軽トールワゴン以外の「子育てCAR」はないものか?

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▲2代目ミニがベースのクロスオーバーSUV、初代ミニ クロスオーバー。かなりオシャレでありながら実はけっこう実用的に使えるこの車、最近はけっこうお安く買えるようになったことをご存じでしたか?

過日。年下の友人であるシンゴ君(29歳)が我が家を訪ねてきた。奥さまがこのたび懐妊されたとのことで、それに伴い、いわゆる子育てに便利な車の購入相談にやってきたのだ。

わたしは言った。

「それはおめでとう。……ならばホンダのN-BOXが良かろう。新車は総額200万円ぐらいから、中古で現行型を探すなら総額120万円ぐらいからである。色は……そうだな、黄色が良いだろう。貴君にも、美人の奥さまにもとってもお似合いだ」

だがシンゴ君は「ありがとうございます。ですが、わたしも妻も軽はイヤなのです」と言う。

わたしはそれに対し、最近の軽自動車はナメたらアカンこと、そして人は誰しも自分にしか興味がなく、キミたち夫婦が何に乗っていようが興味ゼロであるゆえ、出来が良くて経済的な新鋭軽自動車を買うのがベストではないか? 等々のことを伝えた。

だがシンゴ君は言う。

「おっしゃることはわかります。ですが、これは人目うんぬんの話ではありません。わたしたち夫婦のあくまで私的な価値観として、なんかこうイケてる感じの輸入車に乗りたいのです。それでいて子育てに使えて、なおかつ総額100万円ちょいとかで買えるモノを教えてほしいのです」

なるほど。そこまで確固たる信念が固まっているのなら、今さらくどくど軽自動車を勧めても仕方ない。ということで、わたしは言った。

「了解した。ならば先代のミニ クロスオーバーを買いたまえ。たぶん、それですべてが解決する」

以下はその日、わたしがシンゴ君に話した内容のダイジェスト版である。

総額100万円ちょいから狙えるのは前期の主要3グレード

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▲グレードやオプションによって細部は異なるが、ミニ クロスオーバーの内装はおおむねこのようなデザイン。写真は本国仕様のため左ハンドルだが、日本仕様はすべて右ハンドルとなる

まずは基本的な車種解説である。初代ミニ クロスオーバーというのは、2代目のミニ(R56)が現役だった時代の2011年にデビューし、2017年まで販売されたミニの派生モデルだ。

ボディ形状としてはいわゆる「クロスオーバーSUV」に相当する。小柄な車が多いミニ一族の中では最も大ぶりであるため、居住性や積載性も(大柄なSUVほどではないが)なかなか良好である。

初期年式における主なグレードと、その搭載エンジンは下記のとおりだ。

●ワン:最高出力98psの1.6L自然吸気
●クーパー:最高出力122psの1.6L自然吸気
●クーパーS:最高出力184psの1.6Lターボ

駆動方式はFFを基本とするが、クーパーSには「ALL 4」というサブネームが付く4WD版もある。トランスミッションは全グレードとも6速ATまたは6MTだ。

その後2013年には高性能バージョンの「ジョンクーパーワークス」が追加され、同年中にはクーパーにも4WDの「ALL4」を設定。さらに翌2014年9月にはマイナーチェンジを受け、この際にディーゼルターボの「クーパーD」「クーパーSD」が追加されている。

ただし、このあたりの追加グレードの中古車はまだいささか高価だ。そのため「総額100万円ちょいぐらいで探したい」というシンゴ君夫婦においては、あくまで初期年式の「ワン/クーパー/クーパーS」からどれを選ぶか? ということになるだろう。

狙い目はズバリ総額140万円付近のクーパー

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▲「シンゴ君」とは違う筆者の知人はこの車を、仕事用の大きなモノや道具類をガンガン積む「営業車」として使っている。超広大な荷室を擁している車ではないが、それなり以上に「使える」ことは間違いない

「能書き……というか概要は理解しました。ですが、それよりも使い勝手等を知りたいです」

そうシンゴ君は言う。

もちろん使い勝手もばっちりである。前章で指摘したとおり大柄なSUVと比べるとアレだが(一族最大とはいえミニはミニなので)、若夫婦+お子さん1名で使う分には何の問題もない。

後部座席は180cm級の男性が座ってもけっこう余裕があり、5名フル乗車の状態でも荷室容量は350L。いきなり「350L」と言ってもイメージしづらいと思うが、マツダ CX-3の数値と同じである。要するに「まあまあ」ということだ。ちなみに後部座席を折りたためば、容量は最大1170Lまで拡大できる。

そしてSUVライクな5ドア車ゆえ、チャイルドシートの出し入れや装着も非常にラクである。

3ドアのミニの後席にもチャイルドシートは装着できるが、あれの場合は「前席の人が降りて、前席シートバックを倒して、そして……」という面倒な流れとなる。だが5ドアのクロスオーバーであれば、そういった種類の手間はない。

「なるほど。では最後に、結局わたしはどのグレードをいくらで買うべきなのでしょうか?」

もちろん一概には言えないが、「クーパー」を総額140万円前後で探すのが良いと思われる。そのぐらいの総額を見込めば、走行3万km台の良質個体が探せるだろう。

ワンであればさらにお安いのだが、若干非力ゆえ、不便ということは特にないが、若干のストレスは感じる恐れがある。

また強烈なクーパーSは運転が楽しいが、貴君のさしあたっての任務は運転を楽しむことではなく「経済的に自家用車を導入し、そして大切な家族を守る」ということだと思われる。それゆえクーパーSは特に必要ないはずだ。

またそもそも、クーパーSは安くても総額150万円以上となるのが一般的なので、貴君の予算感と合ってないという現実的な難点もある。

「なるほど、了解いたしました。ではこれからクロスオーバーのクーパーを買ってまいります」

うむ、気をつけて。そして美人の奥さんと、これから生まれてくるベイビーに、わたしがよろしくと言っていたと伝えてくれたまえ。

text/伊達軍曹
photo/BMW

(提供:カーセンサー