学生の多くはアルバイトと切っても切れない関係にあり、大学生のうち8割以上が何かしらのアルバイトをしながら生活しています。中にはしっかり働いて多くの収入を得る学生もいますが、ここで注意したいのが税金や健康保険における「扶養の条件」を満たさなくなってしまう可能性があるということ。 何も考えずに稼ぎすぎると、働く時間を増やしたのに手取りが減ってしまったり、親の税金負担を増やしてしまったりすることがあります。学生のアルバイトについて知っておきたい扶養のルールについて解説します。

そもそも扶養とは?

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(画像=PIXTA)

扶養とは、自力で生活できない者を養うという意味の言葉です。扶養している家族がいる場合、課税所得を下げ税金の負担を軽くする「扶養控除」を利用することができます。学生である子どもを扶養に入れ、扶養控除を受けるためには、以下の条件すべてを満たす必要があります。

1. 納税者と生計を一にしている

扶養する者とされる者が同じお財布から出たお金で生活しているということです。一緒に住んでいなくても、遠方でひとり暮らしをしている子どもに仕送りをしているケースなどはこれに当てはまります。

2. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でない

少しわかりにくいですが、「家業の手伝いをしている人ではない」ということです。

3. 年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)

アルバイトで収入を得ている学生の場合、この103万円という基準を超えてしまうと扶養控除を受けられなくなってしまいます。これは1ヵ月あたり約8万5,000円の収入となります。

最近は雇われ仕事ではなく、YouTubeやフリマアプリなどを使い給与以外の収入を稼ぐ人もいます。その場合は収入から経費を引いた金額が38万円を超えるかどうかで判断します。

扶養に入るとどれくらいお得なの?

その年の12月31日の時点で16~18歳もしくは23歳以上なら「所得税38万円+住民税33万円」、19~22歳なら「所得税63万円+住民税45万円」の扶養控除が受けられます。大学生を扶養している世帯の負担が、特に軽くなるように設定されています。

扶養控除はその金額がそのまま税金から引かれるわけではありません。支払いが必要な税金額を算出する際に、基準となる所得金額から扶養控除の金額を引き、そこに税率を掛けて所得税や住民税を計算します。いくら税金が安くなるのかは、親(世帯主)の所得によっても違いますが、扶養の有無で年間10万円以上の差が出ることも少なくありません。

さらに、親の勤め先が「扶養手当」を出してくれる会社の場合、子どもの収入が上がりすぎることでこの手当が受け取れなくなってしまう可能性があります。あらかじめ会社の手当が支給される基準を確かめておくと安心です。

「103万円の壁」を超えてしまったら、次は「130万円の壁」を意識しよう

アルバイト収入が103万円を超えたら、扶養控除がなくなるうえに、本来は学生でも自分で所得税などを支払う必要が出てきます。そこで「勤労学生控除」の出番です。これは、働いている学生に対する税金の優遇措置で、アルバイト収入が130万円までであれば所得税を負担する必要はありません。

勤労学生控除を受けるための条件は下記のとおりです。3つすべてを満たす必要があります。

(1)給与所得などの勤労による所得があること

(2)合計所得金額が65万円以下で、かつ(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること。収入がアルバイトだけの場合、年間の収入金額が130万円以下ということになります。

(3)特定の学校の学生、生徒であること この場合の特定の学校とは、次のいずれかの学校です。

イ. 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
ロ. 国、地方公共団体、学校法人等により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
ハ. 職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの

勤労学生控除を受けるための手続きは、基本的には年末調整の時期にアルバイト先でもらう「扶養控除等申告書」という書類に必要事項を記入して提出します。2ヵ所以上からお給料をもらっていたり年末調整の時期までにアルバイトを辞めていたりする場合など、会社経由で手続きができない場合は自分で確定申告を行う必要があります。

アルバイト収入が130万円を超えてしまうと、所得税や住民税の負担が発生するだけでなく健康保険の保険料も学生自身で支払うことになります。頑張って働いて収入が増えたのに、130万円を超えてしまったことで手取りが以前より減ってしまうというのは避けたいところです。

親も子も知っておきたいバイト代

税金や社会保険のしくみ上、学生のアルバイトで稼ぐなら「103万円以下」に抑えるか、負担増が気にならないくらい稼ぐかのどちらかにするとよいでしょう。意識せず働いていると、知らぬ間に負担が増えてしまうということにもなりかねません。子どものアルバイト収入は親子で共有しておくのが理想的といえるでしょう。

文・馬場愛梨(ファイナンシャルプランナー・心理カウンセラー)/fuelle

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