NISA(少額投資非課税制度)は非課税となる上限額が決まっており、非課税枠や投資可能額などと呼ばれる。口座を開設したからには、非課税枠を使い切ることで、できるだけ多くの節税メリットを受けたいと思うだろう。そのための具体的な方法について述べる。

NISAの非課税枠は使い切るのがセオリ-

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(画像=Song_about_summer/Shutterstock.com)

まずは非課税枠の基本的な考え方を理解しよう。

年間の上限額は120万円だ。これは元本の合計額である。例えば12月の最終日にNISA扱いでちょうど120万円の株式を買ったとする。翌年5月31日に5万円の配当を受け、7月に220万円で売った場合、通常は配当金5万円と売却益100万円にそれぞれ約20%、合計で21万円もの税金がかかり、手取りは84万円だ。ところがNISAの非課税枠に収まるように買っているので非課税となり、105万円まるまる受け取れるのだ。

ただし注意点が2つある。売却したら非課税枠は戻らないことと、非課税枠が余っても翌年以降には繰り越せないことだ。

例えば1月1日から10月31日までの間に、株式と投資信託を合わせて80万円分買ったとする。残る非課税枠は40万円(120万円-80万円)だ。11月に保有資産のうち50万円を売却した。しかしその分、残りの非課税枠が増えるわけではなく、40万円のままだ。

もし40万円の非課税枠を残したまま新年を迎えても、この40万円を繰り越すことはできず、翌年の上限額は120万円と毎年変わらないのだ。

最初の例で見たように、約20%の税金がかからないメリットは大きい。NISAの非課税枠は可能な限り120万円をぎりぎりまで使い切りたいものだ。

投資信託の一括投資なら簡単にぴったりの金額を買える

最初の例のように、買いたい株式を120万円分ちょうど買うことはそう簡単ではない。銘柄をいくつか組み合わせたとしても、120万円に足りないか、あるいは超える可能性が高い。仮に残りの非課税枠が10万円のとき、買いたい株式の最低投資額が20万円だったら、NISAではない一般口座で買うことになる。そのままだと非課税枠を使い切れず、10万円分を繰り越すこともできない。

そこで買いやすいのは投資信託だ。金額を指定して買い付けることができるので、欲しい銘柄を120万円と指定して買えばいいのだ。

そもそも120万円もの投資を価格変動性の高い株式で行うことはリスキーだ。どうしても個別の銘柄を買いたいという人は、まず株式を買って、残りの非課税枠を投資信託の一括投資で埋めるという手もある。

一括投資のデメリットとしては、非課税枠を使い切ってしまったら、もうその年に非課税投資はできないことだ。投資したい銘柄が現れても、来年になるまでNISAを使うことはできない。買うタイミングを間違えると、割高な買い物になってしまうおそれがある。

投資信託の積み立て投資は投資初心者向け

もうひとつの方法は積み立て投資だ。証券会社にもよるが、投資信託は金額を指定して定期に自動で同じ銘柄を買い続けることができる。そのため一括投資同様に非課税枠を使い切りやすい。しかも一括投資と違って、タイミングを見極める必要がないので、初心者向きといえる。

例えば毎月10万円を積み立てるようにすれば、12ヵ月で120万円の非課税枠を使い切ることができる。

ひとつ確認したいのは、分配金を再投資するタイプを選んだかどうかだ。投資信託は分配金で同じ銘柄を自動的に買い付ける(再投資する)タイプか、それとも直接受け取るタイプかを選べるものが多い。NISAで前者を選ぶと、分配金発生時に非課税枠を使うことになる。10万円を指定して毎月積み立てていると、12月に買い付けを残した状態で残りの枠が10万円を切ってしまうかもしれない。

このように非課税枠を超える注文をしたときの対応方法は、証券会社によって異なる。注文自体がキャンセルされる場合もあれば、NISA扱いではない一般口座で買い付けが実行される場合もある。

毎月10万円を継続的に積み立てられる人は少ないだろう。それにNISAは2023年までの期限がある制度だ。この短期間に積み立てる金額を集中したい理由が特になければ、つみたてNISAを利用するという手もある。年間の非課税枠は40万円までだが、20年間にわたって有効だ。積み立ては長期に行うからこそ元本の平準化などのメリットが生まれるのだ。

無理してNISAの非課税枠を使い切る必要はない

そもそもの話になるが、必ずしも非課税枠いっぱいまで買う必要はない。投資信託にも元本割れのリスクはある。

元本割れを起こすと、NISAのメリットはデメリットに変わってしまう。非課税期間である5年間を過ぎて持っていた場合、一般口座に移すかロールオーバーするかを選択することになる。前者の場合、その時点の基準価額で元本が修正されるため、もし購入時を下回っていたら、その分は余計な税金を払うことになる。例えば120万円分買ったものが一般口座に移した時点で100万円に下がっていたら、本来の元本である120万円まで回復しただけで、差額の20万円に対して税金がかかる。

ロールオーバーとは、NISA扱いのままにしておくことだ。翌年の非課税枠を使うことになるが、ロールオーバーできる金額には上限がない。例えば元本が120万円で、5年後に200万円になっていた場合、200万円全額をNISA扱いにしておくことができる。ただしその年の非課税枠はロールオーバーだけで使い切ることになるため、新たな非課税投資はできない。

投資は預貯金や収入から考えて無理のない範囲で行う必要がある。もし余裕があり、年間120万円くらいの投資を始めてみたいというのであれば、NISAを利用した投資信託は使い勝手がよいといえる。

投資信託は非課税枠を使い切るのにもってこい

NISAの非課税枠を使い切りたいときには投資信託の一括投資と積み立て投資、どちらも利用しやすい。NISAと投資信託は相性がいいのだ。

文・山田悠記(マネー系ブックライター)/MONEY TIMES

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