アクティブ・ファンドのファンド運用マネージャーが経験している資金流入の減少傾向と自らの必要性に対する不安は、直近の弱気市場の出現によって変化する可能性がある、と資金運用投資会社モーニングスターは指摘している。
資金の流出と市場の縮小
昨年に関していえば、アクティブ・ファンドの運用マネージャーたちは資金の流出と失職の不安に喘いでいた感がある。実際、2019年1月、モーニングスター社の上級アナリスト、ケビン・マクデビット氏はThinkAdvisorの取材に対して、「アクティブ・ファンドからの資金流出は今に始まったものではないが、昨年12月の大量流出には目を見張るものがあった。1,430億ドルという数字は、われわれが過去に見た中で最大の金額といわざるを得ない」と語っている。
しかし、モーニングスター・リサーチ・サービスの投資信託調査ディレクター、ラッセル・キネル氏は、「今年の1月には、アクティブ・ファンドの資金運用の動向が明らかになってきたことにより、私たちは、アクティブ・ファンドのファンド運用マネージャ―がその役割を果たすには絶好の時期に来たと考えている。2009年第1四半期と比較すると、アクティブ・ファンドの現在の資金運用残高は11兆7000億ドルに達しており、大幅に増加している」と語った。
それでも、「そこには、希望的観測が含まれるかもしれない」と同氏は述べ、アクティブ運用されていた米株式ファンドの66%の資金が昨年9月までの12カ月間のうちに流出していると指摘した。「途方もない強気市場を考えると、これは目を疑うべきことである」としている。
新しい市場環境
アクティブ・ファンドのファンド運用マネージャーにとってもう一つの問題点は、アクティブ運用からパッシブ運用への運用形態の移行については、今までは単に、国内株式の範囲内に限り行われてきていたのだが、2018年第3四半期では、国際株式ファンドのパッシブ運用については190億ドルの純資金流入を記録した一方で、アクティブ運用については150億ドルの純資金が流出している。
キネル氏は、また、ヴァンガード社とフィデリティ社による手数料なしのインデックス・ファンドという新たなパッシブ運用商品の立ち上げは、アクティブ・ファンドにさらに打撃を与える可能性があると付け加えた。「これは一時的なものかもしれないし、また、新しいトレンドの始まりかもしれない」と同氏は語っている。
ファンド運用マネージャーの必要性
では、なぜモーニングスター社は、アクティブ・ファンドのファンド運用マネージャーの将来に対してこれほど楽観的なのだろうか。
1.モーニングスター社のメダリスト小型株ファンドが引き続き運用されている。
キネル氏によると、強気市場では、このような小型株ファンドは、資金の調達量が増えすぎてしまい、ファンド・マネージャ―の戦略が制御不能に陥るような市場環境を作る要因となる。このような場合、積極運用が主体とされる小型株ファンドは、閉鎖されるのが普通だという。
2.肥大化した大型株ファンドの膨張は緩和されつつある。
すべての資産クラスを合わせたアクティブ・ファンドのうちの上位20社は、過去3年間で自らの運用資産 (Assets under Management / AUM) の約20%を失ったことをキネル氏は指摘している。
しかし、別の問題が浮上する可能性もある。支出の増加が経費率の上昇につながり、手数料が上昇する可能性がある。また、一部契約の解除は全体のパフォーマンスを低下させる可能性があり、資産運用会社が自らの余剰能力や、逆に収益性の低下に気付いた場合、吸収や合併が加速し、そうなれば市場に関わる会社数が減少することになるであろう。
市場環境を見据えて
モーニングスター社がアクティブ・ファンドのファンド運用マネージャーの将来に対して楽観的な主な理由は、弱気市場の脅威が高まっていることに起因するのかもしれない。キネル氏は「これは次の物語の主流を占め、その方向性を作ることになるであろう」と述べている。
エンベストネット社も、2018年にはファンド運用マネジャーの流出が顕著であったが、市場の価格変動が活発になった第4四半期には、これらマネジャーの業績は好調に推移して来ていた。同社の首席投資ストラテジストのティム・クリフト氏はThinkAdvisorの取材に対し、「その後、2019年に入ってもかなりの好調を維持している。私たちが経験して来ているように、市場の価格変動が大きくなると……積極経営が光るようになる」と述べた。© 2019 ALM Media Properties, LLC