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地方のオープンイノベーション推進を追いかける企画「CLOSEUP OI」今回は首都圏でももっとも存在感のある地方都市のひとつである神奈川県横浜市です。

大企業も多く輩出しており、大学も数多く抱えている横浜ですが、2017年4月に「オープンイノベーション推進本部」を設置し、さらに2018年5月にはデータ活用によってオープンイノベーションを加速する「横浜市官民データ活用推進計画」を策定するなど、市がオープンイノベーションに対して積極的です。

人口も法人も多く、高い水準で産官学が揃った横浜市がどのような取り組みをしているのか見ていきましょう。横浜市のモデルは巨大な自治体におけるオープンイノベーションの雛形と言えます。

ライフサイエンス分野の産学官金連携プラットフォーム「LIP.横浜」

横浜市がライフサイエンス分野で産官学連携のためのプラットフォームとして取り組むのが「LIP.横浜」です。

ライフサイエンス分野はこれまでも横浜市が研究環境の整備や、総合特区制度などを活用した企業・研究機関のプロジェクト支援として投資していましたが、この動きをより加速するために発足したのがLIP.横浜です。

LIP.横浜は2019年4月には米国サンディエゴの起業家支援組織「CONNECT」と横浜市が連携したアクセラレーションプログラムを実施したり、同年11月には大手企業とのマッチングイベントを開催したりと、様々な機会を創出しています。

関連記事:米国サンディエゴの起業家支援組織「CONNECT」×横浜市 | ライフサイエンス分野でアクセラレーションプログラムを始動!

関連記事:横浜市が主催する「LIP.横浜」|ライフサイエンス分野に進出する大手企業とのマッチングイベントを開催、参加者を募集

横浜市×IoTを推進する「I・TOP横浜」

LIP.横浜がライフサイエンス分野ならば、I・TOP横浜はIoT分野に特化した共創の場です。IoTのビジネス活用に向けた交流、連携、プロジェクトの推進、人材育成を進めるために、横浜市がマッチングをコーディネートしています。

I・TOP横浜の取り組みのひとつとして、2019年9月には横浜市と相鉄バスと群馬大学が連携して自動運転の実証実験を開始しています。

I・TOP横浜がプロジェクトの調整として入り地域活性化に繋げる役割、相鉄バスは自動運転のバスの提供、群馬大学は自動運転の技術を提供することでオープンイノベーションを創出します。

関連記事:横浜市×相鉄バス×群馬大学|路線バスを用いた自動運転の実証実験を開始

ベンチャー企業成長支援事業の拠点「YOXO BOX(よくぞ ボックス)」

横浜市は2019年10月に関内エリアで、ベンチャー企業成長支援事業の拠点として、「YOXO BOX(よくぞ ボックス)」を開所することを発表しています。

同施設の利用イメージとしては、「起業志望者、ベンチャー企業などを対象とした成長支援プログラムのメンタリング、打合せ」や「ベンチャー支援の専門家が常駐する支援窓口での個別相談」、あるいは「イノベーション創出のための交流・ビジネスイベント」などを想定しているようです。

開所とあわせて「YOXO Accelerator Program 2019」と題したアクセラレーションプログラムが発足、進行しており、2020年3月に成果報告がされる予定です。前述のLIP.横浜やI・TOP横浜とも事業創出を目指して連携しています。

関連記事:横浜・関内をスタートアップの新たな集積地に――支援拠点「YOXO BOX」がオープン、アクセラレーションプログラムも開始

関連ページ:YOXO Accelerator Program 2019

横浜市×WeWorkがイノベーション都市を目指し連携

WeWorkと横浜市は以下の5つのポイントにおいて、「イノベーション都市」の構築を目指した連携を行う覚書を締結しています。

(1) 「イノベーション都市・横浜」とWeWorkのコミュニティを通じた、新たなイノベーションを横浜から創出していくスタートアップの支援

(2) オープンイノベーション・プラットフォーム(LIP.横浜、I・TOP横浜)とWeWorkのコミュニティによる新たなビジネス創出・中小企業のチャレンジ支援

(3) 健康経営のさらなる推進、女性の活躍推進

(4) 横浜への企業誘致等を目的とした国内外での連携

(5) その他、相互に有益なビジネス機会を創出するための情報交換、交流の促進

WeWorkはオーシャンゲートみなとみらいに店舗を2018年11月にオープンしています。スペースを提供するだけでなく、WeWorkのもつコミュニティや、入居している企業もイノベーションの創出に協力するようです。

関連記事:WeWork|横浜市と連携し、新たなイノベーションの創出やビジネスの加速を目指す

横浜市と東急による情報発信・活動拠点「さんかくBASE(WISE Living Lab)」

横浜市と東急電鉄は、2012年4月から産学公民の連携・協働による「次世代郊外まちづくり」に取り組んでいます。その拠点となるのが「さんかくBASE(WISE Living Lab)」です。

北欧やEUで取り入れられているリビングラボと呼ばれるフレームワークを採用して、住人が商品・サービス開発に参加できる共創の仕組みを構築しています。

「次世代郊外まちづくり」の一環として今年6月には、ドコモやNTTと共同で「たまプラーザ駅北側地区」のコミュニティ活性化に向けた「まち歩きサービス」と「地域チャットボット」という2つのICTサービスを提供する実証実験を開始しています。

関連記事:横浜市・東急電鉄・ドコモ・NTTが「データ循環型のリビングラボ」共同実証実験を開始

関連ページ:さんかくBASE(WISE Living Lab)

【編集後記】切り口の多い共創拠点の豊富さが魅力

横浜市は人口も法人数も多いため、様々な切り口のオープンイノベーション拠点が存在していることが魅力です。

以前に特集した島根県松江市はテック領域に振り切って地域のビジネスシーンを盛り上げていますが、横浜市のような巨大都市になると多様なアプローチを仕掛けて、間口を広げる狙いがありそうです。

次回の「CLOSEUP OI」で特集するのは、「ものづくり」をベースにしたオープンイノベーションを推進する岡山県岡山市。ものづくり事業者同士をマッチングする「Linkers」を活用したユニークな共創スキームにフォーカスを当てていきます。

(eiicon編集部 久野太一)