現役で働いている人と違い、収入が年金のみの人の中には「自分は確定申告をする必要はない」と思っている人もいるかもしれません。

実は年金収入だけの人も、条件によっては確定申告が必要になる場合があります。年金受給者が確定申告しなければならないのは、どのようなケースなのでしょうか。

年金収入も確定申告の対象になる|確定申告が必要な人・5パターン

年金受給者,確定申告
(写真=popokoko-nyanya/Shutterstock.com)

年金収入も、基本的に確定申告の対象になり得ます。年金の確定申告が必要なのは、以下のような人です。

・2ヵ所以上から年金を受給している人
・給与と年金を受け取っている人
・年金以外にも、その他の所得が一定以上ある人
・医療費や生命保険料などの控除を受ける人
・2,000万円以上の給与がある人

年金収入の額と他の所得額がポイント|確定申告の要不要の判断基準とは

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得に対する所得税・復興特別所得税から、源泉徴収された税金や予定納税で収めた税金などを差し引いて過不足を精算する手続きです。年金収入は所得区分では「雑所得」にあたります。公的年金には国民年金、厚生年金、共済年金があります。

確定申告が必要かどうかは、年金収入と他の所得のそれぞれの金額によって判断します。
上記の4つに当てはまらない人でも、以下の(1)と(2)に当てはまる人は、確定申告が必要です。

(1)公的年金等の収入が400万円以上であれば、他の所得の有無に関わらず申告が必要
(2)公的年金等の収入が400万円以下であっても、他の所得が20万円以上あれば申告が必要
(3)公的年金等の収入が400万円以下で、他の所得が20万円以下であれば申告は不要(「確定申告不要制度」対象者。後述)

なお、年金収入について確定申告が不要になることがあるのは、すでに源泉徴収されているからです。源泉徴収される基準は、65歳未満は108万円以上、65歳以上は158万円以上です。したがって、源泉徴収が行われない外国で支払われる年金については、確定申告をする必要があります。

確定申告が必要な「雑所得」に分類されるのは?

では、確定申告が必要な可能性のある、公的年金以外の「雑所得」にはどのような項目があるのでしょうか。

「雑所得」に分類されるのは、以下9つのいずれにも当てはまらない収入です。
① 「利子所得」
② 「配当所得」
③ 「不動産所得」
④ 「事業所得」
⑤ 「給与所得」
⑥ 「退職所得」
⑦ 「山林所得」
⑧ 「譲渡所得」
⑨ 「一時所得」

「雑所得」とは具体的には以下のような例があり、広範囲にわたります。

・個人的にお金を貸して得た利子
・インターネットサイトなどでのアフィリエイト収入
・原稿料(フリーランスが個人事業主となって継続的に収入を得る場合は「事業所得」)
・講演料
・放送出演料
・フリーマーケットの売却収入
・ハンドメイド作品の販売収入
・一口馬主が受け取る賞金

なお、雑所得と混同しやすい「生命保険の満期返戻金」や「懸賞の当選金」などは「一時所得」です。

確定申告不要制度とは|対象になるのはどんな人?

高齢者にとって確定申告書の作成は難しく、煩わしいものです。高齢化社会の進展で年金と給与の両方を受け取る人が増える中、国は年金受給者の確定申告の負担を減らすため、「確定申告不要制度」を設けています。「確定申告不要制度」を利用すると、年金収入額とその他の所得が一定の基準以下である場合に確定申告が不要になります。

確定申告不要制度の対象になるのは、上記(3)の「年金収入額が400万円(複数の年金を受給している場合は合計額)以下で、かつ「公的年金等の雑所得以外の所得金額」(以下、他の所得)が年間20万円以下の人」です。

「雑所得」が20万円を超えないように工夫が必要

「確定申告不要制度」を利用するために立ちはだかるのが、「雑所得20万円の壁」です。

最近ではフリマアプリなどを使って家にある不用品を売る人が増えていますが、年金以外の他の雑所得と合わせて20万円を超えなければ申告する必要はありません。この20万円という基準は、売った金額ではなく経費を差し引いて得た手取り額なので、ほとんどの人は20万円以下になるのではないでしょうか。しかし、逆に言えば「雑所得」が20万円を超えると申告しなければならないということです。

確定申告は手間や時間がかかるだけでなく、申告すれば課税される可能性が高まります。確定申告を回避したいと思うならば、年間で得る雑所得の金額を把握し、調整するなどの工夫が必要です。生活を支える年金を、少しでも有効に使えるように考えたいものです。

※各種控除を受ける人などは、確定申告をすることによって税金が還付される場合もあります。
※納税は憲法で定められた国民の義務です。必要な場合は正しく申告しましょう。(提供:Dear Reicious Online

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