新型コロナをきっかけに夢の実現を

ファミリーオフィスのリアル#9
(画像=Dilok Klaisataporn/Shutterstock, ZUU online)

世界中が新型コロナショックに揺れていた今年3月。ファミリーオフィスを運営し、多くの富裕層に携わってきた百武資薫さんの下に、ある相談が寄せられた。

「こんな時だからこそ、長年の夢を叶えたい。一緒にやってもらえないだろうか」

東南アジアのある国に30年前から不動産を保有し、現地でホテルも経営している実業家の男性は、現在73歳。数百億円の資産を保有している超富裕層だ。10年くらいから前から経営の一線から退き、悠々自適な生活を送っていた。

毎朝、ジョギングをした後にヨガに興じ、週末にはゴルフを楽しむ。誰もがうらやむような、そんな生活を送っていたにもかかわらず、新型コロナをきっかけに、男性の心境は一変した。

「新型コロナのインパクトは大きく、社会や経済だけでなく、人々の価値観自体が大きく変わるだろう。私も73歳。そんなに先も長くないだろうし、今こそ長年の夢を実現させたいんだ」

男性の夢、それは、東南アジアに保有している広大な土地を活用し、リゾートを開発するというもの。「いつかできればいいなぁ」といった漠然とした思いから、「今しかない」へと、大きく気持ちが変わったというのだ。

そこで百武さんに声がかかった。「新型コロナで世界中が混乱しているさなかに大変なことですよ」と諦めさせようと説得を試みたものの、男性の気持ちは変わらない。「そこまで思いが強いなら……」と男性の夢を実現させるため、協力することにしたという。

土地はあるが、リゾート開発のノウハウは乏しい。しかも、男性の夢は大型リゾートの開発ということもあって簡単ではなかった。そこで、百武さんはこれまで培ってきた人脈を駆使し、世界中のホテル運営者や、開発業者などに連絡を取った。

とはいえ、新型コロナでリゾート業界も大打撃を受けており、開発どころではない。そのため、交渉は困難を極めたという。しかし、ある世界的なチェーンが興味を持って、「話を進めてもいい」と言ってきたという。

新型コロナの影響で、現地視察もままならないばかりか、チェーンとの話し合いも全てオンラインで行った。そういう意味で、通常の交渉のようにスピーディーには進まないものの、ゴールデンウィーク中も打ち合わせを重ねているという。

「私に残された時間は長くない。だからこそ夢を実現させたい。そのためには1日でも早く新型コロナの収束を願うばかりだ」

夢の実現に向けて、以前にも増して精力的に動いているという。