英・アイルランド首脳会談におけるブレグジット合意に向けた突然の大きな進展に、ポンドは全面高となりました。一方で、米中閣僚級協議への期待の高まりから円は全面安となり、ポンド円は安値から4円近く急騰しました。
会談後の共同会見で、英国、アイルランド両首相は、合意への道筋が見込めることで一致したと発表しました。その後もバラッカー首相は、「数週間のうちに合意に至る道筋が見えてきた。交渉再開に十分な内容で、来週合意に至ることは可能だと思う。」と述べ、合意の可能性が高まったことを示唆しました。これまで重要懸案事項の当事者として、離脱案に対し否定的な見解を示してきたアイルランドからの非常にポジティブな発言だけに、ブレグジット問題は重大な転換点を迎えたとマーケットの期待はこれまでになく高まっています。
英野党からの反発を見据え、詳細は未だ明らかにされていないものの、EUがこの修正案に合意さえすれば、その後離脱延長拒否をちらつかせ英議会に圧力をかけることで、DONE DEALに導ける確率も高まるため、来週開かれるEU首脳会議には大きな注目が集まりそうです。
また東京時間には米中協議を巡る報道に大きく振らされたドル円は、米中双方から合意に前向きな報道が続いたことや、ブレグジット問題決着への期待の高まりからクロス円の買いも下支えとなりじり高に推移すると、NY引け前には10月1日以来となる108円台まで上昇しました。
今後の見通し
直近の大きなリスクと見られていたブレグジット問題と米中通商協議でしたが、週初に非難合戦で始まったブレグジット問題が急転直下、合意にむけて大きく前進した衝撃の大きさにリスクオン(リスクオフの巻き返し)の動きがしばらく続きそうです。米中通商協議においては、部分合意か否かを注目点としてきましたが、アメリカが部分合意を拒否し交渉が再び決裂しても、ドル円の下値は限定的となりそうです。
ダブルパンチでドル円ショートは損切りに
ブレグジット問題の大きな進展と日中通商協議を巡る楽観的報道のダブルパンチで円が全面安となったことから、ドル円は108円台へ到達、週初のドル円のショートポジションはあえなくストップアウトとなりました。この円安の動きはリスクオフで構築されたポジションの調整(円の売り戻し)に止まると予想しますが、ダブルトップとなった108円台半ばを上抜けるようであれば、円安方向への動きが強まるかもしれません。
海外時間からの流れ
トルコ軍がシリアへの軍事侵攻したことで、欧米から非難の声が多く上がったのに対しエルドアン大統領は反発する姿勢を見せたことから、対立激化を嫌気しトルコ円は18.20円付近まで下落しました。もっともクロス円の全般的な買戻しにつれ、NY時間には18.50円台を回復、そのまま高値圏での引けとなりました。
今日の予定
NY時間には加・9月雇用統計、米・10月ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)の発表が、また、コスタ・ポルトガル中銀総裁、カシュカリ・ミネアポリス連銀総裁、ローゼングレン・ボストン連銀総裁、カプラン・ダラス連銀総裁の講演が予定されています。
(提供:FXプライムbyGMO)
FXプライムbyGMO情報分析チーム
為替のみならず、株式、商品相場の経験者が多角的な目線でマーケットを分析します。執筆者は営業推進部マーケッツグループ長、稲井有紀、グループ長代行、崔 敏樹。