太陽光発電投資は、長期間の安定収入が見込めるだけでなく相続税の対策にもなります。太陽光発電投資をうまく活用すれば、大切な家族により多くの資産を残すことが可能になるでしょう。今回は、太陽光発電投資を始める前に理解しておくべき相続税の節税効果について解説します。

太陽光発電投資を始める前に知っておきたい相続税の基礎知識

太陽光
(画像=mq-illustrations/stock.adobe.com)

「相続税はお金持ちに課税される税金だから自分には関係ない」と考えている人もいるかもしれません。しかし、2015年の改正で相続税の基礎控除額が引き下げられたことで相続税の課税対象となる人は増えています。従来は年1,500人程度だった課税対象被相続人は、改正後の2015年分以降は年3,000人を超え改正前に比べて約2倍となりました。

太陽光発電設備も相続税の対象資産になるため、太陽光発電投資を始める前に相続税の基礎知識を身につけておくことが大切です。

相続税とは

相続税とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続するときに財産に対して課税される税金です。一定額以上の財産を相続する場合は、国に相続税を納めなくてはなりません。民法によって相続人の範囲や優先順位は決まっており、基本的には被相続人の配偶者や子どもが優先的に相続します。主な相続財産は、預貯金や金融商品(株式、投資信託など)、不動産(土地、建物)です。

相続財産の評価額は、財産の種類によって算出方法が異なります。被相続人が太陽光発電投資を行っていた場合は、太陽光発電設備も相続財産の一つです。相続税の申告をする必要がある場合は、相続の開始を知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10ヵ月目の日までに被相続人の住所を管轄する税務署へ申告書を提出し納税を行います。

相続税の基礎控除額

相続税には基礎控除額があり、相続財産の評価額が基礎控除額を超える場合に課税されます。相続税の基礎控除額は以下の算式で計算します。

・相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

例えば法定相続人が配偶者と子ども1人の場合、相続税の基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)です。このケースでは、相続財産が4,200万円を超えると相続税がかかります。相続税は、預貯金だけでなく自宅など不動産も課税対象です。そのため預貯金をそれほど保有していなくても不動産価格が高い都内に自宅を保有している場合は、相続税の課税対象になることも珍しくありません。

相続税の税率

相続税の税率は、相続財産の取得金額に応じて以下のように定められています。

法定相続分に応ずる取得価額税率控除額
1,000万円以下10%
1,000万円超 3,000万円以下15%50万円
3,000万円超 5,000万円以下20%200万円
5,000万円超 1億円以下30%700万円
1億円超 2億円以下40%1,700万円
2億円超 3億円以下45%2,700万円
3億円超 6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

※2015年1月1日以降の場合

相続税は、相続財産の取得価額が多いほど税率が上がる仕組みです。実際に相続税を計算するときは、課税遺産総額を法定相続分で按分し取得価額に応じた税率を掛けて相続税の総額を求めます。また相続税の総額を実際の相続割合で按分し各種税額控除を差し引くことで、相続人それぞれが納める相続税額が確定します。

太陽光発電投資の相続税評価額

太陽光発電設備の相続税評価額は、取得価額から減価償却費を控除した「残存価額相当額(帳簿価額)」となります。相続税評価額を求めるには、減価償却の概要や法定耐用年数について理解しておく必要があります。

減価償却とは

減価償却とは、減価償却資産の取得金額を全額取得時の費用とせず法定耐用年数にわたって費用化していく手続きのことです。減価償却資産は長期にわたって使用できるため、使用可能期間に分割して必要経費にしていきます。資産の種類ごとに法定耐用年数が定められており、その法定耐用年数に応じた償却率を使って減価償却費を計算および費用計上する仕組みです。

太陽光発電設備も減価償却資産に該当するため、投資した金額を取得時に全額経費に計上するのではなく法定耐用年数にわたって少しずつ費用化していくことになります。

太陽光発電設備の法定耐用年数は17年

法定耐用年数は、国税庁が定める「減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。投資目的の太陽光発電設備は「電気業用設備」の「その他の設備(主として金属製のもの)」に該当するため、法定耐用年数は17年です。減価償却費の計算方法は「定額法」と「定率法」があり、どちらかを選択できます。定額法とは、毎年一定額を償却する方法です。

定率法は、初年度に多くの減価償却費を計上し年とともに償却費が減少する方法になります。例えば1,000万円の太陽光発電設備を取得したケースについて減価償却費がいくらになるか確認してみましょう。定額法(償却率0.059)の場合、初年度の減価償却費は59万円(1,000万円×0.059)になるため、毎年59万円を計上していきます。

一方、定率法(改定償却率0.167)の場合は、初年度の減価償却費は167万円(1,000万円×0.167)で計上額は年々少なくなっていきます。毎年同じ金額を償却したい場合は定額法、早期に多くの減価償却費を計上したい場合は定率法を選択するといいでしょう。

減価償却は所得税や法人税の節税になる

所得税・法人税は、利益から必要経費を控除した所得に対して課税される税金です。減価償却費を計上すると課税所得が減少するため、所得税・法人税の節税になります。資産を取得した時点で代金の支払いは済んでいるため、減価償却費は現金の支出を伴いません。減価償却をうまく活用すれば手元に現金を残しながら所得税・法人税の節税が可能です。

太陽光発電投資が相続税の節税になる理由

太陽光発電投資が相続税の節税になる理由は以下の2つです。

減価償却によって相続税評価額が低くなる

相続税は、被相続人の財産の評価額に応じて課税されるため、評価額が低くなるほど税負担は軽減されます。太陽光発電設備の相続税評価額は、減価償却後の残存価額相当額です。太陽光発電投資を長く続けて多くの減価償却費を計上すれば相続税評価額は低くなります。例えば、1,000万円の太陽光発電設備を取得し定額法で毎年59万円の減価償却費を計上するケースで確認してみましょう。

10年稼働した場合、相続税評価額は410万円(1,000万円-59万円×10年)です。このように減価償却費を計上するほど相続税評価額が下がるため、現金のまま保有するより相続税の節税になります。減価償却によって設備の評価額は年々下がっていきますが、法定耐用年数の17年が経過して評価額がゼロになったとしても稼働している限り売電収入は発生します。

借り入れが残っている場合は評価額から「債務控除」ができる

債務控除とは、被相続人のマイナスの財産を相続財産から控除することです。被相続人に借金がある場合、相続財産の評価額を計算する際に控除して評価額を下げることができます。太陽光発電投資は投資額が比較的大きいため、通常は金融機関からの融資を利用し売電収入でローンを返済しながら運用を行うのが一般的です。

相続するときに太陽光発電投資の借り入れが残っていれば太陽光発電設備の評価額から借入残高を控除できます。例えば相続が発生した時点の太陽光発電設備の帳簿価額が800万円、借入残高が600万円であれば相続税評価額は200万円(800万円-600万円)です。このように太陽光発電投資は債務控除によって相続税評価額を下げられるため、相続税の節税になります。

太陽光発電投資で相続対策を検討してみよう

太陽光発電投資は、国が固定価格での電気の買取保証を行っていることから長期にわたって安定収入を得られるのが魅力です。また減価償却や債務控除によって相続税評価額を下げられるため、相続税の負担を軽減できます。家族により多くの資産を残したい場合は、相続税対策として太陽光発電投資を検討してみてはいかがでしょうか。(提供:Renergy Online