相続は、いつ発生するか分かりません。突然遺産を相続することになり、多額の相続税を支払う必要が生じるかもしれません。いざという時に備え、相続税の基礎知識を身につけておきましょう。

30代から始めたい親の相続税対策

相続に対して漠然とした不安を感じていても、親と話し合ったことがある人は少ないのではないでしょうか。相続はデリケートな問題ですから、それも無理はありません。

しかし、相続対策を怠ったがために大きな金銭的損失を被ることがあります。「まだ早すぎる」と話を先延ばしにしていた矢先、親が介護状態になってそれどころではなくなったという話も。相続の話は、親が元気な時にしておくべきです。

自分が30代なら、親は60代か70代でしょう。自分自身も社会人として一人前になり、親もまだまだ元気な頃です。相続の話を始めるには、この時期が適しています。

しかし、その前に相続税に関して最低限の知識を身につけておかなければなりません。相続税はなじみのない税金なので難しく感じるかもしれませんが、基本的な仕組みを押さえておけば十分対策ができます。

まず大切なのが、「基礎控除」の考え方です。相続財産が“一定の範囲”内であれば、相続が発生したとしても相続税はかかりません。この“一定の範囲”を「基礎控除」と呼びます。2015年に基礎控除が大幅に縮小されたことで、相続税が発生する家庭が一気に増えました。ですから、相続税の知識は身につけておいて損はないのです。

基礎控除額は「3,000万円+法定相続人の人数×600万円」という式で算出されます。たとえば、妻と子2人の3人が法定相続人なら、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+3人×600万円)です。

まずは基礎控除額を計算し、相続財産が基礎控除の範囲内に収まっているかを確認しましょう。相続財産が基礎控除の範囲内なら、財産が大きく変動しない限り、急いで相続税対策をする必要はありません。

基礎控除を超えている場合は、早めに相続税対策に取り組むことで相続税負担を軽減できる可能性があります。

相続税対策には、贈与や不動産投資といった方法があります。結婚や出産などのライフイベントがある場合や、相続までの期間が長い場合は贈与も効果的です。しかし、相続税対策として即効性が高く、なおかつ節税効果が大きいのは不動産投資です。

相続税対策で不動産投資を選ぶメリットと注意点

不動産投資で相続税対策ができる仕組みを簡単に押さえておきましょう。たとえば現金1億円を持っていた場合、相続財産としての評価額は1億円です。

しかし、現金1億円で不動産を購入した場合、相続財産としての評価額は1億円よりも低くなります。相続税法によって、土地の場合は路線価、建物の場合は固定資産税評価額を用いて評価すると定められているからです。

路線価・固定資産税評価額で評価することによって、土地は時価の約8割、建物は時価の約7割程度まで評価額を下げることができます。また、不動産を第三者に貸している場合は、さらに相続税評価額が下がります。

この財産評価の仕組みを活用すれば、不動産投資によって相続税額を大幅に減らせるのです。

ただし、相続税対策になるからといって将来性のない物件に投資してしまうことは避けなければなりません。立地条件や物件の外観・内観を確認し、専門家の意見も踏まえて投資判断をしましょう。

脱税とみなされるケースも?専門家を活用した相続税対策を

不動産投資を使った相続税対策は、場合によっては脱税と見なされるため注意が必要です。数億円のタワーマンションを購入して相続財産を圧縮し、相続発生後4ヵ月でタワーマンションを売却した事例では、その他の要件も相まって裁判で相続財産の圧縮が否認されました。

明らかに納税額の圧縮だけを目的としている場合、税務調査で脱税と見なされるリスクが高くなります。相続発生後も不動産投資を継続するなど、一般的に見て不自然でないかどうかを専門家に確認してもらうと安心です。

不動産投資は相続税の節税効果が大きいですが、過去の判例も踏まえて慎重に進めていくようにしましょう。不動産投資を効果的に活用すれば、数百万円の節税効果を得ることもできます。将来の相続について親と話し合い、家族にとって最良の選択を一緒に模索しましょう。

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