ベンチャー企業が創業期に乗り越えなくてはいけない最大の壁が資金調達だ。「死の谷」と呼ばれる最初の数年で、資金調達のハードルをクリアできなかった多くの企業が撤退を余儀なくされる。一方で、サイバーエージェント、ZOZOTOWN、ユニクロなど、成功した企業の多くが取り入れていたといわれるのが「キャッシュエンジン経営」の考え方だ。今回は、このキャッシュエンジン経営ついて詳しく見ていこう。

「キャッシュエンジン」経営で収益を安定させる

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(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)

キャッシュエンジン経営とは、メイン事業のほかに日銭を稼いで経営を安定させてくれる事業を持ち、収益を安定させるという考え方だ。
インターネット大手、サイバーエージェント出身の大竹慎太郎氏が『起業3年目までの教科書』という自著で紹介し、広まった。

創業まもない企業であっても、なにかとコストはかかる。とくに、人を集めてビジネスをするような場合は、彼らに報酬を払わなくてはならない。ある程度の開業資金を準備して起業したとしても、収入がなければ資金はすぐに底をついてしまうだろう。

そうしたときに強みを発揮するのがキャッシュエンジンだ。ハイリスク・ハイリターンのビジネスだけで収入を安定させるのは難しいので、日銭を稼いでくれる安定した事業をつくり、その2つのバランスをとりながら黒字化させていくのだ。安定的な資金源を持つことは、創業期のベンチャーが資金面での問題をクリアし、事業を継続するのに重要となる。

キャッシュエンジンとなる事業は、本当にやりたいビジネスよりも地味で面白味がないものかもしれない。しかし、仮に地味だとしても安定的に売れ続けているものほど、実はニーズが高いともいえる。とくに、堅実な売り上げが見込めるBtoB向けの事業は重要だ。

キャッシュエンジン型ビジネスのアイディアは、今まで経験したことがある業界や業種から見つけると失敗が少ないだろう。また、最初は初期投資を抑えて、アルバイトや業務委託などを活用し、スモールスタートで始めてみよう。

たとえば、サイバーエージェントでは創業当初からインターネット広告代理店事業を手掛けており、これがキャッシュエンジンになったおかげで、その他の新規事業にチャレンジすることが可能だった。

アパレルECのZOZOTOWNは当初、アーティストのCDや輸入レコード販売をキャッシュエンジン型事業として手掛けていた。

キャッシュエンジンとなる事業は、労働集約型のビジネスであることが多い。そのため、ある程度人を集めてスケールさせることが必要になるため、人材の採用も成功に導くための重要な要素となる。会社全体のパフォーマンスを引き上げる人を見極めて採用し、信頼関係を築かなくてはならないのだ。

「キャッシュエンジン型事業」と「スケール型事業」のバランス

一方、開発コストは大きいが、その分当たれば大きな利益をもたらす事業を「スケール型事業」と呼ぶ。スマホアプリやWebサービスの開発、新商品や自社サービスの展開などだ。

『起業3年目までの教科書』では、まずキャッシュエンジン型経営で起業すること。そして安定的な収益を確保できるようになったら、それを元手にスケール型事業を展開するという手法を勧めている。

ただ、スケール型事業で成功を収めるようになっても、キャッシュエンジン型事業は手放してはいけない。スケール型事業がうまくいかなくなった場合、人やモノのリソースを再びキャッシュエンジン型事業に振り分けることで収益を安定させ、つぎのスケール型事業に備えることができるからだ。

堅実だけども地味に見えるキャッシュエンジン型事業

多くの人はこのスケール型事業での成功を夢見て起業するが、その結果、大半は事業資金が続かず「死の谷」での撤退となってしまうのだ。堅実だけども地味に見えるキャッシュエンジン型ビジネスが、最終的には会社をスケールアップさせるための成長エンジンとなる可能性を秘めていることは多いにありえるだろう。(提供:百計ONLINE


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