『肉汁餃子製作所ダンダダン酒場』が猛烈な勢いで店舗を増やしている。2011年に東京都調布市に1号店をオープンしてから7年間で53店舗(2018年2月末現在)に到達。「餃子をつまみに一杯」という、ありそうでなかった分野に大胆に切り込み支持を集めた。
運営する株式会社NATTY SWANKYは昨年、外食産業記者会主催の外食アワード2017(外食事業者部門)を受賞し、2018年の「働きがいのある会社ランキング」でベストカンパニー(中規模部門25位)に選出された。二人三脚でここまで会社を発展させてきた井石裕二代表取締役社長と田中竜也取締役副社長に話を聞いた。
外食アワード2017受賞、「餃子で一杯」の発想の原点は?
ともに1974年12月生まれ、誕生日は1日違いの2人は、当初はラーメン店の店員(田中氏)と、その客(井石氏)という関係であった。やがて意気投合して酒を酌み交わすようになり、ビジネスパートナーになるという、あまり聞いたことのないパターンで会社を立ち上げる。
━━外食アワード2017の外食事業者部門の受賞、率直な感想をお聞かせください
井石 光栄です。みんな喜んでくれたので、そういう意味では素直に嬉しいです。
田中 率直にありがたいです。僕らも4年ぐらい前までは寝ずに餃子を握っていました。店舗も従業員数も増えた今、こういう賞をいただけるということは、しっかりと経営ができたのだろうと感じます。
━━餃子で一杯という発想はどういう経緯で生まれたのでしょう
井石 餃子とビールは誰もが相性がいいと感じていたと思うのですが、実際、それを堂々とできる店は意外とないという思いがありました。町の中華屋さん、ラーメン屋さんぐらいでしょうか。そういうところは若い人がなかなか行く機会がないし、ご飯を食べる店でゆっくりと餃子にビールで談笑というのもやりにくいものがあります。それで堂々とできる店があればいいな、何でないのだろうというところから考えました。あとは、自分が餃子を好きだったので、餃子が美味しい店が近所にほしかったという理由もあります。
━━井石社長からお話があった時はどう思いましたか
田中 最初は「餃子屋さんやりたいんだよね」「餃子で飲める店をやりたいんだよね」といった感じの雑なフリだったので、「何、言ってんだ、この人」という感じでした。ただ、僕もラーメン屋をずっとやっていたので餃子は作れるし、知識もあります。話を聞いてやり始めたら、意外とすんなり行きました。
醤油も酢もラー油もいらない肉汁餃子、1年かけて開発
『ダンダダン酒場』の餃子(肉汁餃子)は1年間の試行錯誤の末に完成した自慢の商品で、店員からは「何もつけずに召し上がってみてください」と勧められる。食べてみると、肉汁がパッと口の中に広がり、皮の焦げた部分のパリパリ感と、それ以外の部分のしっとり感、肉感のある餡(あん)とのハーモニーが絶妙で、酢やラー油の強い味があるとかえってこの風味が殺されてしまうのではと思える。
━━食べると肉汁がワッと広がるあたり、工夫されたように思いますが
井石 そうですね。試行錯誤はありました。ただ、一番気を遣ったのは全体のバランスです。全粒粉を使った香り高い皮と、それに合うこだわりの餡、食感、そういうのを含めてです。
━━食べた感じ、ニンニクはあまり効かせてないような気がしました
井石 隠し味程度です。ニンニクを入れすぎると好き嫌いが分かれますし「次の日の仕事が…」とかを考えなくていいようにしたかったんです。
━━店員さんから「最初、何もつけずに食べてみてください」と言われて、驚きました
井石 僕らが一番こだわったのが、その部分です。餃子を頼むと醤油と酢とラー油をつけて食べるじゃないですか。どんなに美味しい餃子を考えて、作っても、結局食べるのは醤油と酢とラー油の味で、それがすごく嫌だなと思っていました。作るなら日本一美味しい餃子を作りたいと思って研究してきたのに、結局、お客さんが食べたら醤油と酢とラー油の味では意味がありません。何もつけなくても美味しい餃子を広めていきたいと思いました。
田中 僕はそういうことについて発想はします。ただ、彼(井石氏)の場合はそれを形にします。僕はラーメン屋をやっていたのですが、お客さんにラーメンに最初から胡椒を入れないでほしいとか、そんな思いをすることは少なくありません。料理する人はだいたい、そう考えています。それが当たり前すぎて、あえて言いません。でも、彼は声を大にして「こうしたいんだ」と言います。そこのセンスが、僕にはないセンスです。