「無印良品」を展開する良品計画が、四半期ベースで上場以来初となる営業赤字を計上した。新型コロナウイルスの影響によって、国内外で店舗の一時休業を余儀なくされたことが、業績悪化につながった。米子会社も破綻したことで、同社の先行きを不安視する投資家が増えている。
良品計画の最新の四半期業績と業績見通しは?
良品計画は7月10日、2020年8月期第1四半期(2020年3〜5月)の連結業績を発表した。
・売上高に相当する営業収益は前年同期比29.9%減の787億5,300万円
・営業利益は+103億5,400万円から−28億9,900万円
・経常利益は+96億300万円から−36億6,500万円
第1四半期の最終損益も、65億9,400万円の黒字から41億1,600万円の赤字に転落した。1998年の上場以来、同社が四半期ベースで営業赤字を計上するのは初めて。
同時に発表した2020年8月期(2020年3〜8月)の連結業績予想は、営業収益が1,745億円、営業利益が−20億円、経常利益が−29億円で、最終損益は39億円の赤字となる見通しだ。
アメリカ子会社が破綻 テナント賃料高騰にコロナのダブルショック
苦境に陥っているのは、日本だけではないようだ。良品計画は決算発表の同日、アメリカ子会社のMUJI U.S.A. Limitedが連邦破産法11条の適用を裁判所に申請したことを発表した。連邦破産法11条は日本の民事再生法に相当し、アメリカ子会社の破綻を意味する。
新型コロナウイルスの影響もあるが、アメリカ子会社の業績はこれまでも厳しかった。テナントの賃料がアメリカ子会社の業績を圧迫しており、経営再建に取り組んでいた最中に新型コロナウイルスが拡大したのだ。
すぐにアメリカ国内の全店舗を閉鎖するわけではないが、今後は営業を続けながら家賃の減額交渉や不採算店舗の閉店などを進めていくという。
株価は下落 回復に向けても不安感
四半期ベースで初の営業赤字、アメリカ子会社の破綻。この2つの発表は、良品計画の株価にどのような影響を与えたのか。7月10日の同社の株価は、日本経済新聞が取引終了の直前に米子会社の破綻について報じたこともあり、前日の終値1,449円から78円安の1,371円となった。
その後は1,350円(7月13日終値)、1,351円(7月14日終値)、1,385円(7月15日終値)と推移しており、7月22日現在、株価は7月9日以前の水準に回復していない。
新型コロナウイルスの終息時期の見通しが立たず、東京や大阪などの都市圏を第2波が襲う中、再びマーケット全体に警戒ムードが強まっている。このような状況では、良品計画の株価の回復にも時間がかかる可能性が高いと見る投資家も多い。
良品計画はどうこの苦境を乗り切るのか 2つの戦術
業績が厳しい状況にあり、株価も低迷する中、どのようにこの苦境を乗り切ろうとしているのか。良品計画は、2つの戦術を掲げている。
1,商品ラインナップの拡充と販売力の強化
良品計画の松﨑曉社長は、決算発表の記者会見で「消費が回復する局面はまだ遠い」と予測した上で、生活様式の変化で消費者のニーズが変化する中、その変化に対応しながら商品ラインナップの拡充と販売力の強化に努めていくと語った。
具体的には、自宅での調理需要が高まっていることを考慮し、ミールキットなどを強化していく考えのようだ。
2,ロードサイド店の出店、EC比率の底上げも
今回のコロナ禍では、大手ショッピングセンターの休業に伴って無印良品も自動的に休業となったことも響いた。このことを踏まえて、今後は独立型のロードサイド店の出店を強化していく考えを示した。まずは、年間数店のペースで新規出店を検討するという。
外出自粛などからニーズが高まっているEC(電子商取引)の売上比率を高めることにも注力する。国内売上におけるECの割合は現在7%ほどだが、松﨑社長は「中長期的に20%まで高めたい」と記者会見で語っている。
数字としては「月次概況」と「次の四半期決算」に注目を
個人投資家は、今後良品計画のどのような点に注目すべきだろうか。数字で言うなら「月次概況」と「次の四半期決算」だろう。
良品計画は公式サイトで毎月売上高を公表しており、どれだけ売れ行きが回復もしくは下落しているかを知ることができる。ちなみに、6月の全店売上高は前年同月比12.0%増。6月はコロナが一時落ち着いたこともあり、売上が回復したようだ。
次の4半期決算(2020年6〜8月期)は、10月に発表される。売上高のほか、経常利益や営業利益がどのように変化したかは、個人投資家が同社への投資を考える際の材料になるだろう。
人気ブランドである無印良品がコロナ禍を耐え抜けるか、多くの個人投資家が注目している。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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