(本記事は、サチン・チョードリー氏の著書『「運がいい人」になるための小さな習慣 世界の成功者が実践するたった1分のルール』=アスコム出版、2019年6月3日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
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「儲ける」ことは悪いことだという誤解
日本は八百万よろずの神を信仰する国です。日本人は古くから、万物に神様が宿ると信じてきました。
その土地や田畑に宿る神様もいれば、太陽や月、あるいは風や雷、さらには馬、犬、オオカミなど、その対象を挙げれば枚挙にいとまがありません。なかには大きな岩や山、眼前に広がる海などを御神体とするお社もあります。
ちなみにこの「八百万」という言葉は、現存する日本最古の歴史書である『古事記』にも記載されている、伝統ある言葉なのだそうです。
それなら、「お金」にも神様が宿ると考えるのは自然なことでしょう。実際、インドでは「ガネーシャ」というゾウの顔を持つ神様が「富をもたらす」として大人気です。
ところが、日本では昔から、お金儲けに対してあまりいい印象がないようです。これは私にとって未知の概念であり、少々驚くべき事実でした。
なぜならインドでは、一家団欒の場でお金の話をすることは日常茶飯事。
朝の食卓で株価がいくら上がった、下がったという話が普通に飛び出しますし、私も自分の5歳になる息子に、いまから株式投資の勉強をさせています。
といっても、実際に取引をさせることはできませんから、一通りの手順を説明し、銘柄のセレクトと売買の判断をさせ、私が運用を代行するのです。
先日は、息子が株の売買で5千円の利益を出したので、そのお金でスパイダーマンのおもちゃを買ってあげました。
お金を稼ぐことができれば、ほしい物が手に入る。
そのことを知った息子は、「パパ、株をやろうよ」とよく私を誘ってきます。
なぜこのようなことを始めたかといえば、お金の大切さを知り、世の中のキャッシュフローの仕組みを知ることは、科学や語学、道徳などと同じくらい大切なことだと考えているからです。
少し前に、ZOZOの前澤友作社長が、私財1億円を投じて100人に100万円をプレゼントするお年玉企画をぶち上げ、大きな話題を呼びました。
このときの世間の反応は象徴的で、何はともあれこの企画に飛びつき、応募する人もいれば、「とんでもない金の使い方だ」と批判する人もいました。
一方で、主に経営者に多かったのは「広告費としての効果を考えれば1億円は安い」「これはSNS時代ならではのうまい宣伝手法だ」という称賛の声でした。
1億円という金額のインパクトが大きすぎてさまざまな声が寄せられたわけですが、こうした反響が起きている時点で前澤社長の勝ち、というのが私の印象です。実際、このニュースをもって、ZOZOと前澤社長の名前は、それまで以上に世間に知られることとなりました。
しかし、全体としては批判的な声のほうが大きかったように記憶しています。
では、なぜ前澤社長のような行動は批判されてしまうのか。やはり日本は「清貧」の国だからでしょうか。たしかに、私利私欲を捨てて、貧しくても正しい行邁進することは、いかにも日本人らしい美徳です。
しかし、こうした考え方の影響で、お金を儲け、使うことがあたかも悪いことであるかのように誤解されてしまうのは、むしろマイナスであると私は考えます。
生きたお金の使い方とは?
お金持ちになりたい。
ビジネスで成功したい。
そうした目標を持つことは、悪いことではありません。私もある時期からは、明確に「お金を稼ぐ」ことを目指して努力を重ねてきました。
重要なのは、そのお金をどのように使ったか、です。
100円の価値を持つ商品を、100円玉と引き換えに手に入れる。これはごく普通のお金の使い方ですね。そこで私は、自分の運気の向上につながる用途にお金を使うことを推奨します。
わかりやすいのは、やはり寄付でしょう。
東日本大震災発生時、ソフトバンクグループの孫正義さんが個人で100億円の義援金を贈ったときには、全国から拍手喝采を浴びました。
後でしっかりと述べますが、私は、寄付とは運を味方につけるための、素晴らしい行いであると考えています。
あるいは、他人から見れば割高な絵画を購入したとしても、本当に美術的な価値を見出し、心が豊かになるのだとすれば、印象は大きく変わるでしょう。
贅沢に思われる散財でも、それで本人が有形無形の大きな価値を得られるのであれば、運をプラスに変える有意義な買い物といえるのです。
お金の神様は、そうした〝生きた〟お金の使い方を好みます。
そして〝生きた〟お金の使い方をする人のもとには、さらにたくさんお金が舞い込んでくるものなのです。
ぜひあなたには、お金に対する罪悪感を払拭し、お金の神様に愛されるような習慣を身につけていただきたいと思います。
出費をリストとして書き出し可視化する
お金に対して覚える罪悪感のなかでも、最も一般的なのが「無駄遣い」。
生きたお金の使い方をするためには、最初にここを見直さなくてはいけません。
私がおすすめしたいのは、まずあらゆる出費を書き出してみることです。
今日一日、どんなことにお金を使ったのか、ざっと箇条書きしてみてください。交通費や食事代、雑誌や飲み物、ネットショッピングなど、とにかくすべての出費を書き起こすのです。
その日いくらお金を使ったのか、具体的な金額を把握している人は少ないでしょう。だからまずは、可視化することで正確に把握する必要があるのです。
こうして、わかりやすくリスト化することを何日か続けていくと、自分のお金の使い方に、意外な傾向があることが発見できるでしょう。
リストを眺めながら、自分の消費行動としっかり向き合ってみてください。客観視することで、どのような感想が得られるかは一興です。そして次に思うはず。
「こんな使い方をしていたら、お金が貯まるわけがないよな」と。
自分の消費行動のどこに無駄があるかを正確に把握するために、私はコンビニなどで私物を買うとき、ICカードやクレジットカードは極力使わないようにしています。
こうしたキャッシュレス・ツールは非常に便利なものですが、どうしても細かな履歴がわかりにくくなるデメリットがあります。
領収書やレシートの類いも、できるだけ受け取っておいてください。夜、それらをテーブルの上に並べて一覧化すれば、どこに無駄があるのか割り出しやすくなります。
並べたレシートのなかから、「これは買わなくてもよかったかな」と思うものを赤ペンでチェックしていき、その合計金額を出してみるのもいいですね。スマホで無料の家計簿アプリをダウンロードすれば、金額を打ち込むだけで自動的に合算してくれます。
このように、日々の出費を可視化する習慣を身につければ、その日いくらのお金を浮かすことができたのかを、明確に知ることができます。
こうして無駄な出費を徹底的に排除すれば、財布にお金が残り、お腹まわりの肉が減るという、理想的なサイクルが生まれるはずです。
この習慣のまとめ
可視化することで初めてお金の使い方の傾向と無駄な出費が見えてくる
お金で「時間」と「空間」を買う意識を持つ
こうして出費を可視化したら、次はその意味に目を向けましょう。
「お金を使う」という行為は、どんな意味を持つかによって、ポジティブにもネガティブにもなります。
たとえば渋谷から六本木へと移動する場合。
最も安上がりな方法は、歩くことです。
土地勘のない人にはわかりにくいかもしれませんが、渋谷駅から六本木駅までは、六本木通りと呼ばれる幹線道路を直進するのみ。
参考までにグーグルマップで経路検索してみれば、徒歩でおよそ40分の距離であることがわかります。
つまり徒歩を選択するということは、お金をかけない代わりに、40分という時間を支払うことと同義です。
しかし、多くの人は電車やバスでの移動を選ぶでしょう。ちゃんと交通網が整備されている区間を、わざわざ歩く必要はないからです。
地下鉄なら、約270円の電車賃を支払えば、ものの15分で移動できるのですから、非常にコストパフォーマンスのいい選択といえます。
では、ここでタクシーを使うとすれば、みなさんはどのような印象を持つでしょうか。
たった270円、わずか15分で移動できる手段があるのに、1000円近いコストをかけてタクシー移動する。
こうしたお金の使い方に、罪悪感を覚える人は多いでしょう。それなら、こまめに節約して貯金にあてたほうがいいのではないか、と。
そのお金の使い方は本当に贅沢か?
しかし、私の考えはちょっと違います。
タクシーを使えば、混雑具合にもよるけれど、渋谷から六本木まではおおむね10分程度。
10分あれば、メールを2~3本打つことができますし、ニュースをチェックすることもできます。あるいは、軽く目を閉じて短時間の休息にあてるのも有意義でしょう。つまり、タクシーを使うことで10分の可処分時間が生まれるのです。
さらに、タクシーを使うということは、自分だけの空間が得られることでもあります。次のミーティングに備えて資料を広げたり、業務連絡の電話を1本入れたり、タクシーのなかではさまざまな作業を行うことができますが、これを電車のなかでやるのはマナー違反です。
もうおわかりでしょう。
タクシーを贅沢品と考える人は少なくありませんが、使い方次第では「時間」と「空間」を買うことに等しく、金額以上のリターンが得られるのです。
要は、そのお金をかけることで、どのような「便利」が手に入るのか、もう一歩進んだ視点で吟味 することが大切なのです。
新幹線でグリーン車を、飛行機でビジネスクラスを選ぶのもまた同様です。
「浪費」や「無駄遣い」といった言葉にただ萎縮してはいけません。
その金額を支払うことで快適な環境が得られ、ストレスなく仕事をこなすことができるのであれば、その費用対効果は必ずしも小さくはありません。
居心地のいい環境、気分のいい空間に身を置くことで、運の巡りも向上します。多忙なビジネスパーソンこそ、日頃から環境づくりにコストをかける意識を持っておくべきなのです。
この習慣のまとめ
「時間」と「空間」ほどコストパフォーマンスの優れた買い物はない
コンビニの募金箱に釣銭を入れる
生きたお金の使い方として私が大切にしているのは、「寄付」や「ボランティア」です。
自らの夢を叶えて、成功して財を成したのであれば、次はそれを用いてどのように社会に貢献していくかが大切。
世の中の恵まれない人、困っている人のために貢献することは、運を招くことにつながると私は信じています。
じつは、2011年の東日本大震災のときに、個人として日本で一番寄付したのは孫正義さんなんです。前述した通り、個人のポケットマネーで100億円。
世界を見れば、ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツなども、みんな財団を設立するなどしてボランティア活動をしていますが、もちろん、彼らの富は減るどころか増える一方。そういう活動をしている人には、運がついてまわるものなんですね。
ところが、日本には欧米諸国に比べて、寄付の文化が浸透していません。これは、日本の成功者に社会貢献の意識が希薄であることの表れでしょう。
社会に貢献することは単純に気持ちがいい
社会に貢献するためには、さまざまな手段があります。
・被災地ボランティアに参加する
・地域の清掃活動に参加する
・稼いだお金のなかから寄付をする
大掛かりな活動に取り組むのが難しければ、コンビニのレジに設置されている募金箱に、お釣りからいくらかのお金を託すだけでもいいでしょう。これなら1分どころか、買い物のついでにほんの数秒で実行できます。
もちろん、第一に考えるべきは自身の仕事や生活、そして家族です。自らが不便を我慢して他人に尽くすことができるなら立派ですが、そのために社会貢献のハードルが上がってしまうのも考えもの。
あくまで無理なくできる範囲にとどめ、頑張って大きな貢献を目指すよりも、小さな貢献をコツコツと継続することのほうが有意義です。
世のため人のためになることをした後は、自分自身も晴れやかな気分になるものです。つまり、単純に気持ちがいいのです。
この効果は、決してバカにできません。
精神状態が整うと、人のパフォーマンスも上がり、運を引き寄せることができるからです。
社会に貢献することで自分自身を整える。そんな視点を持って、運気のDCAPをまわすことを意識してみてください。
もちろん私も、自分のできる範囲で社会貢献を続けています。
以前出版した本の印税をすべて被災地支援活動に寄付したのもそのひとつ。
そして、いつか実現したいのが学校づくりです。
世界には、この日本ですら、貧困で子供を学校に行かせられない家庭が数多くあります。そういう子供たちがお金の心配をすることなく安心して学び、温かいごはんを食べ、友達をつくることができる学校を日本にもインドにもつくりたい。
そのためには、まだまだ頑張ってお金を稼がなければいけませんね。
この習慣のまとめ
できる範囲でコツコツと小さな活動でも誰かの役に立てば運として自分に返ってくる
サチン・チョードリー
法人/個人向けの経営コンサルティング、講演・セミナー事業を行うAVS株式会社代表取締役会長。鳥取県の地域活性化をミッションとする株式会社ITTR代表取締役社長など、複数の会社を経営。上場企業を含む複数の企業コンサルタント、アドバイザーとして経営に参画。幼少時に外交官の父親に連れられて初来日、バブル期の東京で過ごす。帰国後も当時のきらびやかな印象が忘れられず、1996年に再来日。いまでは母国インドはもちろん、日本、アジアでも数多くの事業を成功に導く実業家。
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