決算発表が佳境に

日本株銘柄フォーカス
(画像=cosma/Shutterstock.com)

第3四半期の決算発表がほぼ終わりました。12日までに決算発表を行った3月決算企業のうち前年同期と比較可能だった2,035社の10-12月の経常利益を集計したところ、表のように前年同期と比べて17.5%の減益でした。金融や外需関連業種を中心に冴えない業績となっています。マーケット環境の悪化や当レポートでご紹介してきた中国経済の鈍化が企業決算に現れていると考えています。

企業の決算
(画像=2019年2月13日時点のQUICKデータよりマネックス証券作成)

このような環境下でもしっかりとした業績を残した銘柄は次回のレポートでご紹介します。本日は皆様にやっていただきたい、保有銘柄の決算を簡単にチェック頂く2つのポイントをご紹介します。

気になる銘柄の決算結果をチェックいただきたい2つのポイント

ご紹介する2つのポイントはいずれも私が開発した「マネックス銘柄スカウター」を活用いただければ手軽に実行していただけます。それでは2つのポイントをご紹介します。

●ポイント①足元の3ヶ月の業績「だけ」を見る

企業は四半期ごとに決算を発表するのだから、3ヶ月で見るのはあたりまえではないかと思った方が多いかもしれません。しかしあえてご紹介しているのには大きな理由があります。

日本企業は原則として決算短信で業績の累計値のみ発表します。3月決算の企業は第3四半期の決算発表であれば4-12月の9ヶ月間の累計値を発表するわけです。しかし、当然ながら4-9月の業績はすでに発表済みなので、マーケットが気にするのは10-12月の3ヶ月の業績です。累計値だけを見るのと、直近3ヶ月の数値だけを見るのでは見える景色が全く変わることがあるのです。実例を用いてご紹介します。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)の決算短信
(画像=ガンホー・オンライン・エンターテイメント発表の決算短信)

上記は大ヒットしたスマートフォン向けゲーム「パズドラ」で知られるガンホー・オンライン・エンターテイメント(3765)(以下、ガンホー)が2月1日に発表した決算短信です。ガンホーは12月決算なので、今回の発表は1年分の業績です。業績をご覧いただくと、売上高は0.2%減と微減ですが営業利益は265億円と前期の343億円から22.7%減少しています。パズドラの大ヒットで業績が急拡大したガンホーですが、近年はユーザー離れが起き苦しい業績となっています。ではこの発表の翌日、ガンホーの株価はどう反応したのでしょうか?

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価推移

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価推移
(画像=マネックス証券投資情報サイト)

チャートに示したとおり決算発表翌営業日の2月4日にガンホーの株価はなんと26%近い大幅上昇となりました。あんなに冴えない決算なのになぜこんな株高が起きたのでしょうか?「足元の3ヶ月だけ」を見ることでその答えが見えてきます。

以下の表はマネックス銘柄スカウターから取ったガンホーの3ヶ月ごとに区切った業績です。これまでずっと冴えなかったガンホーの業績ですが、直近の3ヶ月のみ劇的に改善していることがご覧いただけると思います。17四半期連続で前年同期比減収減益だった同社の業績が18四半期ぶりに前年同期比プラスに転じています。会社の説明によれば実施したキャンペーンが休眠ユーザーの復活に寄与し、MAU(Monthly Active Users・月あたりのアクティブユーザー)が回復したということです。期待されていなかった業績復活がポジティブ・サプライズとなり一気に投資家の買いを誘ったと考えられます。(なお、自社株買いの実施を発表したことも株高に作用したと思われます。)

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの3ヶ月業績の推移

ガンホー・オンライン・エンターテイメントの3ヶ月業績の推移
(画像=マネックス銘柄スカウター)

このように「累計値」だけを見た場合と「直近3ヶ月のみ」の業績を見た場合では、全く異なることが意外なほど多いのです。ご自身で直近3ヶ月の業績を確認する場合には、直近の累計業績から1つ前の四半期の累計業績を引き算するという手間が必要ですが、マネックス銘柄スカウターでは最初から3ヶ月に区切った業績をご紹介しています。

ぜひマネックス銘柄スカウターを活用し、保有されている銘柄の3ヶ月業績を見て業績のトレンドがどのようになっているかチェックしてみてください。例えば業績に悪化の兆しが出てきている場合、損切りして業績好調な銘柄への入れ替えを検討するのも良いかもしれません。企業の3ヶ月業績は銘柄スカウターの「企業分析」ページに掲載されています。

●ポイント②業績の進捗率をチェックする

企業は「原則として」通期の業績予想を発表します。「原則として」と記したのは、例えば市況の影響が大きい証券会社などは発表しなくても良いことになっているためですが、ほとんどの企業は業績予想を発表するとお考えいただいて間違いありません。その企業の予想が順調に進んでいるかどうかをチェックできるのが業績の進捗率です。例えば1年間の売上が100億円であると予想している企業の第3四半期時点の売上が70億円であれば進捗率は70%ということになります。

1つの目安として、売上や利益が第1四半期であれば25%・第2四半期であれば50%・第3四半期であれば75%以上であれば順調に進捗していると言えます。今回も実際の決算発表を見ながら考えてみましょう。

オービック(4684)の業績予想

オービック(4684)の業績予想
(画像=オービック発表の決算短信)

上記はシステムインテグレータのオービック(4684)が発表している今期の業績予想です。1年間で710億円の売上高、383億円の経常利益を稼ぐと予想しています。それでは第3四半期時点の業績をご覧ください。

オービック(4684)の第3四半期業績

オービック(4684)の第3四半期業績
(画像=オービック発表の決算短信)

売上高710億円予想に対し552億円、経常利益383億円予想に対し318億円を稼いでいます。第3四半期時点で売上高は77.8%、経常利益は83%の進捗です。それぞれ75%を上回っており、特に経常利益は大きく上回っています。ここまで良い進捗であれば今後業績予想が上方修正されること、もしくは予想を上回って業績が着地することに一定の期待をしても良さそうです。このような銘柄の場合業績への安心感が高いため、景気が不安定なときなどに特に買いを集めやすい傾向があります。銘柄スカウターでは「企業分析」のページで以下のように業績の進捗率をご覧いただけます。

オービックの業績進捗状況

オービックの業績進捗状況
(画像=マネックス銘柄スカウター)

業績進捗率を投資に活用するにあたり1つご注意いただきたいのが、企業によっては「売上や利益が1つの四半期に偏る場合がある」ことです。例えば公共事業で道路舗装を請け負う建設会社などは、1-3月に売上や利益が偏る傾向があります。3月が近づくとやたらに道路工事が行われて渋滞することが多くなりますよね。以下は世紀東急工業(1898)の3ヶ月業績の推移です。

世紀東急工業(1898)の業績推移

世紀東急工業(1898)の業績推移
(画像=マネックス銘柄スカウター)

棒グラフで示された売上高、折れ線グラフで示されたた営業利益ともに第4四半期に大きく跳ねています。こういった企業の場合第3四半期までの進捗率が悪くても、第4四半期で大きく取り返せる場合があります。世紀東急工業の場合、この第3四半期までの経常利益の進捗率は58.6%と低くなっています。しかし、仮に第4四半期で昨年と同じ経常利益を稼げたとすると会社予想を達成することが可能です。このようにややクセのある企業の場合には一工夫必要ですが、重要な分析なのでぜひ実行していただければと思います。

企業決算はどこを見ればよいかわからない・・と言うお客様も多くいらっしゃると思います。まずは保有銘柄についてこれら2つのポイントだけでもチェックし、投資判断に活かしていただければと思います。

益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2007年にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツ作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。

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