アパレル大手の三陽商会の行く先は、どうなるのだろうか。英バーバリーとの契約打ち切りにより赤字経営が常態化し、4月14日に発表した最新決算ではさらに赤字幅が拡大した。新型コロナウイルスの影響を受ける中、果たして経営を建て直すことはできるのだろうか。

最終損益、約27億円まで膨らむ

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(画像=Willy Barton/Shutterstock.com)

4月14日に発表されたのは、2020年2月期(2019年1月1日~2020年2月29日)の連結業績だ。最終損失は前期の8億1,900万円からさらに増えて26億8,500万円まで膨らみ、赤字は4期連続となった。決算期の変更によって今期は変則的な14ヵ月決算となっているが、期間が2ヵ月多いことを加味してもマイナス幅の増加は顕著である。

また前期と比べ、営業利益と経常利益ともにマイナス幅が拡大した。

・営業利益:28億7,500万円のマイナス(前期:21億7,600万円のマイナス)
・経常利益:28億9,900万円のマイナス(前期:19億5,000万円のマイナス)

三陽商会の業績悪化に拍車をかけたのは、新型コロナウイルスだ。感染拡大による消費マインドの冷え込みと外出自粛は、大きな打撃を与えた。また中国からの団体旅行客などが大幅に減ったことは、同社の主な販売先である百貨店の来店客減少にもつながっている。

三陽商会は、2021年2月期(2020年3月1日~2021年2月28日)の連結業績予想の発表を延期。同社は主な販路である百貨店や自社直営店の休業を1ヵ月程度と見込んでいることに触れつつも、新型コロナウイルスの終息時期などについて「現時点では不確定要素が多い」とし、発表延期を決めた。

徹底的な組織スリム化でV字回復を目指す

2015年6月に三陽商会とイギリスの高級ブランド「バーバリー」の契約が終了し、その後は三陽商会の新たな屋台骨となるブランドの育成がうまくいっていない状況だ。苦境の中で新型コロナウイルスの感染拡大が追い打ちをかけ、現在の業績悪化に至っている。

しかし、三陽商会は手をこまねいているわけではない。決算発表では「再生プラン」を発表し、株主に対して経営再建を誓った。再生プランの基本方針を「基礎収益力の回復」と「事業構造改革の断行」とし、新型コロナウイルスのダメージを最小限に抑えるという。

具体的な再生プランの内容としては、「基礎収益力の回復」に向けて、不採算店舗や売場の撤退、販管費の削減に努めるという。この取り組みによって、2022年2月期には黒字転換を果たすことも掲げている。わずか2年で黒字転換を目指す計画は厳しい気もするが、それほどの決意がなければV字回復は難しいだろう。

不採算店舗や売り場の撤退については、「約150売場」という数字を再生プランの中で明記している。また、構造改革では組織のスリム化を実現することで、機動力の強化とローコスト化を狙う。具体的には13本部体制から6本部体制に変え、執行役員は15人から11人に減らすという。

生き残りをかけて必死の資金確保 最大90億円を捻出

新型コロナウイルスの終息が長引けば、三陽商会のキャッシュフローは日に日に厳しさを増していくことになる。この危機を耐え抜くためには、是が非でもキャッシュを確保しなければならない。

三陽商会は3月に追加で40億円の資金調達を行っているが、新型コロナウイルスの感染拡大が予想以上に長引いた場合は、追加で90億円を捻出する計画を立てているようだ。90億円は、仕入れや発注の抑制などによるコスト削減と、不動産などの資産の流動化によって捻出するという。

厳しい状況が続く三陽商会。生き残りをかけて、経営陣の危機対応能力が問われる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES

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