこまねいているわけではなく、預金準備率の引き下げなどの金融緩和や積極的な財政政策を行う姿勢を表明しています。また、FRB(連邦準備制度理事会)が金融引き締め姿勢をドラスティックに変更したことも株式市場の追い風となるでしょう。ただ、それらの効果がいつ出てくるのかそしてどの程度出てくるのかはいまだ不透明です。それであれば今しばらくは守備的姿勢で臨むのが賢明ではないか、そのように考えています。

前回レポートでご紹介した銘柄のパフォーマンスは?

だいぶ間が空いてしまいましたが、前回のレポートでは上述したような認識のもと、過去のチャイナ・ショックの際などに堅調だった業種をご紹介し、その業種に属する銘柄の中から業績がしっかりしていながら割高感のない25銘柄をご紹介しました。その後の株価のパフォーマンスは以下のとおりです。25銘柄の平均騰落率は+11.5%とTOPIXを1%上回り、中でも特に注目としてご紹介した5銘柄の平均騰落率は+17.1%とTOPIXを大幅に上回るパフォーマンスを得ることができました。

もちろんこのようにうまくいく場合ばかりではありませんが、できる限り皆様のお役に立てるよう精進してまいります。また、うまくいった場合だけお示しするのではなく、そうでない場合もしっかりと反省できるよう、レポートでご紹介した銘柄についてはその後の株価動向を必ずご紹介するようにいたします。

12月25日付のレポートでご紹介した25銘柄の株価パフォーマンス

12月25日付のレポートでご紹介した25銘柄の株価パフォーマンス
(画像=QUICKデータよりマネックス証券作成)

中でも特に注目としてご紹介した5銘柄の株価パフォーマンス

中でも特に注目としてご紹介した5銘柄の株価パフォーマンス
(画像=QUICKデータよりマネックス証券作成)

足元で投資妙味がありそうな銘柄については第3四半期の決算発表が一巡した段階で、次回のレポートでご紹介するつもりです。本年も銘柄フォーカスレポートをよろしくお願いいたします。

益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2007年にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツ作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。

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