(本記事は、野村 絵理奈氏の著書『オンラインで伝える力』の中から一部を抜粋・編集しています)
オンライン会議ではファシリテーションスキルが求められる
企業がテレワークを推進するうえで特に重要な位置づけとなるのが、オンライン会議やオンライン商談(営業)です。
ただ、まだまだ不慣れであることも手伝って、オンラインだと対面よりスムーズに進行できない、まとまらないまま時間切れになる、積極的な意見が出ない、メンバーの反応がわかりづらく不安を残したまま終わってしまう、といったお悩みの声はあちこちで聞かれます。
そのような問題を解決するため、オンライン会議に特化したファシリテーター(会議を成功させるための指南役)の育成に力を入れている企業も多く見られますが、そのようなトレーニングを受けていない人も、それ相応の役割を担う必要が生じるケースは今後増えていくと思われます。特に、取引先とのオンラインミーティングや商談では、時間内に必ず一定の成果をあげなければならないため、会をスムーズに進行し、成果に着地させるファシリテーションスキルはオンラインには欠かせません。早い段階で、オンラインコミュニケーションに必要な〈対応力〉を身につけておけば、結果を求められるオンライン会議やオンライン商談でも、ファシリテーターとしての重要な役割を担うことができるようになるはずです。
ではさっそく、理想的な会議の流れに沿って、いつ、どのようにどんな〈対応力〉を発揮すればよいか、あなた自身が、会をスムーズに進行する役を担うケースを想定し、そのためのテクニックについてお話ししましょう。
オンライン会議の冒頭で行いたいのが、メンバー紹介です。
海外であれば、進行役となる人が最初にその会議の参加メンバーを紹介してから議題に移るというのもよく見られる光景ですが、多くの日本企業にはあまり馴染みのない習慣かもしれません。
ただ、オンライン会議の場合は、どんな参加者がいるのかが把握しづらかったり、中にはカメラをオフしている参加者がいたりするので、メンバー紹介をしておくほうが、その後の進行もスムーズになります。
実際の話し合いに移る前に、会議の目的(ゴール)や議題の伝達を行うこともとても大切です。「今日のゴールは何か」「自分に求められる役割は何なのか」がわからないまま参加する会議は、参加者の意欲も喚起されません。また、参加メンバーがバラバラの方向に進み出してしまい、なんの結論も出せないまま終わってしまったり、まったく関係のないゴールにたどり着いてしまう危険もあります。ゴールが示されない会議は、ゴールを示さず目的地までたどり着こうとすることに似ていて、ひとつ道を間違えば時間がかかりすぎたり、違ったゴールにたどり着いてしまいます。目的地まで最短で正確にたどり着くには、そのための地図が必要なのです。