(本記事は、小林裕彦氏の著書『温泉博士が教える最高の温泉 本物の源泉かけ流し厳選300』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)

温泉にまつわる体験

(画像=airdone/Shutterstock.com)

●その1 成り行きで混浴(東北のある有名な温泉地で)

素泊まりだったので、旅館お勧めの近くの焼肉屋さんで食事をしました。昼間いろいろな温泉に立ち寄り入浴して、旅館に着いたのが遅かったので、荷物だけ置いてすぐに食事に出ました。

カウンターで焼肉を食べるという感じのお店でしたが、ご主人がカウンター越しに適当なタイミングで新鮮な魚介類を出してくれて、それも焼いて食べるという面白いやり方のお店でした。

すると、隣の席でひとりで食事をしていた妙齢を少し超えたような感じの温泉巡りが趣味の女性とどういうわけか意気投合してしまいました。私が泊まっている旅館の名前を聞かれたので、それを言うと、「まだそこ行ったことがないので、連れて行って欲しい」とのことでした。

そこで、酔っぱらった勢いで、その女性を旅館まで連れて行ったのですが、何と混浴であることを知らなかったので、結局ふたりで混浴することになりました。

ふたりしかいなかったので、「本当に入りますか?」「ええ」という感じで、お互い男女別の浴室で服を脱いでザブンと入りました。浴槽はまあまあ広くて、1メートルくらいの距離で、しばらくたわいのない話していると、「そろそろ帰らなくては」ということで、その女性はささっと出て帰って行きました。浴室は暗い上、温泉も黒いので、何も見えませんでした。

●その2 帰らない仲居さん(九州のある有名な温泉地で)

ひとりで晩酌をしていると、妙齢を少し超えたような感じの愛想のいい仲居さんが料理を持ってきてくれて、いろいろお話をしていたのですが、私しか宿泊者がいなかったこともあって、「お客さん、話が面白いね。一緒に飲みたいわ」などと言い出して、自分でお酒とつまみを持って来て部屋で飲み始めました。

大変乗りのいい人で、話もそれなりに面白かったのですが、なかなか帰ろうとしませんでした。そうこうするうち、その女性は敷いてある布団をちらちら見出したりしたので、どうなることかと内心戸惑っていました。

すると、今度は、旅館の女将さんと思しき方が現われて、「私も一緒しようかな」などと言い出して、女将も加わって3人で盛り上がってしまいました。それからしばらくしてやっと女将と女性は帰っていきました。何というか、旅館のスタッフ参加型の不思議な旅館でした。

翌日はその愛想のいい仲居さんはいらっしゃいませんでした。なお、女将と仲居さんが飲んだお酒は幸いなことに、私に付けられていませんでした。

●その3 秘湯美人効果(北のある有名な温泉地の旅館で)

食事のときから、妙齢の女性がひとりで泊まっていることには気付いていました。夕食後、しばらくして、小さい橋を超えて、階段を降りて混浴の露天風呂に行くと、その女性がひとりで入っていました。私が「お邪魔してもいいですか?」と聞くと、「どうぞ」という明るい声が返って来ました。女性は後ろを向いていたので、私は浴衣を脱いで、「失礼します」と言って、少し小さめの混浴の浴槽に入りました。

その後、浴槽の中でたわいもない世間話をして、いつの間にか向き合って話をしていました。温泉は白濁した硫黄泉で、女性の肩から上が見えるのですが、月あかりに照らされて、その女性は大変綺麗に見えました。秘湯でひとり旅の妙齢の女性と会うと少なからず綺麗に見えるもので、私はこれを「秘湯美人効果」と勝手に呼んでいます。

温泉はどちらかというと熱めでしたが、女性がなかなか出ようとせず、私も出にくくなってしまい、「のぼせそうですね」「では、一緒に出ますか」などと言って、「せーの」で同時に浴槽から出ました。お互い後ろを向いて浴場を出て着替えようと言っていたので、後は特に問題はありませんでした。

翌日の朝食で、その女性と会いましたが、軽く会釈をしただけで、特にお話はしませんでした。朝見ると普通のひとり旅のOLという感じの方でした。

●その4 近づいてくる何か(岩手県にある浴槽が個性的な旅館で)

宿泊者は私と4人組の男性グループの2組だけでした。私は3階で、4人組は2階の部屋でした。

熟睡していると、深夜に廊下を何人かがスリッパでパタパタ走るといった音で突然起こされました。最初は、さきほどの4人組が騒いでいるのか、うるさいなと思ったのですが、その直後、「こんな時間に廊下を走り回る人はいる筈ないな、気味が悪いぞ」と思った瞬間、いわゆる金縛りになってしまいました。

その直後ですが、横向きになって寝ている私の背後から何者かがじわりじわりと近づいて来たのです。畳の上をミシミシと歩いて来るのがはっきり分かりました。しかも4本足ということが感触で分かりました。

「もうこりゃもう駄目かな」と思ったとき、どういうわけかたまたま亡き祖母のことを思い出しました。そうすると、少しずつ手足の指が動き出しました。すると、先ほどの近づいて来た気配が少しずつ後ずさりしていくではありませんか。

私は温泉に行くと必ず何枚か写真を撮るのですが、このような怖い体験をしたときは、撮った写真は後で見ても、そこに行った記憶というか実感がありません。こんな所に行ったのかなとか、写真は私が本当に撮ったのだろうかといった感じで、狐につままれたような感じになります。

●その5 妻も感じた恐怖(栃木のある有名な温泉地に近い秘湯で)

このときは、珍しく妻と一緒に温泉巡りをしていました。妻はいろいろな温泉に入り疲れたようで、車で待っているとのことだったので、私がひとりで、ある旅館に日帰り入浴に行きました。もう夕方で少し薄暗くなっていましたが、旅館の玄関は真っ暗でした。声をかけると、ご主人らしき人が出てきて、日帰り入浴はOKでした。

初めに入った内湯は何ともなかったのですが、露天風呂に入った瞬間に「やばい感じ」(誰かにじっと見られているような得体の知れない怖さ)を強く感じました。そこで、すぐに露天風呂を飛び出して、着の身着のままでフロントへと駆け出しました。

そして、私がフロントで着替えているとき、旅館の人は私をじっと見ていました。そして、私は挨拶もそこそこに小さい橋を渡り、少しばかりの坂を不動明真言を唱えながら駆け上がっていきました。そのとき、坂の上で白っぽい服がチラッと見えたので、私はてっきり妻が車の外に出ているものとばかり思いました。

少し補足すると、私は何か怖いことがあると、「のうまくさんまんだ…」という不動明真言を唱えることにしています。ケースによっては、逆にそれを唱えるとかえってやばい感じがして控えるときもあるのですが、大抵の場合は、その真言で事が収まることが多いのです。

しかし、妻は車の中で私を待っていたのです。山の中の駐車場にもかかわらず、近くで3人の女性の話し声が聞こえてきて、しかもその話し方が古い感じの話し方だったそうです。このため、妻は生まれて初めて得体の知れない恐怖を感じて、車にロックをして私を待っていたそうです。

すると、私が必死の形相で坂を登って車に近づいてきたので、妻はすぐに異変に気付いたとのことです。私は妻に、「バックミラーを見ると何かが写るから見るなよ」と言い、その場を急いで立ち去りました。

妻は、それまでは、私が温泉で怖い体験をした話をしたり、テレビで心霊特集などを観ていると、ばかばかしいと言って鼻で笑っていたのですが、このとき以降は、そのようなことを一切言わなくなりました。良かったのか悪かったのかよく分かりませんが、夫婦の価値観がある部分で共通になったことは間違いありません。

こんな旅館はオエン!

私は、あくまでも温泉重視で旅館を選びます。そして、温泉を大事にする旅館はお客さんのことをよく考えてくれている可能性が高いので、あまり不快な思いをしたことはありませんが、長年いろいろな旅館に行くといろいろなことがあります。

こんな旅館はオエン!(岡山弁で「駄目」という意味です。)という旅館は、次のとおりです。

(1)掃除をしていない。

髪の毛が落ちていたり、冷蔵庫の中に、前の客が残した物が入っていた。 清掃しないと蟻が湧きますよ。

(2)水道をひねると茶色の水が出てくる。

しばらくお客が泊まっていなかったことが見え見えです。

(3)天ぷらなどが冷たく、手作り料理が少ない。食事の量が少ない。味噌汁に小さな虫が浮いている。

私は以前、食事の量が少なくて満腹にならなかったので、知らない他人が隣席でたくさん残していたのを、やむを得ずつまみ食いしたこともあります。ここは二度と行きたくない旅館です。

(4)玄関で靴が散乱している。

家族の靴が一緒にぐちゃぐちゃになっていた所もありました。

(5)窓から隣の旅館しか見えない。

転地効果を考えると、やはり眺望は大切です。

(6)食事中に布団を敷きに来る。

これに限らず、客よりも旅館のスタッフが自分達の都合を優先させるような旅館は駄目です。

(7)廊下が真っ暗になっている。

安全確保の点からも問題ありです。

(8)壁が薄くて隣の声が聞こえる。

安物のアパート以下ですね。

(9)カーテンが外れて垂れ下がっている。

それほど手間はかからないので、修理しましょう。

(10)部屋の中に蜘蛛の巣が張っている。

絶対清掃をしていないです。ある意味恐い。

(11)部屋が傾いている。畳が浮いている。

気分が悪くなります。

(12)エアコンがうるさい。

修理しましょう。

(13)廊下にガラクタを置いている。

旅館はごみ捨て場ではありません。

(14)掛け軸や絵の裏にお札が貼っている。

自殺者が出たのではと勘繰ります。

(15)女性を呼ぼうとする。

みんなその目的で来ているのではありません。

(16)仲居さんが妙に馴れ馴れしい。

一人でゆっくりしたいときもあるのに。

(17)バスタオルやドライヤーがない。

何故?

(18)煎餅布団で、朝起きると体が痛い。

江戸時代じゃあるまいし。

(19)カメ虫などが入ってくる。

臭いが取れません。

(20)チェックアウトの前に温泉に入れなくなる。

温泉が目的でわざわざ泊まっているのに。

(21)インターネットの写真と実物が違い過ぎる。

景表法違反かも。

(22)カランのお湯がすぐに止まる。廊下に「節電」の紙を貼っている。

どうやって洗面桶にお湯をためるのかよく分からない。お客に節電を言っては駄目です。ケチりすぎの旅館にはリピーターは来ません。

(23)個人客を大切にしない。

ツアーの団体客よりも粗末に扱われると誰もリピートしませんよ。

(24)夜にスタッフが誰もいなくなる。

危険です。法令違反です。

(25)浴槽にカニ、カエル、ヘビなどが入っている。

カニとカエルくらいなら許せますが、ヘビはちょっと。

(26)浴槽がヌルヌルしている。

清掃しましょう。病気になりますよ。

(27)露天風呂で、蚊などが多くて、殺虫剤がないと入れない。

四方八方から攻めてくるので防禦が大変です。

(28)インターネットの口コミに対して、むきになって反論する。

某大学の広報担当ですかね。

小林裕彦(こばやし・やすひこ)
小林裕彦法律事務所代表弁護士。1960年大阪市生まれ。84年一橋大学法学部卒業後、労働省(現厚生労働省)入省。89年司法試験合格、92年弁護士登録。2005年岡山弁護士会副会長。19年(平成31年度)岡山弁護士会会長。11年から14年まで政府地方制度調査会委員(第30次、31次)。14年から岡山県自然環境保全審議会委員(温泉部会)。現在は岡山市北区弓之町に小林裕彦法律事務所(現在勤務弁護士は9人)を構える。企業法務、訴訟関係業務、行政関係業務、事業承継、事業再生、M&A、経営法務リスクマネジメント、地方自治体包括外部監査業務などを主に取り扱う。著書に『これで安心!! 中小企業のための経営法務リスクマネジメント』等。

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