非課税で運用できる「NISA(ニーサ)」には「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つがあります。どちらも有利な制度ですが、併用できないため、どちらか選ばないといけません。2つのNISAはどう選べばよいのでしょうか。

本記事では2つのNISAの違いをまとめ、それぞれ向いている方を解説します。また、同じく非課税で運用できる「iDeCo(イデコ)」についても概要を解説します。

「つみたてNISA」は小額で長期投資したい人向け、「一般NISA」はまとまった金額で運用したい人向け

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(画像=PIXTA)

つみたてNISAと一般NISA、それぞれどんな方に向いているのか確認しましょう。

「つみたてNISA」をおすすめするのはこんな人

つみたてNISAが向いているのは以下3つのタイプです。該当する人は、つみたてNISA を検討しましょう。

✔︎①投資初心者
✔︎②少額から始めたい人
✔︎③長期運用したい人

それぞれ詳しく解説していきます!

・①投資初心者 
おすすめポイント:長期投資に向く銘柄に事前に選別されている

これから投資を始めるという方はつみたてNISAが向いています。

投資できる商品はすべて金融庁の認可を受けた商品なので、銘柄選びに慣れていない初心者でも運用に向く商品を選択できるよう工夫されています。

参考に、つみたてNISA銘柄に採用される条件の一部をまとめておきます。

【つみたてNISA銘柄の条件(一部)】
・販売手数料0円
・信託報酬(保有コスト)が一定以下
・信託契約期間(満期までの期間)が20年以上、または無期限

・②少額から始めたい人 
おすすめポイント:ネット証券なら月に100円から始められる

つみたてNISAで投資できる金額は年間40万円までです。

後述しますが、一般NISAより少ない金額です。まとまったお金は投資できないので、少額で投資を始めたいという方に向いています。

・③長期運用したい人
おすすめポイント:非課税期間が20年間ある

つみたてNISAで買った投資信託は、買った年を含めて20年間もの非課税期間があります。できるだけ長期投資をしたいという方におすすめです。

「一般NISA」をおすすめするのはこんな人

一般NISAが向いているのは以下の3タイプです。つみたてNISA よりももっと積極的に投資に向き合いたいという人は一般NISA を検討しましょう。

✔︎①幅広い商品から選びたい人
✔︎②年に40万円を超えて投資したい人
✔︎③投資タイミングを選びたい人

それぞれ解説します。

・①幅広い商品から選びたい人
おすすめポイント:全ての投資信託や株式に投資できる

一般NISAはでは、国債などの債券以外の商品なら幅広く投資できます。

つみたてNISAのように商品が限定されていないので、多くの選択肢から投資先を選びたい方は一般NISAの方が向いています。

  投資できるもの
一般NISA ・国内株式:約3,700銘柄(2020年11月5日時点)
・投資信託:約5,800銘柄(2020年10月末時点)
・海外株式
つみたてNISA ・投資信託:184本(2020年10月16日時点)

・②年に40万円を超えて投資したい人
おすすめポイント:年間120万円まで投資OK

一般NISAは年間120万円まで投資できます。つみたてNISAは40万円までですから、40万円以上投資したい方は一般NISAを選択しましょう。

・③投資タイミングを選びたい人
おすすめポイント:投資しない月があっても大丈夫

つみたてNISAは、名前の通り投資方法が積立投資に限定されており、基本的に投資しない月を選べません。

一般NISAは投資するタイミングや金額を自由に選べます。好きなタイミングで120万円分一括投資してもいいですし、もちろん投資しなくても大丈夫です。

タイミングを選びたい方は一般NISAがよいでしょう。

「つみたてNISA」と「一般NISA」はどう違うの?違いをさらに比較

ここではより具体的な項目ごとに両者の違いを確認しましょう。理解を深めることで、自分はどちらを選べばいいかがより明確になるかもしれません。

また、同じく非課税で運用できる制度、「iDeCo(イデコ)」との違いについても少しだけ触れます。

つみたてNISA、一般NISAともにいつでも解約できる

つみたてNISAと一般NISAは、どちらも解約に制限がありません。

いつでも解約して出金できます。

  つみたてNISA 一般NISA
解約の制限 いつでも解約できる

なお、iDeCoは原則60歳まで解約できません。

実は「つみたてNISA」も「一般NISA」も、給与の節税効果は“ない”

つみたてNISAや一般NISAを活用しても、給与の節税効果はなく、手取りは増えません。

  つみたてNISA 一般NISA
給与の節税 給与の節税効果なし

給与の手取りが増えるのはiDeCoです。iDeCoに掛け金を拠出すると、全額が所得控除になります。

利益が非課税になる期間は、「一般NISA」は短く「つみたてNISA」は長い

利益が非課税になる期間はつみたてNISAの方が20年と長く、一般NISAは5年間です。

  つみたてNISA 一般NISA
非課税で運用できる期間 20年間 5年間

iDeCoの場合、何年と固定されているわけではなく、60歳以降に受け取るまで非課税で運用できます。

「つみたてNISA」か「一般NISA」は、どちらか選ばないといけない

つみたてNISAと一般NISAは、同じ年に同時に行うことはできず、どちらか選ばないといけません。

なお、年ごとに変更することは可能です。例えば今年はつみたてNISA、来年は一般NISAという使い方ができます。2つのNISAの切り替えルールは詳しく後述します。

  つみたてNISA 一般NISA
併用できるか どちらか選ぶ

iDeCoはどちらのNISAとも併用できます。

2つのNISAをさらに比較 販売手数料や投資できる年にも違いが

その他の違いについても比較してみましょう。

押さえてほしいポイントは販売手数料です。

つみたてNISAはすべての銘柄で販売手数料が無料ですが、一般NISAは銘柄や金融機関によって販売手数料が掛かる場合があります。ネット証券ならすべて無料にしている場合があるので、そちらの利用をおすすめします。

また、それぞれ投資できる年にも注意が必要です。

つみたてNISAは2042年まで続きますが、一般NISAは2023年に終了し、2024年からは「新NISA」が始まる予定です。新NISAの内容は後述します。

  つみたてNISA 一般NISA
投資できる金額の
上限
年間40万円 年間120万円
投資タイミング 積み立て投資 スポット投資
(自由に選べる)
投資できる商品 一部の投資信託 投資信託
国内の株式
外国の株式
販売手数料 なし あり
※無料の商品あり
投資できる年 2042年まで 2023年まで

▼「一般NISA」は2024年から「新NISA」に
一般NISAは2024年以降「新NISA」に変わる予定です。

新NISAは2階建ての仕組みになっており、1階部分はつみたてNISAと同じ内容、2階部分は一般NISAとほぼ同じ内容になっています。金額はそれぞれ20万円と102万円です。

現在の一般NISAと同じように利用したい方も、まずは1階部分で積み立て投資を利用しないといけません。

ただし、投資経験者で、株式のみに投資する方は直接2階部分で投資ができます。

  一般NISA 新NISA
投資できる年 2023年まで 2024~2028年
投資できる金額の
上限
年間120万円 2階部分:102万円
1階部分:20万円
(解説)
新NISAは「つみたてNISAに相当する1階」と「一般NISAに相当する2階」に分かれ、原則1階部分を利用しないと2階部分への投資ができない

「つみたてNISA」と「一般NISA」は切り替えられる 切り替えルールを確認

2つのNISAは年ごとに切り替えられます。NISAの切り替えルールを2つ確認しましょう。

①切り替えられるのはまだ投資していない年

NISAの切り替えは、切り替えたい年の枠をまだ利用していないことが条件です。

例えば2021年のNISAをどちらかに切り替えたい場合、2021年のNISA枠を使って投資してはいけません。

年末は注意しましょう。投資枠の利用は、投資を実行(注文)した日ではなく、商品ごとの「受け渡し日」で判定されます。

国内株式なら投資した日を含めて3営業日後、投資信託は銘柄ごとに決められた日数が受け渡し日です。

たとえば、2021年分のNISAを切り替えたい場合、受け渡しに3営業日掛かる商品は2020年12月28日が最終売買日、4営業日掛かる商品は25日が最終売買日です。

2021年分のNISAを切り替えたい場合、2020年中に投資できる日
受け渡し日 12/25
(金)
12/28
(月)
12/29
(火)
12/30
(水)
年末年始
(12/31~1/3)
3営業日後 2021年分の投資
4営業日後 2021年分の投資

つみたてNISA⇒一般NISAは注意 積立を止めておきましょう
一般NISAは投資タイミングを選べますが、つみたてNISAは積立を止めないと翌年分も自動的に投資してしまう可能性があります。

翌年に一般NISAへの切り替えを想定している場合、積立の設定を止めておきましょう。

②切り替えタイミングは9月まで 10月以降は翌年分

本年中のNISAを切り替えたい場合、遅くともその年の9月中までに手続きが必要です。

NISAの切り替えは10~12月の間に翌年のNISAを変更するのが原則なので、10月に入ってしまうと本年中の切り替えは間に合いません。

①、②の条件をまとめると、「①切り替えたい年のNISAを使わない、かつ②切り替えたい年の前年9月~その年の9月までに手続きする」というルールになります。

金融機関の切り替えもOK
NISAは金融機関も年ごとに変更できます。金融機関の変更も、変更したい年の9月末までに手続きしましょう。

もう一つの非課税制度「iDeCo」はどういう人に向くの?タイプ別に解説

本記事は主につみたてNISAと一般NISAについてご紹介しましたが、「iDeCo」について気になる方も多いと思います。

参考として、iDeCoについても、どんな方に向くかご紹介します。

「iDeCo」をおすすめする2タイプ

iDeCoをおすすめするのは以下2つのタイプです。

✔︎①生活費を用意できている人
✔︎②所得がある人

・①生活費を用意できている人 解約できない点に注意
iDeCoは原則60歳まで解約できません。生活費、また緊急用資金には使えませんので、そちらの準備ができている方がiDeCoを利用しましょう。

・②所得がある人 節税効果が高い
iDeCoは掛け金の全額が所得控除になります。

例えば所得税と住民税の税率が合計20%の方が、iDeCoに年間20万円拠出すると、概ね4万円の節税になります。仮に30年続ければ節税だけで120万円のリターンです。

税金は個人の状況に応じて変わるので一概には言えませんが、所得がある方は一度検討してもよいでしょう。

つみたてNISAと一般NISAの違いを比較し、どちらがよいか冷静に選びましょう

本記事の内容をあらためてまとめます。自分はどちらが向いているのか確認して選ぶようにしましょう。

【つみたてNISAが向いている人】
①投資初心者
②少額で始めたい人
③長期投資したい人

【一般NISAが向いている人】
① 幅広い商品から選択したい人
② 年40万円を超えて投資したい人
③ 投資タイミングを選びたい人

2つのNISAにはそれぞれ利点があります。どういう投資をしたいのか考え、冷静に判断しましょう。年ごと切り替えるのも選択肢ですが、切り替えルールには注意しましょう。

文・若山卓也(ファイナンシャルプランナー)
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業、保険募集代理業、金融系ライターとして活動しています。関心のあるジャンルは資産運用や保険、またお得なポイントサービスなど。お金にまつわることなら幅広くカバーし、発信しています。AFP、プライベートバンキング・コーディネーター資格保有。

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