(本記事は、小林裕彦氏の著書『温泉博士が教える最高の温泉 本物の源泉かけ流し厳選300』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)

自分に合った温泉の選び方

好き嫌い
(画像=favorita1987/Shutterstock.com)

●温泉の好き嫌い

温泉を選ぶに当たって大切なことは、人それぞれに温泉にも好き嫌いがあるということです。温泉に行く目的も人によって異なると思います。

私の場合、精神的に疲れているときは、北海道か東北の温泉に、肉体的に疲れているときは九州の温泉に、どちらも疲れているときは信州、北関東の温泉に行くことが多いのですが、これも大まかな傾向にすぎません。

いわゆる高級旅館に関しては、私も何度か1泊3万円以上とか5万円以上の高級な温泉旅館・ホテルに泊まったことがあります。某亭、某荘、某楼、某庵などといったところでしょうか。また、某リゾートの施設にも泊まったことがあります。

しかし、豪華だった、立派だったという以外に何も記憶に残っていませんし、リピートしたこともありません。私の場合、やはり本物のかけ流しの温泉に浸って心身の疲れを癒やしたいということと、未知なる秘湯を極めたいという要求が強いからです。

温泉の好き嫌いは人それぞれなので、メディアとか温泉紹介本に欺されることなく、是非自分の感性に合った温泉を探していただきたいと思います。

●良質の源泉かけ流しの見つけ方

源泉かけ流しの温泉に行きたいというのであれば、それに関する書籍のほか、インターネットで、例えば、「青森県源泉かけ流し」とか、「青森県秘湯」といったワードで検索すれば、いろいろ出て来るので、それらの中から最も信頼できそうなものを選べばいいと思います。そして、その旅館等のホームページを探して泉質等を検討して、その上で、直接電話で源泉の状況や塩素殺菌がされていないことなどを確認するという方法を私はとっています。

電話で源泉に関する情報を聞こうとして態度が冷たい所は、私の経験上、やめた方がいいかもしれません。というのは、源泉に関する情報をあまり開示したくないか、源泉を売りにしていない可能性が高い旅館だからです。

源泉を大切にしていることが伝わってくる宿なら、間違いはないと思います。

●温泉地での旅館の選び方

また、温泉地で旅館を選ぶときは、その温泉地の観光協会などに聞くのもひとつの手です。「どこが一番泉質がいいですか」とか「どこが一番湯量が多いですか」などと何人かに聞けば、源泉にこだわっている旅館が大体分かります。

逆に、観光協会などで、「どこも泉質は同じですよ。」などと素っ気ない回答が返ってくる所は、源泉の集中管理方式だったり、循環風呂が多い傾向があると思います。

●日帰り入浴を積極的に受け入れている旅館

一般的に、日帰り入浴有りの旅館、ホテルの方が、そうでないところに比べて、源泉かけ流しの割合が高いと思います。

温泉地の旅館の何か所かを日帰り入浴で入って、自家源泉であることが分かったり、いったんタンクに貯めないで源泉をそのままかけ流しにしていることが分かったりして、泉質がいいなと思って、次に行ったときにそこに泊まることがよくあります。宝物を発見したようなわくわくした気持ちになりますね。

●日本源泉かけ流し温泉協会

源泉の詳細なデータと浴槽への源泉への注入量に基づき、鮮度の高い高品質の温泉を謳い文句にしているところが素晴らしいと思います。

加盟温泉地と個人会員がありますが、加盟温泉地は川湯・摩周、ぬかびら、虎杖浜、湯田川、高湯、奥塩原、関、野沢、十津川、岩井、湯原、長湯、宝泉寺といった、比較的源泉かけ流しの多い、良い温泉地が加盟しています。個人会員は高級なところが多いかなという感じもしますが、良質のかけ流し温泉を選ぶひとつの参考にはなると思います。

●九州八十八湯めぐりと別府八湯温泉道

九州八十八湯は、令和元年9月1日現在で、合計142の施設があるようですが、そのうちの八十八湯のスタンプ「御湯印帳」にもらうと「泉人」として表彰されるというものです。私も第1480代「泉人」になっています。九州7県の良質な源泉かけ流しの施設が加盟しており、大変参考になります。

別府八湯とは、別府、浜脇、鉄輪、明礬、観海寺、亀川、柴石、堀田の八湯のことです。その中から厳選された144施設(平成27年4月1日現在)のうちの88湯のスタンプを集めると「温泉道名人」に認定されて、別府鉄輪のひょうたん温泉の「温泉殿堂」に写真付きで表彰されます。私も第7222代「別府八湯温泉道表泉家名人」になっています。この別府八湯温泉道も、良質な源泉かけ流しが加盟しているので、大変参考になります。

●日本「八十八湯×八」巡り

私は、北海道、東北、関東、甲信越、中部、関西、中国四国の各地域ブロックにも、八十八湯巡りを創って、これを九州八十八湯とリンクさせて全国に「八十八湯×八」湯制度を創設して、本物の源泉かけ流しを周知したいと考えています。これは私の夢です。

好きな温泉地は?

よく聞かれる質問ですが、後で述べる共同湯が充実した温泉地のほか、源泉かけ流しが多く、さまざまな種類の泉質が良い温泉が密集している温泉地としては、八甲田温泉郷(青森県)、鳴子温泉郷(宮城県)、塩原温泉郷(栃木県)、吉松温泉郷(鹿児島県)などが挙げられます。

また、市街地に良質の源泉かけ流しの日帰り入浴施設が多いのは、函館市、甲府市、人吉市などでしょうか。この辺りは、後の地域別おすすめ温泉200選にもよく出てくる所です。

温泉は体にいいの?

これもよく聞かれる質問です。温泉に入ることは医療行為ではないので、適応症ということしか言えません。よく何々泉の飲用が糖尿病の適応があるとか言いますが、私はあまり泉質ごとの適応症は気にしていません。

ただ、飲用した瞬間に「あーこれは胃腸にいいな」と感じる温泉はありますし、入った瞬間に水虫とかに良さそうだなと思うことはあります。

一般的に、温泉の効用は、温熱効果、浸透圧効果、浮力効果など家庭のお風呂に入ることと同様の効果のほか、転地による心身の「凝り」に対するリラックス効果が大きいのではないかと考えています。

その意味で、昨今問題になっているメンタルヘルスにも一定の効果があるのではないかと考えています。地味ですが、意外に効果は大ですよ。

温泉博士が教える最高の温泉 本物の源泉かけ流し厳選300
小林裕彦(こばやし・やすひこ)
小林裕彦法律事務所代表弁護士。1960年大阪市生まれ。84年一橋大学法学部卒業後、労働省(現厚生労働省)入省。89年司法試験合格、92年弁護士登録。2005年岡山弁護士会副会長。19年(平成31年度)岡山弁護士会会長。11年から14年まで政府地方制度調査会委員(第30次、31次)。14年から岡山県自然環境保全審議会委員(温泉部会)。現在は岡山市北区弓之町に小林裕彦法律事務所(現在勤務弁護士は9人)を構える。企業法務、訴訟関係業務、行政関係業務、事業承継、事業再生、M&A、経営法務リスクマネジメント、地方自治体包括外部監査業務などを主に取り扱う。著書に『これで安心!! 中小企業のための経営法務リスクマネジメント』等。

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