ペッパーフードサービスの主力事業の一つ「ペッパーランチ」が85億円で売却されることが決まった。さらに114店舗の閉店と200名の希望退職者を募集することを決定。新型コロナウイルスの影響で、「いきなり!ステーキ」の売上が低迷したためだ。果たして「いきなり!ステーキ」の立て直しは進むのだろうか。

新型コロナウイルスによって倒産した飲食業は46件で最多

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(画像=福本梨恵)

新型コロナウイルスは、外食産業に深刻な影響を与えている。自治体からの営業自粛要請や消費者の巣ごもりなどによって、飲食店が休業もしくは開店休業状態となった。

民間調査会社の東京商工リサーチによれば、6月30日時点における新型コロナウイルス関連の倒産件数294件(負債1,000万円以上)のうち、飲食業が46件で最多。同社が把握していない件数も含めれば、さらに数は増えるはずだ。

都心や駅前の一等地に店舗展開している飲食店は、特に家賃負担が重くのしかかる。運転資金などに使える内部留保などが乏しい企業は、金融機関からの資金調達で急場をしのごうとしているが、それでも事業の継続を断念する企業は出てくるだろう。

ペッパーフードサービスに深刻なダメージ――売上高が前年同月比で76.9%減

外食チェーン大手のペッパーフードサービスも新型コロナウイルスのあおりを受け、経営に深刻なダメージが出ている。6月1日には20億円の資金借入について発表があり、手元資金を手厚くして財務基盤の安定化を図る。

「いきなり!ステーキ」の売上減は深刻で、今年1~5月の各月の売上高は前年同月比で減少し続けた。1月が21.8%減、2月32.5%減、3月45.7%減、4月68.5%減、5月76.9%減と右肩下がりで推移している。

客数も月を追うごとに減っており、5月は前年同月比で71.2%減だった。

2019年12月期の最終損益が27億円のマイナスに

「いきなり!ステーキ」は新型コロナウイルスで大きなダメージを受けているが、新型コロナウイルスの感染が拡大する前から業績は悪化していた。そのような状況の中で新型コロナウイルス問題が起き、ペッパーフードサービスはさらに苦境に陥ったのだ。

2019年12月期(2019年1~12月)の連結業績は、以下のとおり。

売上高:675億1,300万円(前期比6.3%増)
営業利益:7,100万円の赤字
経常利益:3,400万円の赤字
最終損益:27億700万円の赤字

売上高こそ前期比6.3%増と伸びたが、その他の営業利益、経常利益、最終損益は厳しい数字となった。特に「いきなり!ステーキ」が足を引っ張っている。多店舗展開によって各店舗の売上が「共食い」状態となり、セグメント利益は前年同期比で63.8%減。2020年中に74店舗を閉店する計画が発表され、立て直しが急務であることがわかる。

業績改善を目指し「ペッパーランチ」を85億円で売却

そんな中、同社は主力事業「ペッパーランチ」を国内投資ファンド「J-STAR」が出資する持株会社「PLHD」に85億円で売却することを決定。さらに、「いきなり!ステーキ」と「ペッパーランチ」を114店舗を閉店すると発表した。

地域別だと、北海道地方3店舗、東北地方10店舗、関東地方57店舗、中部地方22店舗、近畿地方11店舗、中国地方3店舗、四国地方2店舗、九州沖縄地方6店舗が閉店する。

大量閉店に伴い、200名程度の希望退職者を募集することも決定。4月から役員報酬を3割〜5割削減するなどの対策を講じていたが、更なる業績改善を図るために下した苦渋の決断といえよう。

ペッパーランチの売却で巻き返しはあるか

非常事態宣言が解除され、日本国内の新型コロナウイルス感染者数は減少傾向にあるが、予断を許さない状況が続いている。「第2波」「第3波」が起きれば、飲食店の売上高がコロナ以前の水準まで戻るまで、さらに時間がかかるだろう。当面、ペッパーフードサービスの経営陣は難しい舵取りを迫られることとなる。

苦しい状況にある同社だが、延期された第1四半期決算は、7月31日に発表することが決定された。ペッパーランチの売却や大量閉店、希望退職者の募集によって、コロナ禍を乗り切れるかどうかが注目される。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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