住みたい物件が見つかっても、住宅ローンはすぐに借りられるわけではない。ほとんどの場合、物件の検討と同時に情報収集をしながら住宅ローンの手続きを並行して進めていく。住宅ローンの借り入れまでにはいくつかの手順があるので、全体の流れを把握しておこう。

目次
1.住宅ローン契約と物件購入の大まかな流れ
2.情報収集をする
3.仮審査に申し込む
4.本審査に申し込む
5.住宅ローンを契約する
6.物件の引き渡しと融資実行
7.住宅ローンは諸費用も事前に確認
8.住宅ローンを借り入れした年は確定申告を

1.住宅ローン契約と物件購入の大まかな流れ

住宅ローン,流れ
(画像=PIXTA)

住宅ローンは情報収集をすればするほど迷ってしまう人も多い。だからこそ物件の情報収集をし始めたタイミングで並行して調べておこう。住宅ローンの大まかな流れとしては以下を参考にしてほしい。

順番 住宅ローン 物件
1 情報収集 情報収集、モデルハウス見学
2 仮審査の申し込み 物件購入の申し込み
3 本審査の申し込み 物件の売買契約
4 住宅ローン契約 入居説明会、内覧等
5 融資実行 物件引き渡し
(※筆者作成)

希望の物件が決まったら借り入れる住宅ローンを選び、仮審査に申し込む。住宅ローンの仮審査は住宅ローンを借りられるかチェックする簡単な事前審査だが、落ちる場合もある。

仮審査に通過すれば物件の売買契約をし、住宅ローンの本審査に申し込む。本審査でも落ちることはあるが、通常はローン審査に落ちたときに物件契約を破棄できる「ローン特約」が付いている。

住宅ローンの本審査に通ったら、いよいよ銀行と住宅ローン契約(金銭消費貸借抵当権設定契約)を結び、融資を受ける。融資が実行されるのは物件の引き渡し日と同日である。

住宅ローンの大まかな流れをつかんだら、具体的なポイントをみていこう。

2.住宅ローンの流れ1……住宅ローンの情報収集をする

各銀行ではさまざまな住宅ローンを扱っているため、1つ1つを確認するのは大変だ。そこで借入金利の種類から住宅ローンを絞り込んでいくのがおすすめだ。

住宅ローンの金利は変動金利と固定金利の2種類が基本

住宅ローンの金利にはいくつか種類があるが、代表的なのは変動金利、固定金利、固定期間選択型だ。

住宅ローンの「変動金利」は名前の通り金利が変動するタイプで、半年ごとに金利が見直される。基準になる金利が上下すれば、それに合わせて住宅ローン金利も上下する。金利が変わると支払利息も変動するが、毎月の返済額はすぐには変わらない。毎月返済額の見直しは5年ごとで、それまでは月々の返済額に占める支払利息の割合が変わり、返済額は一定に保たれる仕組みだ。

住宅ローンの「固定金利」は借入後に金利の見直しが行われず、変動のないタイプである。金利が変わらず安心感がある一方、変動金利と比べると高い金利になる。代表的な固定金利は公的機関の関わる「フラット35」だが、民間銀行でも借入期間の異なる独自の固定金利を用意しているところも多い。

住宅ローンの「固定期間選択型」は、5年や10年など一定の固定期間終了後に、その時点で金利を選び直せるのが特徴だ。

それぞれのメリットとデメリットを確認し、自分にはどの金利が向いているか検討しよう。金利の種類が決まれば、住宅ローンも絞られ、銀行ごとで比較しやすくなる。

不動産会社が提携する住宅ローンも検討しよう

住宅ローンの金利を選んでもたくさんの銀行があるため、どこまで比較すればいいのか迷うこともあるだろう。そのようなときは不動産会社の提携する銀行の住宅ローンをチェックするのも1つだ。

不動産会社は複数の銀行と提携しているところも多いので、内容は一度確認してみよう。提携の住宅ローンでも基本的には同じだが、銀行によっては金利を少し優遇するなどお得に借りられる場合もある。不動産会社が相談会を開催することもあるので積極的に活用したい。提携の銀行以外でも自分が気になった住宅ローンは比較対象にしていこう。

3.住宅ローンの流れ2……仮審査に申し込む

住宅ローンの仮審査は、その人が借り入れできるかを確認するため、物件の申し込み直後に不動産会社から銀行を指定され形式的に手続きをすることがある。必ずしもそこから借り入れる必要はないので、本当に借りる住宅ローンについてはじっくり検討してから仮審査を申し込もう。

住宅ローンの仮審査に必要な書類

住宅ローンの仮審査は簡易的な審査手続きであり本審査ほどの書類は求められない。最低限として提出が必要なのは本人確認資料、収入が証明できる書類、物件概要がわかるパンフレットなどだ。収入証明書類は会社員なら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書、法人代表者はそれらに加えて決算報告書の提出が必要な場合もある。

必要書類 具体例
本人確認資料 運転免許証、健康保険証、パスポート、
マイナンバーカード等
収入の確認できる書類 会社員 源泉徴収票
自営業者 確定申告書
法人代表者 上記に加え、法人の決算報告書
物件に関する書類 パンフレット、チラシ、販売図面など
(※筆者作成)

ほかに借り入れがある人は、このほかにも償還予定表や残高証明書が必要になる。準備する書類の詳細は仮審査を申し込む銀行に確認しよう。

住宅ローンの仮審査で審査されている項目

住宅ローンの仮審査は簡単な事前審査とはいえ、融資が難しいと判断された場合は借り入れを断られることもある。審査に落ちても理由は教えてくれないが、仮審査では本人の返済能力や信用力が確認されるといわれている。

住宅ローンの返済能力や信用力は大企業だから高いというわけではなく、本人の収入などと比較して無理のない借り入れでないかどうかなどだ。一般的には年収に占める住宅ローンの年間返済額を表す「返済負担率」が確認され、銀行ごとの基準をオーバーする場合は借り入れが難しくなる。ほかに借り入れがあればその分も考慮して審査されるため、全額返済してから申し込むほうが住宅ローンの審査上は有利に働きやすい。

住宅ローンの仮審査は1つの銀行だけではなく複数の銀行に申し込める。審査に通っても必ず借りる必要はなく、2〜3つまで住宅ローンを絞れたらすべて申込みをしておいてもいいだろう。結果は即日から長くても1週間程度でわかるため、その後でじっくり検討しても問題はない。

4.住宅ローンの流れ3……本審査に申し込む

住宅ローンの仮審査に通過したら、物件の売買契約を交わし本審査に申し込む流れになる。住宅ローンの本審査は仮審査よりも審査項目が増え、時間もかかる。より詳細な提出書類も求められる。

住宅ローンの本審査に必要な書類

住宅ローンの本審査で必要書類は個人ごとに変わるため銀行に確認が必要だが、一般的には以下の書類が求められる。

必要書類 具体例
本人確認資料 運転免許証、健康保険証、住民票など
収入の確認できる書類 会社員 源泉徴収票
住民税決定通知書または課税証明書
自営業者 確定申告書
申告所得税納税証明書
事業税納税証明書
法人代表者 上記に加え
法人の決算報告書
法人税納税証明書
法人事業税納税証明書
物件に関する書類 売買契約書
重要事項説明書
工事請負契約書
物件概要書
など
その他 印鑑証明書
団体信用生命保険の申込書(銀行が用意)
(※筆者作成)

収入を証明できる書類として仮審査と同じく源泉徴収票や確定申告書が必要になり、それに加えて住民税決定通知書など税金関係の書類も用意しなければならない。物件に関する書類も売買契約書など詳細なものが必要になるが、 物件関係の書類は不動産会社に伝えれば用意してくれるはずだ。住民票など役所が発行する書類は、発行から3ヵ月以内など制限があるので気をつけよう。

住宅ローンの本審査で審査されている項目

住宅ローンの本審査では物件の担保価値なども審査されため、詳細な書類提出が必要になる。本人要件は仮審査でも審査されたが、再度念入りに確認される。本審査では健康状態もチェックされ、健康に問題があると住宅ローンを借りるのが難しくなる。

健康状態のチェックは、団体信用生命保険の申し込みで確認される。団体信用生命保険とは住宅ローンの契約者が死亡するなどした場合に、保険金でローン残債をすべて返済してくれる生命保険である。銀行で住宅ローンを借りる場合は、団体信用生命保険の加入が必須になる。加入できなかった場合は、要件を緩和したタイプの団体信用生命保険に申し込むか、加入の必要ないフラット35の利用を検討しよう。

住宅ローンの本審査の結果通知は1〜2週間程度かかることが多く、融資の期限ぎりぎりにならないよう余裕を持って申し込みたい。仮審査と同様に住宅ローンの本審査に通過したからと言って契約しなければならないわけではないため、有力候補に絞って申し込んでおいてもいいだろう。

5.住宅ローンの流れ4……住宅ローンを契約する

住宅ローンの本審査に通過したら、次は契約書を交わす流れだ。金銭消費貸借抵当権設定契約(金消契約)といい、銀行と住宅ローンの借り主が借り入れ金額、返済期間、金利、担保などの借り入れ条件について契約する。ネット銀行ならWebや郵送のみで完結することもあるが、そうでなければ平日に銀行に出向いて契約が行われることも多い。

住宅ローンの契約書を交わすときには収入印紙が必要になり、借り主が負担することが一般的だ。収入印紙の金額は以下の通り(一部抜粋)であり、契約書1通ごとに貼付する。ペアローンなどで契約書が2通に分かれる場合は2通分の収入印紙が必要だ。銀行によっては1通にまとめる場合もあので、あらかじめ銀行に確認しておこう。

契約金額 収入印紙
500万円超1,000万円以下 1万円
1,000万円超5,000万円以下 2万円
5,000万円超1億円以下 6万円
1億円超5億円以下 10万円
(※国税庁のホームページを基に筆者作成)

6.住宅ローンの流れ5……物件の引き渡しと融資実行

金消契約の手続きが完了すれば、後は住宅ローンの融資実行だ。融資実行のタイミングは物件の引き渡しと同日であり、ほとんどの諸費用も住宅ローンの融資日かそれまでに精算される。通常は午前中に融資が実行され、午後にマイホームの鍵を引き渡すという流れが多い。住宅ローンの金利は、契約時ではなく融資日の金利が適用されるということも覚えておこう。

7.住宅ローンは諸費用も事前に確認

住宅ローン選びでは金利や借入額が意識されがちだが、諸費用についても意識して比較しよう。仮に新築マンションを5,000万円の35年ローンで購入するとすれば、おもにかかる諸費用は以下である。

諸費用 金額目安
融資手数料 3〜5万円
保証料 103万円
印紙税 6万円
司法書士手数料 10万円
登録免許税 固定資産税評価額の0.4%または0.15%
(※筆者作成)

これ以外にも火災保険料や引っ越し代などもかかるので、銀行や不動産会社に確認して概算費用を算出しておくことをおすすめする。住宅ローンの種類によっては保証料が無料の代わりに融資手数料が高くなる場合もあるので、諸費用は総額費用で比較するとよい。

8.住宅ローンを借り入れした年は確定申告を忘れずに

住宅ローンを借り入れした後に忘れてはならないのが確定申告だ。住宅ローン控除を受けるには、借り入れした最初の年に確定申告が必須になる。2年目以降は会社の年末調整で対応できるので手間はかからないが、1年目の確定申告は必ず実施しよう。

文・國村功志(資産形成FP)/MONEY TIMES

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