経済成長著しい東南アジアを舞台に覇権を争うスタートアップ2社、「Grab(グラブ)」と「Gojek(ゴジェック)」をご存知だろうか。東南アジアに縁のない日本人は耳にしたこともないであろうこの2社がいま、世界の名だたるベンチャーファンドから熱視線を集めている。中でも、両社への関与を強めているのが、ソフトバンクとGoogleの二大巨頭だ。東南アジアを舞台に、「デカコーン」2社が火花を散らす戦いの行方に注目だ。
東南アジアを舞台に火花散らす2社、実は創業者はハーバード同級生
「デカコーン」とは、将来有望な未上場のベンチャー企業のうち、株式評価額(時価総額)が100億ドル以上と評価される企業を指す。先日、Gojekがインドネシア初のデカコーン企業となり話題を集めた。
このGrabとGojekは、どちらも配車アプリと呼ばれるサービスを展開する。米国発のUber(ウーバー)やLyft(リフト)のように、スマホアプリで自家用車や二輪車による配車サービスを提供している。ただ、インドネシア発のGojekは、同国の主要交通手段であるバイクタクシーに強みを持つ。
現在、Grabはシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、カンボジアの8ヶ国、Gojekはインドネシア、シンガポール、タイ、ベトナムの4ヶ国でサービスを展開している。
東南アジアを舞台にしのぎをけずるこの2社は、非常に似通った成り立ちをしている。まず、配車サービスという同じフィールドで戦っていること。そして、創業者同士がハーバードビジネススクールの同級生であるということだ。2人は学生時代、よく食事を共にしていたという。
Grabの創業者、アンソニー・タン氏(37)はマレーシア生まれ。タンチョン・モーターズというマレーシアで日産車の独占製造・販売を手掛ける有力企業の創業者一族に生まれた。数年前から本拠地をマレーシアからシンガポールに移し、先ごろシンガポールでの本社ビル設立を発表した。一方、Gojek創業者のナディム・マカリム氏(34)はシンガポール生まれのインドネシア国籍。著名な弁護士の息子として生まれ、米国ブラウン大学卒業後マッキンゼーに入社。ハーバードでMBAを修めたのち、アパレル通販のザロラ・インドネシアを立ち上げ、Gojekを創業した。
両社は、創業の動機も似ている。アンソニー・タン氏はインタビューで、「マレーシアのタクシーを安全に使える乗り物にしたかった」と語っている。また、ナディム氏もインドネシア庶民の足であるバイクタクシーを明朗会計で組織的な交通手段に変えた。
ソフトバンク・Google陣営の代理戦争に
テクノロジーの力によって、旧態依然とした東南アジアの交通サービスを生まれ変わらせる2社には、世界中の投資家が熱視線を送る。
まず、Grabの配車事業を後援するのは、ソフトバンクの「ビジョンファンド」傘下の配車サービス企業だ。東南アジア事業をGrabに移譲して撤退したUberや、中国の同業・滴滴出行も出資している。また、トヨタやホンダ、ヤマハといった日本の自動車・二輪メーカーも、東南アジアでのモビリティーサービスでのプレゼンス拡大を目指して参画した。ネット決済は、クレディセゾンや東京センチュリーが支援する。先日は、アンソニー・タン氏とソフトバンクの孫氏が会合し、孫氏はGrabに対して「無限の支援」を約束したという。
一方、Gojekのバックに就くのは米Googleに中国のIT大手中国騰訊控股(テンセント)、通販大手の京東商城(JD)。三菱商事も株を取得している。
もはや、東南アジアを舞台にしたIT系巨人の代理戦争という趣だ。
配車の枠を超えライフスタイル全般に根差したサービスに
巨額の資金援助を得た2社は、配車サービスの枠を超えて、さらに業域を拡大している。料理の配達サービスから、電子決済事業、バイク便サービスなど。2社はいまや、東南アジアの人々のライフスタイル全般に根差したサービスになりつつあるのだ。
ここでも両社は切磋琢磨している。片方が新サービスを発表すれば、追ってもう一社も参入するといった具合だ。
世界経済将来を担う東南アジアのデジタル産業の未来は、ミレニアル世代の創業者が率いる「Grab」と「Gojek」の今後にかかっているといっても過言ではないだろう。(提供:百計ONLINE)
【オススメ記事 百計ONLINE】
・後継者問題解消、3つのパターン
・事業承継税制の活用で後継者へのバトンタッチをスムーズに
・相続税対策に都心の不動産が適している理由とは
・長寿企業に見る、後継者育成と「番頭」の重要性
・中小企業の事業譲渡としての秘策・従業員のMBOについて