ホンダ・シビック・タイプRリミテッドエディション 価格:6MT 550万円 試乗記

シビック・タイプRリミテッドエディション
シビック・タイプRリミテッドエディション リミテッドエディションは世界1000台/日本販売200台の限定車(すでに完売) タイプRのルーツに立ち返り軽量化と専用装備でスポーツ性能を徹底追求

リミテッドは軽量BBS鍛造アルミ+ミシュラン装着。日本200台限定車

 その名前を聞くだけで、ドキドキするクルマがある。タイプRはその1台だ。現行シビックの最終型進化版となるタイプRがデビューした。
 鈴鹿サーキットで試乗したシビック・タイプRは、国内200台限定のリミテッドエディション。標準モデルの味付けも、リミテッドと同じ方向性だと説明された。

 リミテッド用に開発された超軽量BBS製鍛造アルミに装着されたタイヤは、ミシュラン・パイロットスポーツCUP2。世界のピュアスポーツカーが履くタイヤだ。ステアリング操作に対するノーズの動きの正確性、そして高いグリップ力による接地安定性は見事。走行ペースが上がり、コーナリング中の横Gが高まるにつれて、剛性感の高さに進化が感じ取れる。

 鈴鹿の第2コーナーからS字を抜けて駆け上がるダンロップコーナーの連続は、時にアンダーステア、時にオーバーステアが出やすい。しかしタイプRは路面を確実にとらえ、舵角を与えられた前輪はドライバーが描く「行きたい方向」にスムーズに旋回。後輪も路面を離さず安定して接地する。修正舵は不要。ほぼニュートラルなステア特性で駆け抜ける。市販車としては「離れ業」に近い動きだ。

 旋回中の舵角、ステアリングの切り角が少ない特性にも気がついた。これはサスペンションの改良によるものだ。新型はフロントのコンプライアンスブッシュを前後方向に効く強化型に変更。リアは横剛性に効く高硬度ブッシュを採用し、旋回中の横力によるトーインを増加させてリアの動きを安定させている。
 リミテッドはタイヤの特性に合わせてアダプティブダンパーシステムの制御を変更した。路面からの入力に応じたボディ前後のピッチングとスクォート、左右ロール方向への応答性はいちだんと素早く的確になっている

シビック・タイプRリミテッドエディション
リミテッドエディションは鈴鹿サーキットでFF車最速の2分23秒993を叩き出したスプリンター 最新タイプRはスポイラー類の形状変更で従来型以上のダウンフォースを獲得 足回りのファインチューニングと相まって超高速域でも抜群の安定性を示す
シビック・タイプRリミテッドエディション
1995cc直4DOHC16Vターボ 320ps/6500rpm 400Nm/2500~4500rpm エンジンは従来と共通チューン

320psユニットはターボラグなし!速さ鮮烈

 320ps/6500rpm、 40Nm/2500~4500rpmを発揮する2リッターターボに大きな変化はない。だがドライバーの操作に対して車両の動きが自然に忠実に反映される点が軽快感につながり、エンジン特性が変化したような錯覚を覚えた。
 ターボ技術に長けているホンダらしく、ターボラグはまるで感じない。7000rpmのリミットまで軽々と吹け切る点も好印象。フル加速では1速60、2速100、3速135、4速190、5速227km/hに瞬く間に達して第1コーナーに突入する。

 タイプRは丸型シフトノブを07年以降装備してきた。最新モデルはティアドロップ型に形状を変更。手にしっくり馴染み、90gのカウンターウエイトが操作性をいっそう向上させた。強い横Gを受けながらの旋回中のシフト操作でも、正確な操作ができる。トランスミッションは6速MTである。
 ハード面でタイプRの変更を見ると、冷却系が改善された。グリル開口部を拡大し、ラジエター本体はフィンのピッチを縮小して放熱性を高めた。サーキット走行時の水温上昇を巧みに抑えている。

シビック・タイプRリミテッドエディション
フル加速では1速60/2速100/3速135/4速190km/hに瞬く間に到達 今回の試乗では5速227km/hをマーク 速さとスピードの伸びはスーパースポーツ級
シビック・タイプRリミテッドエディション
245/30ZR20ミシュラン・パイロットスポーツCUP2+BBS製鍛造アルミ アルミは標準比1本2.5kg軽量化

最新タイプRは空力特性を大幅リファイン。ブレーキも圧巻

 空力特性も改良された。グリル拡大による変化に対応し、フロントバンパースポイラーのリップ部は下側にわずかに延長され、倒れ込みを防ぐリブを追加。前後ダウンフォースのバランスを整えた。
 今回マークした227km/hの最高速でもボディは路面に吸い付くように安定。直進性の高さは見事だった。そこからステアリングを切り始めても挙動変化はごく自然。リフトが関係する不穏な動きは、微塵も感じられなかった。

 強化されたブレーキ性能も見逃せない。ブレーキの高温発熱に起因するディスクの倒れ込みを防ぐため、ディスクローターは1ピースから、センターがアルミになる2ピースローターに変更。ローターが歪む現象で発生する、ブレーキペダルの踏力変化を抑えた。
 まるで後ろに引き戻されるような減速Gは圧巻。ブレーキが発熱してもフェードの兆候はまったくなく、当然ブレーキペダルが奥深く入り込むことやペダル踏力が変化するなどの変化も感じられなかった。

 荒れた路面は走行していないが、このサスペンションのしなやかなストローク量とダンピング特性があれば、公道でも気持ちのいい乗り味が楽しめると判断できる。タイプRは、速さに加えGTカーとして、さらに磨きが掛かった、といえる。

シビック・タイプRリミテッドエディション
最新タイプRは操作性に優れたアルカンターラ巻きステアリングを新採用 足回りの完成度は抜群 自在なハンドリングが味わえる 写真は鈴鹿最速タイム記録車で左ハンドル
シビック・タイプRリミテッドエディション
シビック・タイプRリミテッドエディション
シートは軽量設計 ハードなサーキット走行でもドライバーをしっかり支えるバケット形状 素材はスエード調ファブリック 後席はシンプル 乗車定員は4名
シビック・タイプRリミテッドエディション
メーターは回転計中心 レブリミットは7000rpm以上 シフトアップインジケーター装備
シビック・タイプRリミテッドエディション
トランスミッションはレブマッチシステム付き6速MT シフトノブは新形状
シビック・タイプRリミテッドエディション
リミテッドエディションは専用シリアルナンバープレート付き
シビック・タイプRリミテッドエディション
最新タイプRはフロントグリル開口面積を拡大 ラジエターフィンのピッチ変更で冷却性能を改善
シビック・タイプRリミテッドエディション
撮影車は鈴鹿最速タイム記録車 リアスポイラーにはドライバー伊沢拓也選手のサイン入り
シビック・タイプRリミテッドエディション
エグゾーストエンドは3本出し 刺激的な「ホンダ・ミュージック」を奏でる

ホンダ・シビック・タイプRリミテッドエディション 主要諸元と主要装備

シビック・タイプRリミテッドエディション

グレード=タイプRリミテッドエディション
価格=6MT 550万円
全長×全幅×全高=4560×1875×1435mm
ホイールベース=2700mm
車重=1370kg
エンジン=1995cc直4DOHC16Vターボ(プレミアム仕様)
最高出力=235kw(320ps)/6500rpm
最大トルク=400Nm(40.8kgm)/2500~4500rpm
WLTCモード燃費=13.0km/リッター(燃料タンク容量46リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:マルチリンク
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=245/30ZR20ミシュラン+BBSアルミ
駆動方式=FF
乗車定員=4名
最小回転半径=_5.9m
パワーウエイトレシオ=4.28kg/ps
トルクウエイトレシオ=3.43kg/Nm
●主な燃費改善対策:直噴エンジン/可変バルブタイミング/電動パワーステアリング /アイドリングストップ
●リミテッドエディション専用装備:BBS製鍛造アルミ/ミシュラン・パイロットスポーツCUP2タイヤ/足回り専用セッティング/シリアルナンバー入りプレート/ダーククロームエンブレム/各部軽量化(ルーフライニング防音材+リアインサイドパネル防音材+ダッシュボードアウター防音材+フロントフェンダーエンクロージャー)/専用ブラック塗装(ルーフ+ドアミラー+エアインテーク)
●主要装備:アダプティブダンパーシステム/タイプR専用サスペンション/ブレンボ社製フロントブレーキシステム/ヘリカルLSD/大型フロントグリル/エアロダイナミクスバンパー/カーボン調フロントスポイラー/大型リアスポイラー+ボルテックスジェネレーター/トリプルエグゾーストシステム/ドライブモードスイッチ/レブマッチシステム/ホンダセンシング(衝突軽減ブレーキ+歩行者事故低減ステアリング+路外逸脱抑制機能+アダプティブクルーズコントロール+車線維持支援システム+先行車発進お知らせ機能+オートハイビーム+標識認識機能)/アジャイルハンドリングアシスト/LEDヘッドライト/タイプR専用シート/専用スポーツステアリング(アルカンターラ)/アルミ製シフトノブ
●ボディカラー:サンライトイエロー2
※価格はすべて消費税込み

シビック・タイプRリミテッドエディション
Writer:桂伸一 Photo:小久保昭彦

(提供:CAR and DRIVER