「噂で買って事実で売れ」株式投資の世界ではそんな格言がある。実際、相場というものは買い材料が公表される前に噂などが先行して大きく動くケースが珍しくないが、いざ買い材料が公表されると「織り込み済み」との見方から売られることさえある。また、これとは正反対に「噂で売られて事実で買われる」展開となることも珍しくはない。

たとえば、先週のNTTドコモ <9437> の株価は「噂で売られて事実で買われる」典型的なパターンであったと考えられる。そこで今回は、NTTドコモ株が年初来高値を更新した背景についてお届けしたい。

NTTドコモ「噂で売られて事実で買われる」?

NTTドコモ,株価
(画像=shutterstock, ZUU online)

NTTドコモ株が年初来高値となる2717円を記録したのは先週9月3日のことだった。2717円といえば約10ヵ月ぶりの高値である。ちなみに、10ヵ月前といえば同社が携帯端末の通信料金を2019年4~6月期に2~4割下げると発表し、同社の業績悪化懸念が広がった時期でもある。実際、NTTドコモ株は2018年11月1日に14.7%安の2426円まで売られている。

NTTドコモの値引きには伏線があった。2018年8月、菅義偉官房長官が日本の携帯料金はグローバルで見ると高く、4割程度下げる余地があると指摘し、携帯端末を値引きせずに通信料を安くする「分離プラン」を求めた。NTTドコモの値引きはこれに対応したものと見られるが、株式市場では通信収入の減少に加え、携帯端末の売上も落ち込むとの不安を招くこととなった。それでなくとも2019年10月には楽天 <4755> が携帯電話事業に新規参入することもあって競争が一段と激化するのではないか、との懸念もあった。

そうした中、NTTドコモが新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表したのが今年4月15日だった。新プランでは、たとえば家族3人で旧ベーシックパックを使っていた家庭が「ギガライト」に切り換え、月間1GBまで使わない場合は約4割引になるというものだった。約4割引を実現するには一定の条件(家族等の複数アカウント、データ通信量等)を満たす必要があるわけで、10ヵ月前に株式市場が懸念したほど業績が悪化しない可能性もでてきた。

結果として、NTTドコモの株価は新料金プラン発表前の4月11日に付けた年初来安値2257円で底を入れたような形となり、9月3日には年初来高値となる2717円まで回復、典型的ともいえる「噂で売られて事実で買われる」展開となったのである。

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