(本記事は、近藤 悦康の著書『はたらくを、しあわせに。』株式会社クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

成長の5段階ステップ

(画像=Luis Molinero/Shutterstock)

人間の成長を生み出す5段階ステップ、1つ目は「知る」、2つ目が「分かる」、3つ目が「行う」、4つ目が「できる」、5つ目が「分かち合う」です。

たとえば、あなたが人に伝える力、プレゼンテーション力を高めたいとします。そのために、これからお伝えする4つの実行アイデアがあるとしたら、何を選ぶかを考えてみてください。

「プレゼンテーションについて書かれた本を読む」
『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)や、『伝える極意』(集英社)といったプレゼンスキルアップの本を読む。
「プレゼンテーションの上手な人の話を聞きに行く」
講演会やセミナーに行ったり、TEDの動画を視聴する。
「プレゼンテーションのロールプレイ、練習をする」
たとえば、営業役とお客様役に分かれて営業提案の練習をする。就活生であれば模擬面接をやってみる。
「人を集めて、1か月以内にプレゼンテーションのレクチャーをする」
10名くらいの人を集めて、プレゼンテーションの勉強会を開いてレクチャーをする。

どの選択肢が正解、というものはありません。いくつやってもOKです。あなたがプレゼンテーション力を高めたいと思ったとき、どの選択肢を実行するでしょうか?

(画像=はたらくを、しあわせに。)

まず、選択肢①の「プレゼンテーションについて書かれた本を読んでみる」は、「知る」学習です。本に書いてあるノウハウを、頭で理解し参考にする方法です。

次の選択肢②「プレゼンテーションの上手な人の話を聞きに行ってみる」は、「知る」「分かる」学習です。人の話を聞いて、話し方、伝え方を学ぶ方法です。目で見れるため、本以上に具体的なイメージが湧きやすいでしょう。

しかし、見たからと言って、いきなり伝わるプレゼンテーションができるかと言えば、そうではありません。

この、「知る」「分かる」という学習は、「知識・理解の学習」です。学生と社会人の違いを前述しましたが、学生時代の優秀さの基準は、この知識を理解する学習ができているか―でした。

ところが、社会に出ると基準が一気に変わります。

知っている、分かってる、ということよりも、「あなたは何が行えて」、「それがどれくらいできて」、「さらにそれを、どれくらい人にできるようにさせてあげられたか」が、社会で問われる評価基準なのです。

先ほどの選択肢の③「プレゼンテーションのロールプレイ、練習をしてみる」というのは「行う」学習です。そして、何度も練習を重ねることで、習得し、「できる」という段階になっていきます。

最後の選択肢④「人を集めて、1か月以内にプレゼンテーションのレクチャーをする」というのは、「分かち合う」段階の学習です。

「行う」以降の学習は、「技術を体得する学習」です。頭で分かるのと、実際に自分で実践できるのには、根本的に違いがあるわけです。

もちろん、知識が不要というわけではなく、私も学生さんには、若いうちに本をたくさん読むことをすすめています。本を読むことも、できる人を見て吸収することも、とても大事です。ただし、その学習で満足してはいけません。

負荷の先にこそ付加価値がつく

先ほどのプレゼンテーションの力を高める4つの選択肢の中で、いくつでもチャレンジしたいと思える方には、全部選ぶことをおすすめします。

その中でも、絶対にやった方がいい選択肢は、④「人を集め、1か月以内にプレゼンのレクチャーをする」です。

なぜなら、この選択肢を選ぶと、必然的に、「分かち合う」ことができる実力を身につける必要があります。そのため、知識や経験が不足している方なら、本を読んだり、プレゼンの上手な人の話し方を研究したり、知識・理解の学習をすることになるはずです。そして、練習を繰り返し、周囲にアドバイスをもらい、技術を体得する学習を重ねた上で本番に臨むのではないでしょうか?

そして実際にレクチャーをやってみて、「ここはうまく伝わったな」と思うこともあれば、「もっとこうすればよかった」と改善点も出てくる。これが、体系だった、成長するために必要な学習のプロセスなのです。

しかし、4つの選択肢で、レクチャーを目標にして、実際に行動できる人はそれほど多くありません。

なぜかと言えば、これらの選択肢は①から④の順でレベルが高くなり、当然④は一番負荷のかかる選択肢であるからです。

でも、成長する人材は、④を積極的に目指し、行動をとれる人材なのです。

実は、人が成長するには「負荷(ストレス)」が必要です。筋肉をつけるにしても、筋肉痛を感じるくらいのトレーニングをしないといけません。

しかし、人は辛いことを避け、負荷を嫌いがちです。そんな負荷から逃げず、積極的に立ち向かい、乗り越えるためには、「こうなりたい」という「理想」が必要なのです。

一流のアスリートたちは、毎日激しい練習をしています。心身ともに過酷なはずです。でもなぜ、彼ら彼女らはやれるかというと、記録を伸ばしたい、試合に勝ちたいなど、強い理想を持っているからです。

つまり、成長するためには、自分がなりたい理想の姿を描き、そこに向けて負荷を恐れずに挑戦することが必要なのです。

人間は、仕事や練習で大きな負荷がかかると、次のような言葉が頭をよぎります。

「難しい、無理、できない、面倒くさい、大変」

そして、多くの場合、「だから、やらない」が付け加えられます。

たとえば、「プレゼンテーションの力を高めたい」と思う人はたくさんいるでしょう。しかし、人前で話す機会が与えられると、緊張するなぁ。うまく話せなかったらどうしよう。自分よりもうまく話せる人がいるんじゃないか。ここで恥かくのイヤだな。もうちょっと練習してからやりたいな。などと、「やらない理由」を考えてしまう人が同じくらいたくさんいるのです。

そう考えてしまう人は、結局やらないままになってしまい、今のプレゼン力と明日のプレゼン力が変わらない、現状維持の人になってしまうのです。

「成長痛」があるから成長できる

(画像=Jasminko Ibrakovic/Shutterstock.com)

では、誰もがアスリートのような強靭な精神力を持って負荷を乗り越えられるか?

というと、そういうわけではありません。

私も負荷から逃げやすいタイプでした。

そんな私が挑戦できたのは、負荷を「苦痛」と思うのではなく、「成長痛」と捉えることにしたからです。

筋肉を鍛えるには、筋繊維が断裂して、筋肉痛になるくらいの負荷が必要なように、仕事で成長するにも、成長痛を感じるくらいの負荷が、どうしても必要になるのです。

何かを得るには「代償」を先払う覚悟を持ちましょう。

ちなみに「成長痛」という言葉はマジックワードです。

先ほど、マイナスの言葉を3秒ルールでプラスに変えるとモチベーションをキープしやすいとお伝えしましたが、切り替える言葉が思いつかないときは「成長痛」と言えば、ほとんどのマイナスの言葉をプラスに変えられます。

成長に必要な負荷が大きくかかっているときに、「苦痛だ」、「辛い」とできるだけ思わず、言ってしまったり、頭によぎってしまっても、すぐに「成長痛」と言い換えみててください。

神様は乗り越えられない壁を人の前に与えないと言います。

(画像=はたらくを、しあわせに。)

たとえば、みなさんの前に「内閣総理大臣になりませんか?」といきなり打診されることはありません。

私たちの目の前に現れるのは、自分の未来の半歩先につながる成長の機会なのです。

逆に言えば、それを超えない限り、次のステージに上がることもできません。

近藤 悦康 (こんどう・よしやす)
人材採用・育成のコンサルティングや就職支援事業を行う株式会社Legaseed(レガシード)の代表取締役。1979年岡山県生まれ。2009年enジャパン調査の学生が選ぶ「こんなプロになりたい大賞」において10位。独自の人材採用手法が、テレビや雑誌をはじめ多数のメディアにも取り上げられ、NHKの『クローズアップ現代』『ソクラテスの人事』『めざせ!会社の星』、テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』、FMラジオ・J-WAVEなどにも出演する。2013年株式会社Legaseedを設立。ゲーミングシミュレーション、アクションラーニング等を用いた人材採用や人材育成の仕組みを全国450社以上の企業に導入。研修の受講生は延べ8万人を超える。同社も、創業6年目で社員30名でありながら年間1.7万人を超える学生が応募する人気企業に。
「Rakutenみん就」において学生が選ぶ「2021年卒インターンシップ人気企業ランキング」では全企業中10位。また、人材業界では1位となり、『日経ビジネス』でも紹介された。著書に『日本一学生が集まる中小企業の秘密』(徳間書店)『社長のための、会社を潰さない人材採用術内定辞退ゼロ』(実業之日本社)『伸びてる会社がやっている「新卒」を「即戦力化」する方法』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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