2010年代前半にアメリカで話題となった不動産テックは、IT技術の進展や企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みの影響で、日本でも急速に普及しています。不動産テックは、不動産投資や住宅購入にも影響を与えると考えられています。ここでは、不動産テックが業界構造をガラリと変える理由を解説します。

不動産業界が抱える課題を解決へ

不動産テック
(画像=denis anikin/stock.adobe.com)

不動産テックとは「不動産」と「テクノロジー」を組み合わせた造語です。一般社団法人不動産テック協会は「テクノロジーの力によって、不動産業界の課題や従来の商習慣を変えようとする価値またはその仕組み」と、不動産テックを定義しています。

この不動産テックは、既存の不動産業界が抱える課題を解決できるとして、注目を集めています。

不動産業界の抱える課題の中でも、特に深刻と言われるのが「情報の非対称性」です。情報の非対称性とは、取引において当事者の片方のみが情報を多く持っている状況を意味します。

不動産業界には、不動産業者のみが全国の物件情報を検索できる「レインズ」というシステムが存在します。このシステムがあるため、消費者側が物件の相場などを把握できない状況が現在も続いています。

また、レインズ内のデータベースに不動産の取引履歴や成約価格などのデータが十分に蓄積されていないことも課題です。データベースに不備があることで、中古物件の流通市場が大きく成長しないからです。

解決に向かう動きも

不動産テックの普及により、こうした既存業界の課題が徐々に解決に向かい始めています。

リーウェイズが提供している「Gate. Market Survey」というサービスでは、物件があるエリアごとの相場をワンクリックで調べることができます。1億件を超える膨大なビッグデータを基に相場を算出しているため、消費者は一定の裏付けのあるデータとして確認でき、不動産の売買や投資を判断できるようになります。

身近なところでは、物件の内見にも不動産テックが活用されています。通常、物件の内見は、現地を訪れて部屋を見学、確認するものですが、これを専用の眼鏡型端末使って実施する動きが活発化しています。ナーブが提供する「おうちでVR内見」は、あらかじめ撮影した部屋情報などを、消費者がクラウドサービスを通じて自宅から閲覧できるサービスです。

現地にいかなくては確認できないこともありますが、部屋の間取りや設備など、気になるポイントが家にいながらにして確認できるのは画期的です。

不動産にもAI、IoT、ブロックチェーンの波

続いて、不動産テックに導入され始めている最新テクノロジーを3つ紹介します。AI、IoT、ブロックチェーンは、今後の中核テクノロジーとしてさまざまな業界で横断的に話題になっており、不動産業界にも導入が進んでいます。

・AI(人工知能)
人工知能(AI)は、不動産価格の査定や市場の分析面で役立っています。たとえば、特定エリア内にある多数の物件データをAIに解析、蓄積させることで、その地域の相場を算出したり、不動産売却時の見積もりにも役立ったりします。

また、AIを搭載したチャットボットを不動産の仲介に導入することで、より顧客ニーズに即した物件を少ない労力で紹介できるようにもなります。

・IoT
IoTとは、さまざまなモノをインターネットに接続した状態にする技術です。他の業界と同様に、不動産業界でもIoTは大きな注目を集めています。スマホ1台で鍵を開け閉めできる「スマートロック」を物件に取り入れれば、入居時の鍵の受け渡しなどの手間が省けます。また、照明や家電を遠隔操作できるようにすれば、生活における利便性が大幅に良くなるでしょう。

・ブロックチェーン
暗号通貨にも用いられているブロックチェーンも、不動産テックとして導入が進んでいます。ブロックチェーンとは複数のコンピュータにまたがり、鎖のように情報を共有することで、情報の改ざんやなりすましなどを防ぐ仕組みです。不動産情報をブロックチェーンで管理することで、登記情報の正確さや安全性の担保など、情報管理にかかる労力を削減できます。

不動産テックによる市場の変革を予測する必要がある

この数年で、仲介や内見、管理、ローン・保証など、不動産に関わる多くの業務が新しいテクノロジーをベースに実施されるようになりました。今後、不動産テックの普及はさらに加速すると考えられ、不動産業界の業務自体が思わぬ変化を遂げる可能性があります。消費者や投資家はそれを踏まえた上で行動しなくてはいけません。(提供:JPRIME


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