NISAは一定の条件のもと非課税で投資できるお得な制度である。NISA口座の開設数は2020年3月末時点で1,400万口座を超え、投資を始める人の入り口になったといえる。NISA口座を開設するにはどうすればいいのか、手続きの流れやポイントを確認していこう。

1.NISA(ニーサ)とは

nisa,手続き
(画像=taa22/stock.adobe.com)

NISAは「少額投資非課税制度」の愛称である。NISA口座で購入した上場株式や株式投資信託の配当金や売買益が非課税になる、税制優遇制度だ。NISA口座は、日本国内に住む20歳以上(2023年1月1日以降は18歳以上)の人であれば誰でも利用できる。NISA口座の開設は1人1口座のみというのも特徴で、証券会社や銀行、郵便局などの金融機関で口座開設を受け付けている。

NISA(ニーサ)の対象になる商品

NISAの対象になるのは、証券取引所に上場している株式、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)、および株式投資信託などで、国債や社債、預金などは対象外だ。またNISA口座開設後にNISA口座で新たに購入した商品が非課税の対象である。

すでに保有している商品をNISA口座に移したとしても、配当金や売買益は非課税にならないことに注意してほしい。

NISA口座には一般NISAとつみたてNISA(積立NISA)がある

20歳以上の人が利用できるNISAには、「一般NISA」のほかに「つみたてNISA」がある。いずれも購入した商品配当金や売買益が非課税になる点は共通しているが、利用限度額や非課税となる期間、対象となる商品などに違いがある。

一般NISAとつみたてNISAはどちらか一方の口座しか開設できないので、目的に応じて慎重に選択する必要がある。

【一般NISAとつみたてNISAの主な相違点】

  一般NISA つみたてNISA
非課税期間 投資した年から最大5年間 投資した年から最大20年間
利用限度額(非課税枠) 年間120万円 年間40万円
対象商品 上場株式、
株式投資信託など
長期の積立・分散投資に適している
商品として金融庁の指定を受けた投資信託
※筆者作成

2.NISA(ニーサ)口座開設手続きの流れ

NISA口座の開設から取引開始までの流れは次のようになっている。

1.口座を開設する金融機関を選ぶ
2.金融機関に口座開設を申し込む
3.税務署による審査・承認
4.NISA口座開設完了・取引開始

STEP 1……口座を開設する金融機関を選ぶ

NISAは証券会社や銀行のほか、投信会社や郵便局、農協、保険会社など、多くの金融機関が取り扱っている。しかし、購入できる商品や商品購入時にかかる手数料は金融機関によって違うことに注意しよう。

NISA口座で上場株式を購入したいのであれば、証券会社での口座開設が必要だ。証券会社のなかでも、手数料や外国株式のラインアップなどに違いがあるため、よく比較して選ぶようにしたい。

STEP 2……金融機関にNISA口座開設を申し込む

NISA口座開設を希望する金融機関に、口座開設を申し込む。NISA口座の開設には、通常の証券口座等が必要になる。NISA口座を開設しようとする金融機関に口座を持っていない場合は、通常の口座開設の手続きもあわせて行う。

口座開設の申請は、金融機関の窓口や郵送で書面により手続きする方法と、インターネットを使いオンラインで手続きする方法がある。

書面による手続きでは、申込書類を記入し、必要書類を添付して金融機関に提出(郵送)する。オンラインの手続きでは、申込情報を入力し、必要書類をアップロードすれば手続きが完了する。

STEP 3……税務署による審査・承認

NISA口座の申し込みを受けた金融機関は、その旨を税務署に連絡する。他の金融機関ですでにNISA口座を保有していないか確認を行われ、問題がなければ承認される。金融機関が行う手続きのため、申込者本人は何もする必要はない。

税務署からNISA口座開設の承認が得られなかった場合には、NISA口座開設の申し込みは無効になる。

STEP 4……NISA口座開設完了(取引開始)

金融機関からNISA口座が開設の通知が来れば、すぐに取引が始められる。

簡易開設を利用する場合、税務署の承認前にNISA口座の開設・取引が可能

2019年1月以降は「非課税口座簡易開設届出書」を使って口座開設を申し込めば(以下、簡易開設制度)、税務署の審査・承認を待たずにNISA口座を開設できるようになった。この制度を導入している金融機関であれば、金融機関での受付が完了した時点でNISA口座が開設され、取引が可能になる。

【簡易開設制度を利用する場合の口座開設手続きの流れ】

  1. 口座を開設する金融機関を選ぶ
  2. 金融機関に口座開設を申し込む
  3. NISA口座開設完了(仮開設)・取引開始
  4. 税務署による審査・承認(本開設)

NISA口座の簡易開設は、初めてNISA口座を開設する場合に限り利用できる。

金融機関を変更してNISA(ニーサ)口座を開設する場合

すでにNISA口座を開設している人が、金融機関を変更して別の金融機関でNISA口座を開設することは可能である。その場合、まず現在口座を開設している金融機関で変更(勘定廃止)の手続きを行う。その後新たにNISA口座を開設したい金融機関で新規開設をする。

3.NISA(ニーサ)口座開設に必要な書類

NISA口座開設には、NISA口座申込書類(「非課税口座開設届出書」または「非課税口座簡易開設届出書)のほか、本人確認書類が必要だ。オンライン申し込みの場合は、WEB上で必要情報の入力を行う。

【本人確認書類として利用できる書類】
・運転免許証
・パスポート
・健康保険証
・印鑑登録証明書
・住民票の写し
・在留カード
・特別永住者証明書

NISA口座を開設する金融機関にマイナンバー(個人番号)を提出していない場合には、マイナンバーカード(通知カードまたは個人番号カード)も必要だ。顔写真のついた個人番号カードのコピーを提出する場合は、個人番号カードが本人確認書類の役割を果たすので、別途本人確認書類を提出する必要はない。

マイナンバーの提出が義務付けられたことで、かつてNISA口座の開設に必須であった住民票の写しの提出は不要になった。

金融機関を変更してNISA(ニーサ)口座を開設する場合

すでにNISA口座を開設している人が、金融機関を変更してNISA口座を開設する場合には、NISA口座申込書類と本人確認書類に加え、変更(勘定廃止)の手続き後に、もとの金融機関から発行される「勘定廃止通知書」が必要だ。

一度廃止したNISA(ニーサ)口座を、再開設する場合

一度NISA口座を廃止した人が、再度NISA口座を開設する場合、NISA口座申込書類と本人確認書類に加え、「非課税口座廃止通知書※」が必要だ。非課税口座廃止通知書は、廃止したNISA口座があった金融機関に請求すれば交付される。

※ 1期勘定(2014年~2017年開設分)のみ開設していた場合には、非課税口座廃止通知書は不要

必要な書類は金融機関によって異なることもあるので、必ず申し込む金融機関に確認して準備しよう。

4.NISA(ニーサ)口座開設までにかかる日数、期間

NISA口座開設までにかかる日数(期間)は、簡易開設制度を利用するか、NISA口座を開設する金融機関に口座があるか、どのような経路で申し込むかによって違ってくる。

NISA口座の簡易開設ができるSBI証券の場合、オンライン申込であれば申し込みから最短2営業日、郵送による書面申込であれば申し込みから最短7営業日で完了する。完了後、すぐにNISAの取引を開始できる。

簡易開設を利用できない金融機関の場合、NISA口座が開設されるのは税務署の承認後になる。そのため、取引ができるようになるまでには申し込みから2~3週間程度、場合によっては1ヵ月以上かかると想定しておいたほうがよい。

5.NISA(ニーサ)口座開設手続きの注意点

NISA口座を開設するときは次のような点に注意が必要だ。

同時に複数の金融機関にNISA(ニーサ)口座開設の申し込まない

NISA口座の開設が認められるのは1人1口座のみである。同時に複数の金融機関にNISA口座の開設を申し込んではいけない。

もし複数の金融機関にNISA口座開設を申し込んだり、NISA口座とつみたてNISA口座の開設を申し込んだりすると、税務署での確認に時間がかかる。NISA口座が開設できないケースもあり、時間も余分に必要になる。1人1口座の原則は守っておこう。

同時にNISA口座開設の申し込みをした場合、その申込情報を税務署に最も早く提供した金融機関でNISA口座が開設され、それ以外の金融機関の申し込みに関しては無効になる。口座が開設される前であれば、希望しない金融機関に対して申し込みの取り消しを申し出よう。そうすれば、希望する金融機関で口座を開設できる望みはある。

NISA口座の開設後に変更したい場合は、通常の金融機関の変更として手続きを行う。翌年以降であれば変更可能だ。

NISA(ニーサ)口座が開設されていないことを確認して申し込む

初めてNISA口座を開設するのであれば問題ないが、これまでにNISA口座を開設したことのある人は、その口座が廃止されているか確認しておこう。繰り返しになるがNISA口座が開設されている状態で新たに口座開設を申し込んでも、税務署の承認は得られず、無効になる。

NISA口座が廃止されているかは、 口座のある金融機関に「勘定廃止通知書」または「非課税口座廃止通知書」の発行を申請すれば確認可能だ。どの金融機関で口座を開設したか定かではない場合は税務署に照会すれば良いが、書面での手続きとなるので、やや手間がかかる。

簡易開設制度を利用して税務署の承認前にNISA口座が開設した人が、NISA扱いで商品を購入していたのに、NISA口座が無効になった場合はどうなるのか。その商品は当初から「一般口座」で買い付けたものとして扱われる。この場合「特定口座」での買い付けにはできない。

「特定口座」内の損益は証券会社に計算してもらえるが、「一般口座」内の損益は自身で計算しなければならず、確定申告も必要になる。余計な手間を増やしてしまうので注意したい。

上場株式の配当を非課税にするには「株式数比例配分方式」による受け取りが必要

NISA口座で上場株式の配当やETF・REITの分配金に非課税措置の適用を受けるには、配当等の受取方法として、「株式数比例配分方式」を選択する必要がある。NISA口座で保有している商品の配当や分配金であっても、「配当金領収書方式」(郵便局などでの受取)や「登録配当金受領口座方式」(指定銀行口座での受取)を選択している場合は、20%(復興特別所得税を含め20.315%)の税率で源泉徴収される。

NISA口座を開設するときには、配当等の受取方法が「株式比例配分方式」になっているか確認しておこう。複数の証券会社に口座を持っている場合、どこか1社で「株式比例配分方式」を選択すれば、すべての証券会社の配当等の受取方法が自動的に「株式比例配分方式」に変更される。

6.NISA(ニーサ)の利用目的、投資スタイルにあった金融機関や制度を選ぶ

NISA口座は難しい手続きや審査もなく、簡単に開設することができる。ただし、1人1口座に限られており、一旦口座を開設すると、金融機関の変更や一般NISAとつみたてNISAの変更は翌年までできないことに注意したい。

どの金融機関でNISA口座を開設するか、一般NISAとつみたてNISAのどちらを選ぶかは、自身の投資スタイルやNISAの利用目的をふまえ、よく比較検討してほしい。

執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎

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