話の面白い人は「置き換え力」がある!
語彙は豊富であるに越したことはありませんが、そうはいっても普段の会話の中では、難しい言葉を続けざまに発すればいいわけではありません。難解な言葉の羅列では、たとえ話の内容が面白くても相手には伝わりませんし、会話も続きません。相手に、「この人と話していると楽しい」「話が分かりやすい」と思ってもらうための大前提は、自分の話を理解してもらうこと。的確に短く表現し、わかりやすく伝えることも、社会人に求められる語彙力の一部と言えるかもしれません。
そういった意味では、話を聞く相手に応じて言葉を置き換えることが重要です。
例えば、大学で『論語』を教える際、学生たちが把握しやすい言葉に言い換えています。「子曰く、学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」という一節なら、「勉強したことを自分の考えに落とし込まないと……」などと換言し、話に集中してもらうようにしているのです。
置き換えるためには、一つの意味に対していくつもの言葉の引き出しが必要です。普段から相手を探りながら置き換えて話すことを意識すれば、伝わりやすくなるだけでなく、自分自身の語彙力も鍛えられます。結果として、「この人の話は面白い」という印象を与える好循環につながるのです。
「語彙力を高める4つの方法」
1.音読する
声を出して読むことでバイアスがかからず言葉が耳に届き、語彙や文章のスタイルへの理解力が深まる。機械的に読むのではなく、自分へ読み聞かせることを意識すること。アラームをセットし1分間音読後、調べた語彙をメモすると達成感を得られる。
2.人と話す
上司や取引先など、できるだけ自身が苦手な人と話すよう心がけてみる。目上の人に対して稚拙な表現や思慮が浅い表現をしてしまったときこそがチャンス。他にどういった言い回しがあったのか、調べると語彙が身につく。
3.新聞・ラジオ・映画・ドラマを活用
時代の流れを知ることができるうえに新たな語彙が登場する新聞や、情景を思い浮かべながら聴くラジオは積極的に活用を。また、映画やドラマの台詞は、考え抜かれた短い言葉で書かれており、リズムが良質。セリフに着目しながら映画やドラマを観ることも、語彙力増加に役立つ。
4.単語帳にメモする
学生の単語習得法と同じく、調べた言葉を単語帳にメモするのも良い方法。ここでは言葉だけで覚えようとしないことがポイント。人は1種類だけの記憶を忘れやすい。言葉とともに写真や絵、音、綴り方など3種類ほど結びつけると覚えやすくなる。
山口謠司(やまぐち・ようじ)大東文化大学准教授
1963年、長崎県生まれ。現在、大東文化大学文学部中国学科准教授。中国山東大学客員教授。博士(中国学)。長崎県立佐世保北高等学校、大東文化大学文学部卒業後、同大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現職。『一流の語彙力ノート』(宝島社)など、著書多数。(『THE21オンライン』2019年1月号より)
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