資産運用のリスクを抑えるために必要なのが分散投資です。しかし、一口に分散投資といっても分散の仕方には様々な方法があります。そもそもなぜポートフォリオを作成する必要があるのか、そしてポートフォリオを構成する分散投資の種類を項目別に解説します。

目次
ポートフォリオとは何か
ポートフォリオは見直しも必要
資産運用に分散投資が必要な理由
資産の分散:投資商品を分散するのがポートフォリオの基本
時間の分散:運用期間も分散が必要
地域の分散:対象地域の分散でグローバルな投資を目指す
ポートフォリオの具体例

ポートフォリオとは何か

ポートフォリオ,分散投資
(画像=everythingpossible/stock.adobe.com)

ポートフォリオとは、金融商品の組み合わせのことをいいます。もともと「板ばさみ」や「書類入れ」という意味があります。欧米で板ばさみに資産の明細書を保管していたことが由来といわれています。

資産運用するときに特定の資産の運用比率が高いと、急に市場が変動したときに大きな損失を被るリスクがあります。そのため、複数の資産を組み合わせた分散投資がすすめられており、その資産構成比率を決めるのがポートフォリオの役割です。

ポートフォリオは見直しも必要

ポートフォリオは定期的な見直しも必要です。これをポートフォリオの「リバランス」といいます。リバランスとは「株式、債券、投資信託などの価格が上下することによって、当初の割合が崩れてしまったポートフォリオを元の状態に戻すこと」です。

例えば、バランスの良い投資を目指して「株式50%・債券50%」(500万円・500万円)というポートフォリオを組んだとします。投資商品には、預金と違い値動きがあります。株式市場が上昇相場となり、資産構成比率が「株式60%・債券40%」(750万円・500万円)となった場合、当初の運用方針と異なる比率になります。そこで値上がりしている株式の一部を売却して債券を追加購入し、「株式50%・債券50%」(625万円・625万円)にリバランスする必要があるのです。そうすれば、株式の利益確定で資産全体は当初より250万円増えることになります。

では、リバランスを行わなかった場合はどうなるでしょうか。株式がまだまだ値上がりしそうだからと放置した結果、突然リーマンショックのような経済危機が発生して株式市場の大暴落が発生したとします。株価急落で株式資産が40%に下落した場合、みすみす債券を売却して不足する株式を購入することになります。もし、当初の方針どおり株価が上がっていたときにきちんと売却していれば債券資産が増えており、資産全体への影響は少なくて済んだはずなのです。

資産運用に分散投資が必要な理由

ポートフォリオを組む大きな理由は、資産運用には分散投資が必要だからです。「卵は1つのカゴに盛るな」という有名な相場格言があります。「卵(資産)を1つのカゴ(株のみなど)だけにすべて盛ってしまうと、落とした(下落した)ときに全部割れてしまう恐れがあります。しかし複数のカゴ(いろいろな金融商品)に分けて持っていれば、落としたカゴの卵が割れてもほかのカゴの卵は影響を受けずに済む」という意味の格言です。

ポートフォリオに組み込む資産例は、一般的に株式、債券、投資信託などと大雑把に分けられます。しかし、実際の組み込みの際には、さらに細かく分類する必要があります。株式なら国内株と外国株、債券なら国内債券と外国債券、投資信託ならインデックス型とアクティブ型という具合です。

では、どのような分散の方法があるのか、具体的にみてみましょう。日本証券業協会では「資産の分散」「時間の分散」「地域の分散」をすすめています。

資産の分散:投資商品を分散するのがポートフォリオの基本

ポートフォリオの基本は、運用する投資商品を分散することです。リスク許容度に応じて以下のように分類できます。

ローリスク・ローリターン商品

資金が減ってしまうのが困る場合は、利回りは低いものの、元本割れリスクが小さい商品で運用します。着実に増やすには、他の投資商品と比較すると公社債や保険商品が適しています。ただし公社債のうち、外国債券については為替リスクがあり、価格は同じ水準を維持しても、円高になると実質的に元本割れする場合があるので注意が必要です。

ミドルリスク・ミドルリターン商品

旅行や車の購入など期限の決っていない目的の資金を増やすなら、多少のリスクはとれるかもしれません。いろいろな銘柄に分散投資する投資信託やJ-REIT(上場不動産投資信託)の安定運用タイプの商品が適しています。分配金もあり、相場の動きによっては値上がりも期待できます。

ハイリスク・ハイリターン商品

高い運用利回りを目指す場合は、ある程度リスクを許容する必要があります。株式の構成比率を高めれば高いリターンが期待できますが、半面大きく値下がりするリスクも意識しなければなりません。個別株の運用に不安があるなら、投資信託のアクティブ運用型(平均以上のリターンを目指す商品)を購入するのもよいでしょう。

時間の分散:運用期間も分散が必要

ポートフォリオは運用期間を分散させることも必要です。ライフサイクルに合わせ、短期運用、中期運用、長期運用に分けて運用します。

短期運用

1~2年程度の短期間で運用する資産です。個人向け国債は元本割れがなく、年利0.5%の金利が保証されています。発効後1年以上経過すれば換金できる点も安心です。

中期運用

3~5年程度で運用する資産です。結婚式や子どもの進学など数年先に予定されている資金を増やすことを目的にします。安全な公社債を中心にしながらも、投資信託で値上がり益を得るのもよいでしょう。

長期運用

10年以上の長期間運用する資産で、老後資金を目的にするのが代表例です。マイホームの取得を目指す場合もある程度長い期間積み立てる必要があります。毎月の給与から積立型投資信託を購入するなどの方法があります。

積立運用

積立型の投資商品は一度に買わずに毎月少しずつ購入するため、時間の分散になります。毎月1万円など金額を決めておけば、価格が高いときは少ない口数を購入し、安いときは多くの口数を購入するため、購入コストを平準化させることができます。これを「ドルコスト平均法」といいます。

地域の分散:対象地域の分散でグローバルな投資を目指す

ポートフォリオを構成するときに、投資する地域が1つの国に集中しているのは問題があります。どのような地政学リスク(紛争や経済危機等)が発生するかわからないからです。いろいろな地域に分散投資して、グローバルな投資を目指すのが理想といえるでしょう。

外国株式

最も市場が大きく、成長株の多い米国株は外国株のポートフォリオには欠かせません。連続増配する企業も多く、安定した配当収入を見込めるのが魅力です。ほかに、中国株、欧州株、新興国株などに分散投資できます。

外国債券

外国債券は先進国と新興国のものではリスク許容度が異なります。国債は発行国の責任で元本や利息を保証するので、先進国のものであれば破綻リスクはほとんどありません。新興国の国債は金利が高い代わりに破綻リスクが高くなります。

ポートフォリオの具体例

では、ポートフォリオの具体例をみてみましょう。国内最大級の機関投資家であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の第4期中期目標期間(2020年4月からの5ヵ年)におけるポートフォリオは下表のとおりです。

外国債券国内株式外国株式
資産構成割合25%25%25%
乖離許容幅各資産±6%±8%±7%
債券・株式±11%±11%

※出典:年金積立金管理運用独立行政法人公式サイト(以下、同)

4つの資産を25%均等に組み入れたポートフォリオの構成になっています。1期前の第3期中期目標期間のポートフォリオは下表のようになっていました。

外国債券国内株式外国株式
資産構成割合15%25%25%
乖離許容幅±9%±4%±8%

GPIFが厚生労働大臣から与えられた目標利回りは1.7%となっています。そのため、国内の金利低下によって国内債券の利回りが低下している状況等に伴い、金利の高い外国債券の比率が3期の15%から4期には25%に引き上げられました。国内債券と同じ比率に組み直されています。

このように、ポートフォリオは目標利回り達成のために定期的に見直していく必要があるのです。個人がポートフォリオを組む場合も同じことがいえます。

ここまでポートフォリオの役割・効果と分散投資の方法についてみてきました。ポートフォリオと分散投資の関係を把握し、自分にとって最適なポートフォリオを作成しましょう。

執筆:丸山優太郎
東京都生まれ。日本大学法学部新聞学科卒業の金融・経済・不動産ライター。おもに金融・不動産メディアで執筆し、市場分析や経済情勢に合わせたトレンド記事を発信している。

(提供:JPRIME


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