資産運用に有利な制度の代表が「NISA(ニーサ)」です。さまざまなメリットがある人気の制度で、口座数は2019年6月末時点で1,300万口座を超えました。しかし、NISAにはデメリットもあります。NISAは確かに有利な制度ですが、見逃しがちのデメリットもしっかり確認しましょう。

NISAとは?

NISA,デメリット
(画像=Roman Samborskyi/Shutterstock.com)

現在NISAには「一般NISA」と「つみたてNISA」があります。どのような違いがあるでしょうか?

  一般NISA つみたてNISA
運用益 非課税 非課税
非課税期間 5年 20年
投資可能金額 120万円/年 40万円/年
投資タイミング 好きなときに 定期的
投資できる年 2023年まで 2037年まで
投資できる商品 株式、投資信託 許可された投資信託のみ
買付手数料 掛かる場合あり
(無料の金融機関あり)
無料
(※ETF除く)
売却 いつでもできる

NISAは投資の利益に税金が掛からない制度

株式や投資信託の投資だと利益に税金が掛かります。税率は20.315%で、100万円の利益があれば20万3,150円が税金として引かれます。

NISAを通じ投資を行うとこれらの税金が掛かりません。利益をそのまま受け取ることができるので効率的な資産運用ができるようになります。

非課税になるのは売却益だけではなく、株式の配当や投資信託の分配金も対象です。せっかく投資するならNISAを通じ投資した方が有利になるといえるでしょう。

非課税期間の数え方

一般NISAは非課税期間が5年、つみたてNISAは非課税期間が20年用意されています。

この非課税期間とは買った年を含めて数えます。たとえば一般NISAの場合、2019年に買った資産は2023年末まで非課税期間が続き、2023年であれば2027年まで非課税期間が続きます。

つみたてNISAの場合は20年ですから、2019年に買った分は2038年末まで、2037年に買った分は2056年末まで非課税期間が続きます。

なお、非課税期間が終了する前でも自由に売却することができます。

一般NISAは自由度が高い

一般NISAは年間120万円まで投資することができます。投資タイミングは自由に選べ、投資したいときだけ投資することができます。

投資対象の商品も、債券以外であれば基本的に自由に選ぶことができます。

つみたてNISAは非課税期間が長い

一方、つみたてNISAは非課税の期間が20年と非常に長いことが特徴です。一般NISAの非課税期間は5年ですから、4倍もの非課税期間が用意されています。

また、投資対象が低コストで運用できる銘柄に絞っているので、銘柄の選び方がわからない方でも有利な商品を選択することができます。

少額の長期投資を考えている方にはつみたてNISAはぴったりといえそうですね。

一般NISAのデメリットは?

NISAでは多くのメリットがありますが、デメリットもあります。一般NISAのデメリットから確認しましょう。

損益通算できない

NISAのデメリットで代表的なものは損益通算ができないという点でしょう。

通常の口座だと別の取引で損益通算ができます。たとえばA株で+1万円、B株で-1万円となった場合、損益通算で利益0円とすることができ、税金が発生しません。

このB株がNISA口座であった場合、損益通算ができません。2つの株式で利益0のはずなのに、A株の1万円の利益に対して税金が引かれてしまいます。

NISA口座では損をしてしまったとしても損益通算ができないという点には注意しましょう。

損なのに税金が掛かる場合がある

NISA口座では損益通算ができないため課税をされる可能性について述べましたが、実はそれ以外にも税金が掛かってしまう可能性があるんです。

NISA口座では非課税期間が5年間続きますが、その後は通常の口座へ移すか、一般NISAの投資枠があればまたNISA口座へ移すことができます。またNISA口座へ戻すことを「ロールオーバー」といいます。

ロールオーバーできれば問題ありませんが、通常の口座へ移すときに気を付けたい点があります。それは、通常の口座へ移したときの価格が買い価格とみなされる点です。

たとえば一般NISAで100万円投資した株が非課税期間終了時に50万円になり、そのまま通常の口座へ移したとします。その後50万円の株が100万円に戻ったので売却した場合、+50万円として税金が計算されるのです。

100万円で買って100万円で売ったのですから本来利益は0です。しかし、NISA口座から通常の口座へ移す際に買い価格が50万円として計算されなおすのでこのような計算となるのです。

NISA口座の非課税期間が終了した時の取り扱いによって、むしろ税金が不利になる可能性がある点に注意しましょう。

2019年以降に投資した分はロールオーバーできない

一般NISAは2023年に非課税投資枠が終了します。これを逆算すると、2019年以降に一般NISAで投資した分はロールオーバーすることができません(2019年分は2023年まで非課税期間が続き、ロールオーバーするには2024年分の非課税投資枠が必要)。

現在の制度のままだとロールオーバーができないため、一般NISAで投資した分では非課税期間終了時点の取り扱いにより注意するようにしましょう。

なお、2015年、2016年、2017年、2018年に一般NISAで投資した分はロールオーバーできます。また終了するのは投資枠で、2023年に買った資産は2027年まで非課税期間が継続します。

コストが高い銘柄を選択してしまう可能性がある

一般NISAでは銘柄選択の自由度が高いですが、つみたてNISAと違いコストが高い銘柄も投資対象に含まれています。

よく調べずに投資してしまうと「もっとコストが安い銘柄があったのに」と後で後悔してしまうかもしれません。投資枠の再利用はできないためやり直すこともできないんです。

一般NISAでは、投資する前にしっかり確認してから投資しましょう。

一般NISAのデメリット対処法

一般NISAでは損をしないことが大切

一般NISAのデメリットでは損益通算ができない点と、2019年以降の投資分がロールオーバーできないというデメリットがありました。これらに対処するには「損をしない」ということがポイントです。

そもそも通常の口座でも、損であれば非課税です。一般NISAでは損をしてしまうとデメリットが強くなってきてしまうのです。

「損をしない」ということを実現するのは難しいですが、1つは大きなリスクを取らないという対策ができます。個別の株式より投資信託を選択すると分散投資が働きリスクを下げることが期待できます。

投資信託の中でも、いろんな資産を組み合わせている「バランス型投資信託」はさらに分散投資効果が働き、よりリスクの低い運用が期待できるでしょう。

一般NISAでは最長5年間の非課税期間がありますから、5年間の長期でリターンを考えれば小さなリスクでも比較的有効な運用が期待できます。

もちろん絶対に損をしないというわけではありませんが、1つの対策として検討してみてください。

投資信託の場合は3つの手数料を確認

一般NISAでは高コスト銘柄を選択してしまう可能性がありましたが、事前に手数料を確認すると高コスト銘柄を排除できます。

株式の場合は事前に証券会社の手数料を確認しましょう。投資信託の場合は銘柄ごとに手数料率が違います。3つの手数料を確認しましょう。

投資信託を買う時の「販売手数料」、運用中のコスト「信託報酬」、売却するときの実質的なコスト「信託財産留保額」が主な投資信託のコストです。目論見書などで事前に確認し、できるだけ安いものを選択するようにしましょう。

つみたてNISAのデメリットは?

つみたてNISAのデメリットはどうでしょうか?一般NISAと重複する部分もありますが、つみたてNISA独自のデメリットもあります。

損益通算できない

一般NISAと同様に、つみたてNISAも損益通算ができません。

ロールオーバーできない

つみたてNISAではロールオーバーの制度がありません。非課税期間終了時は通常の口座へ移すことになります。

投資タイミングは自由に選べない

投資タイミングを選べないという独自のデメリットがつみたてNISAにはあります。

つみたてNISAでは定期的に投資していきます。証券会社によって微妙に違いますが、原則月に1回同じ日に買っていく制度です。

途中で積み立て自体を停止することはできますが、基本的に買いたい時に買えず、買いたくない時も定期的に買っていく制度です。

投資タイミングを選びたい方にはデメリットとなるでしょう。

商品を自由に選べない

つみたてNISAでは投資対象が金融庁認可の投資信託に限定されています。それ以外の投資信託や株式へは投資できません。

銘柄を自由に選択したいという方にはデメリットといえるでしょう。

つみたてNISAのデメリット対処法

一般NISAと同様に低リスク商品を選ぶ

つみたてNISAでも、やはり「損をしない」ことがポイントです。投資信託の中でもリスクの低い銘柄を選ぶ戦略が望ましいでしょう。

もっとも、一括投資ではなく定期的に購入し続けるつみたてNISAではそれだけでリスクが下がります。「時間の分散」が効くからです。

投資のタイミングを分散させることで、投資対象の値段が高い時も安い時も買っていくことになります。これにより買い価格が平均化され、いわゆる「高値つかみ」を防ぐことが期待できます。

投資対象も分散投資されている投資信託に限定されていますから、つみたてNISAの場合はあまり投資対象のリスクについては深刻にならなくてもいいかもしれません。

もちろん絶対に損をしないというわけではありませんから、投資の際はお気を付けください。

一般NISAへ切り替える

つみたてNISA独自のデメリットは一般NISAへ切り替えることで対処できます。

原則として切り替えたい年の前年10~12月の間に切り替えます。それ以外の期間でも、まだつみたてNISAを利用していない場合は年内の切り替えが可能な金融機関もあります。

より自由に銘柄を選びたい、投資タイミングを選びたいなどニーズが強ければ一般NISAへ切り替えましょう。

デメリットを理解しながら上手に活用しましょう

一般NISAもつみたてNISAも税金が掛からずに運用できるので、上手に活用すればきっと資産運用の強い味方になってくれます。

制度の仕組みを理解し、メリット・デメリットもしっかり把握してから利用しましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)/fuelle

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