iDeCo(イデコ)を始めるにはまず口座を開設する必要があるが、iDeCoは多くの金融機関で取り扱っており、どの金融機関で口座を開設すればいいのか迷うところだ。そこで身近な銀行でiDeCoを始めるメリットとデメリットを解説、代表的な銀行5行の特徴を紹介する。

1. iDeCo(イデコ)を銀行で始めるメリット

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

iDeCoは掛金を拠出し、自身で選んだ商品を運用して60歳以降に年金や一時金として受け取る私的年金制度だ。iDeCoでは掛金や運用益、積み立てた資産の受け取りにおいて税制優遇が受けられる。

銀行でiDeCoを始めるメリットには、次のようなものがある。

メリット1……普段利用している銀行でiDeCo(イデコ)を始められる

証券会社に口座を持っていない人はいるかもしれないが、銀行口座を持っていないという人は少ないだろう。普段利用している銀行でiDeCoを始めれば、利用する金融機関を増やさなくて済むため、口座の管理がしやすいというメリットがある。

メリット2……iDeCo(イデコ)を利用すると住宅ローン金利が優遇されることがある

地方銀行などの一部に限られるが、iDeCo口座を開設すると住宅ローン金利が優遇されることがある。住宅ローンを利用する銀行に優遇制度がある場合、iDeCo口座を開設することにより、利息負担軽減によるメリットが期待できる。

<iDeCo口座開設による住宅ローン金利の優遇がある銀行の例>
・香川銀行……年0.20%金利引き下げ
・関西みらい銀行……iDeCo口座開設が金利プラン適用条件のひとつ
・近畿労働金庫……iDeCo口座開設が金利引き下げ条件のひとつ
※2020年12月時点

2. iDeCo(イデコ)を銀行で始めるデメリット

銀行でiDeCoを始めるデメリットには、次のようなものがある。

デメリット1……iDeCo(イデコ)の口座管理手数料が割高な銀行が多い

iDeCo口座の開設後は、口座を開設した金融機関(運営管理機関)と事務委託先金融機関である信託銀行、国民年金基金連合会に対して手数料がかかる。

事務委託先金融機関への手数料は一律66円(税込)、国民年金基金連合会への手数料は、掛金を拠出する月のみ一律105円(税込)と決まっており、口座を開設する金融機関による差はない。

運営管理機関の口座管理手数料はそれぞれの金融機関が設定しており、どの金融機関でiDeCoの口座を開設するかによって負担が大きく変わる。

iDeCoの口座管理手数料(運営管理機関手数料)を対面銀行、ネット銀行、証券会社で比較してみよう。(金額は月額、税込)

金融機関 口座管理手数料
三菱UFJ銀行 260円(ライトコース)、385円(標準コース)
三井住友銀行 0円(みらいプロジェクトコース)、260円(標準コース)
みずほ銀行 0円(条件を満たす場合)、260円(条件を満たさない場合)
りそな銀行 0円(当初2年間)、267円(3年目以降、
掛金引落口座がりそな銀行以外の場合322円)
ゆうちょ銀行 259円
横浜銀行 291円
イオン銀行 0円
ソニー銀行 0円(条件を満たす場合)、319円(条件を満たさない場合)
野村證券 0円(条件を満たす場合)、288円(条件を満たさない場合)
大和証券 0円
SBI証券 0円
楽天証券 0円
※各金融機関のHPより(2020年12月時点)

iDeCoの口座管理手数料を無料にしている金融機関もあるが、銀行では数百円程度の手数料がかかることが多い。一定の条件を満たすことで手数料が無料となるケースもある。

iDeCo(イデコ)の運用商品のラインアップが限られることがある

iDeCoは掛金を自ら選んだ商品に投資し運用していくため、投資する商品は、口座を開設した金融機関が指定する商品の中から選ぶ必要がある。メガバンクなどはラインアップも比較的充実しているが、銀行によっては運用商品のラインアップが限られることもある。

1つの金融機関がiDeCoの運用商品として提示できる商品数は基本的に35商品が上限となっており、取扱商品数自体に差はあまりないといえる。しかし、どのような傾向の商品をラインアップしているか、投資したい商品を取り扱っているかどうかは、口座を開設する前によく確認しておきたい。

対面銀行、ネット銀行、証券会社のiDeCoの取扱商品数を表にまとめた。

金融機関 iDeCo取扱商品数(カッコ内の数字は元本確保型の商品数・内数)
三菱UFJ銀行 10(2)商品(ライトコース)、32(7)商品(標準コース)
三井住友銀行 24(0)商品(みらいプロジェクトコース)、
29(2)商品(標準コース)
みずほ銀行 28(1)商品
りそな銀行 32(2)商品(りそなつみたてiDeCoプラン)、
32(2)商品(りそな個人型プラン)
ゆうちょ銀行 34(8)商品
横浜銀行 21(1)商品
イオン銀行 24(1)商品
ソニー銀行 28(0)商品
野村證券 27(1)商品
大和証券 22(1)商品
SBI証券 38(1)商品(オリジナルコース※除外予定商品を除く)、
37(1)商品(セレクトコース)
楽天証券 32(1)商品
※各金融機関のHPより(2020年12月時点)

3. iDeCo(イデコ)を始めるならどの銀行がいい?メガバンク・ネット銀行5行を比較

銀行でiDeCoを始めるならどの銀行がいいのか。ここではメガバンク3行とネット銀行2行について、金融機関選びのポイントになる項目を一覧で比較してみよう。

銀行名 口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理手数料
取扱商品数
元本確保型 投資信託
三菱UFJ銀行
(ライトコース)
260円 2 8
三菱UFJ銀行
(標準コース)
385円 7 25
三井住友銀行
(みらいプロジェクトコース)
0円 0 24
三井住友銀行
(標準コース)
260円 2 27
みずほ銀行 条件を満たす場合
0円
条件を満たさない場合
260円
1 27
イオン銀行 0円 1 23
ソニー銀行 条件を満たす場合
0円
条件を満たさない場合
319円
0 28
※各金融機関のHPより筆者作成(2020年12月時点)

iDeCoを取り扱う銀行のうち、無条件で口座管理手数料(運営管理手数料)が無料なのはイオン銀行と、三井住友銀行のみらいプロジェクトコースに限られる。そのほかの銀行では、みずほ銀行とソニー銀行が口座残高や月額掛金額などの条件を満たす場合に、口座管理手数料が無料になる。それぞれの銀行の特徴をより詳しくみていこう。

三菱UFJ銀行……ライトコースと標準コースから選択、iDeCo(イデコ)の口座管理手数料は有料

三菱UFJ銀行のiDeCoには、商品ラインアップを絞った「ライトコース」と、「標準コース」の2つのコースがあり、いずれかを選択する。

  ライトコース 標準コース
口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理機関手数料
260円 385円
商品ラインアップ <投資信託>
8商品
<元本確保型>
2商品
運用商品一覧(ライトコース)
<投資信託>
25商品
<元本確保型>
7商品
運用商品一覧(標準コース)
サポート <相談窓口>
銀行店舗
iDeCo専門コールセンター(平日・土日祝日20時まで対応)
※三菱UFJ銀行HPより筆者作成(2020年12月時点)

ライトコースは、対象商品が人気インデックスファンド「eMAXIS」シリーズ8商品と元本確保型2商品に限られるが、口座管理手数料は標準コースよりも安く設定されている。いずれのコースも口座管理手数料は有料であるため、その点はマイナスポイントだといえる。

iDeCoに関する相談や問合せには、銀行店舗のほか、iDeCo専門のコールセンターで平日・土日祝日問わず20時まで対応しており、サポートは手厚い。

三井住友銀行……みらいプロジェクトコースはiDeCo(イデコ)の口座管理手数料が無料

三井住友銀行のiDeCoには、「みらいプロジェクトコース」と、「標準コース」の2つのコースがあり、いずれかを選択する。

  みらいプロジェクトコース 標準コース
口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理機関手数料
0円 260円
商品ラインアップ <投資信託>
24商品
<元本確保型>
なし
運用商品一覧
(みらいプロジェクトコース)
<投資信託>
27商品
<元本確保型>
2商品
運用商品一覧(標準コース)
サポート <相談窓口>
銀行店舗
iDeCo専門コールセンター(平日21時まで、土日17時まで対応)
※三井住友銀行HPより筆者作成(2020年12月時点)

みらいプロジェクトコースでは、ESG投資(社会や環境を意識した経営を行う企業への投資)やビッグデータ・AI・フィンテックなど、みらいにつながる先進的なテーマ性の商品を多く取り揃えているのが特徴だ。つみたて投資を始めてほしいというコンセプトから、元本確保型商品のラインアップはない。また加入者1人あたり年間100円を、銀行から未来を支える子ども達に寄付する仕組みもある。無条件で口座管理手数料が無料である点は大きなメリットだ。

標準コースは、インデックスファンドからアクティブファンドまで幅広い商品を取り揃えているが、毎月260円の口座管理手数料がかかる。

みずほ銀行……満たしやすい条件でiDeCo(イデコ)の口座管理手数料が無料になる

みずほ銀行のiDeCoでは、次の条件のいずれかを満たせば口座管理手数料(運営機関手数料)が無料になる。

・条件A:iDeCo残高または掛金累計額が50万円以上の場合
・条件B:次の(1)〜(3)までを全て満たす場合
⑴月額掛金1万円以上(年単位拠出の場合、年間掛金額12万円以上)
⑵iDeCo専用ウェブサイトでメールアドレスを登録
⑶「SMART FOLIO<DC>」で目標金額登録

条件Aは加入後すぐに条件を満たすことはできないが、条件Bは比較的満たしやすい条件といえる。

  条件を満たす場合 条件を満たさない場合
口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理機関手数料
0円 260円
商品ラインアップ <投資信託>
27商品
<元本確保型>
1商品
運用商品一覧
サポート <相談窓口>
銀行店舗
iDeCo専門コールセンター(平日21時まで、土日祝日17時まで対応)
<ポートフォリオ提案>
ロボアドバイザー・SMART FOLIO<DC>
※みずほ銀行HPより筆者作成(2020年12月時点)

商品ラインアップには、低コストのインデックスファンド「たわらノーロード」シリーズや、複数の資産カテゴリーに投資し、安定的なリターンを目指すバランスファンド「投資のソムリエ」シリーズをはじめ、幅広く取り揃えている。

みずほ銀行のiDeCo加入者は、ロボアドバイザー「SMART FOLIO<DC>」を無料で利用でき、リスク許容度や投資目標に応じた資産配分や投資商品の提案を受けられるのも特徴だ。

イオン銀行……iDeCo(イデコ)の口座管理手数料は無条件で無料

イオン銀行のiDeCoはみずほ銀行が運営管理機関であるため、商品ラインアップや各種サポートなどはみずほ銀行のiDeCoに近い内容になっている。条件なく口座管理手数料が無料である点は魅力だ。

口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理機関手数料
0円
商品ラインアップ <投資信託>
23商品
<元本確保型>
1商品
運用商品一覧
サポート <相談窓口>
銀行店舗
iDeCo専門コールセンター
(平日21時まで、土日祝日17時まで対応)
<ポートフォリオ提案>
ロボアドバイザー・SMART FOLIO<DC>
※イオン銀行HP、みずほ銀行HPより筆者作成(2020年12月時点)

商品ラインアップは、「たわらノーロード」シリーズや「投資のソムリエ」シリーズなど、みずほ銀行のiDeCoと共通する商品も多い。バランスファンドのラインアップはみずほ銀行のほうが充実している印象だが、イオン銀行では人気のアクティブファンド「ひふみ年金」の取り扱いがあるなどの違いがある。

みずほ銀行のロボアドバイザー・SMART FOLIO<DC>は、イオン銀行のiDeCoでも利用できる。

ソニー銀行……条件を満たすとiDeCo(イデコ)の口座管理手数料が無料

ソニー銀行のiDeCoもイオン銀行同様、みずほ銀行が運営管理機関であるため、商品ラインアップや各種サポートなどはみずほ銀行のiDeCoに近い内容だ。次のいずれかの条件を満たす場合、口座管理手数料が無料になる。条件を満たせないと手数料が割高になるため要注意だ。

・条件A:iDeCo残高または掛金累計額が50万円以上の場合
・条件B:月額掛金1万円以上(年単位拠出の場合、年間掛金額12万円以上)かつ掛金引落口座がソニー銀行である場合

  条件を満たす場合 条件を満たさない場合
口座管理手数料
(月額・税込)

※運営管理機関手数料
0円 319円
商品ラインアップ <投資信託>
28商品
<元本確保型>
なし
運用商品一覧
サポート <相談窓口>
iDeCo専門コールセンター
(平日20時まで、土日17時まで対応)
<ポートフォリオ提案>
ロボアドバイザー・SMART FOLIO<DC>
※ソニー銀行HPより筆者作成(2020年12月時点)

商品ラインアップは、「たわらノーロード」シリーズや「投資のソムリエ」シリーズなど、みずほ銀行のiDeCoと共通する商品も多い。バランスファンドが充実しているほか、「ひふみ年金」などのアクティブファンドと、インデックス(パッシブ)ファンドをバランスよく取り揃えている。

ロボアドバイザー・SMART FOLIO<DC>は、ソニー銀行のiDeCoでも利用できる。

4. iDeCoの金融機関は重視するポイントで比較してから選ぶのがおすすめ

iDeCoはコストの安さ、投資したい商品があるか、サポート体制、利便性など、どのような点を重視するかによって、適した金融機関は人それぞれ違ってくる。銀行以外の選択肢も含めて比較し、より自身にあった金融機関を選ぶようにしたい。

執筆・竹国弘城(ファイナンシャルプランナー)
証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの方がお金について自ら考え行動できるよう、お金に関するコンサルティング業務や執筆業務などを行う。RAPPORT Consulting Office 代表。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎

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