◉注目の不動産所有銘柄


では、実際に多くの不動産を所有する企業や、所有する不動産の含み益(保有資産の「時価」–「取得原価」)が多い企業、またその所属業界を見ていきましょう。

なお、時価は2013年3月26日の終値です。

◯不動産株

不動産関連銘柄の大本命で、多くの不動産を持つ企業が多数あります。
2008年の金融危機前は好調でしたが、最近は低迷していました。それが直近の不動産価格の上昇で持ち直しています。

三菱地所(8802)

丸の内の大家とも呼ばれる三菱グループの中核企業。丸の内を始め数々の有料不動産を所有しています。
元々丸の内自体が、旧三菱財閥二代目総帥である岩崎彌之助が、旧陸軍の練兵場の払い下げを受け開発をしたことに端を発します。
時価総額は約3兆7276億円、所有不動産の含み益が約1兆9445億円になります。

三井不動産(8801)

主に、東京・日本橋界隈を本拠としている三井グループの不動産企業です。日本橋は元々三井グループの前身である越後屋呉服店のあったところであり、日本橋近辺に多くの不動産を所有しています。
時価総額は約2兆4010億円、所有不動産の含み益が約8104億円になります。

常和HD(3258)

ホテルやゴルフ場の運営も手がける不動産開発企業です。
時価総額は約398億円ですが、所有不動産の評価額は約976億円になります。

NTT都市開発(8933)

1986年にNTTグループの電話局跡地などの遊休地開発を目的に設立された不動産企業です。全国主要都市でのオフィスビル賃貸を主力業務としており、近年ではマンションなどの分譲事業にも参入しています。
時価総額は約3715億円ですが、不動産の含み益が4115億円になります。

◯電鉄株

電鉄業界も、沿線開発に合わせて取得した多くの不動産を所有しています。
グループ内に別に不動産会社を立ち上げた企業も多いのですが、自社でも不動産の所有、開発を手がける例も多くあります。

相鉄HD(9003)

大正時代に設立された鉄道事業者、相模鉄道を母体としており、神奈川県にて旅客・貨物鉄道およびローカルバスを運営しています。相鉄本線が乗り入れる横浜駅付近の一等地に数多くの不動産を持つ大地主であり、相鉄グループ内唯一の上場企業です。
時価総額は約1746億円、所有不動産の評価額が約1924億円になります。

東日本旅客鉄道(9020)

鉄道業界の最大手です。名前のごとく首都圏・東日本が地盤であり、不動産賃貸や駅ナカ物販事業が成長しています。
時価総額は約3兆0769億円、所有不動産の含み益が約8046億円になります。

名古屋鉄道(9048)

中部を地盤とする私鉄の大手であり、現在系列子会社の集約、再編に注力中です。なお販売用不動産面積は私鉄最大級を誇ります。
時価総額は約2706億円、所有不動産の評価額が約3723億円になります。

阪急阪神HD(9042)

大阪梅田と神戸・宝塚・京都を結ぶ大手私鉄、阪急電鉄などをはじめ、傘下にホテル、不動産、エンターテイメント(宝塚)、百貨店など多くの事業を納めます。ちなみに創業者の小林 一三(こばやし いちぞう 1873-1957)は、日本で初めて鉄道を起点とした都市開発、流通事業を一体的に進め相乗効果を上げる私鉄経営モデルを独自に作り上げた人物です。
時価総額は約7234億円、所有不動産の評価額が約8924億円になります。

◯渋谷再開発銘柄

「日本一訪ねたい街 渋谷」をコンセプトに、東急グループが渋谷駅及びその周辺の開発に力を入れています。2012年4月には渋谷ヒカリエがオープンし、2013年3月には副都心線と東急東横線の連結が行われました。
今後も渋谷駅街区開発として、旧東急東横線渋谷駅ホームのあったエリアを取り壊し、渋谷ヒカリエより約50m高い250m級の高層ビルを建設するなど4件の大型開発が控え、注目を集めていますので、所有不動産に関係なく取り上げてみます。

東京急行電鉄(9005)

元々は、理想的な住宅地「田園都市」開発を目的に、1918年に実業家渋沢栄一らによって立ち上げられた田園都市株式会社を母体としている企業です。東京・渋谷を中心に東急田園都市線や東急東横線の運用、また周辺の開発を手がけています。
2012年にオープンした渋谷ヒカリエの所有者でもあり、今後も渋谷駅を中心とした大型の開発案件が控えています。
時価総額は約8971億円、所有不動産の評価額が約5607億円になります。

東急不動産(8815)

東急グループの稼ぎ頭と言われており、総合不動産では業界4位になります。東急のお膝元と呼ばれる渋谷のほか、都内に約100棟のオフィスビルを所有しています。
なお、東急グループ内では東京急行電鉄もデベロッパー機能を持つのですが、電鉄は東急沿線での開発が中心、不動産は都心での開発が中心と棲み分けがなされています。
時価総額は約4736億円、所有不動産の評価額が約1兆0167億円になります。

東急建設(1720)

東急グループの建設企業です。建築が主力事業であり、その他、土木事業も手がけ、鉄道関連工事においては独自技術を有しています。また住宅も手がけており、東急電鉄の地盤を生かし二子玉川などで都市開発も行っています。
当然ながら、渋谷ヒカリエやセルリアンタワー、渋谷マークシティなど東急グループが関わる物件の施行実績が豊富です。

東急リバブル(8879)

東急不動産や東京急行電鉄などグループ各社をはじめとする不動産会社からの物件受託販売や仲介業務を中心に、不動産ソリューション事業や自社ブランドによる分譲マンションの企画販売を行っています。