●全長を伸ばしてPHEVを搭載
ひそかに注目の"実質的に使えるEV"本命が登場した。2020年12月発売の三菱エクリプスクロスPHEVだ。
そもそもは3年前の2017年に発売されたクロスオーバーSUVで、そういう意味で新しさはない。
だが、わずか3年ぶりのマイナーチェンジにも関わらず、フロント35mm、リア105mmの計140mmも全長を伸ばし、フロントはバンパーやヘッドライト回りはもちろんボンネットまで新作してイメチェン。
リアも樹脂部を刷新して上下二分割されていたウィンドウを今回1枚ガラスに。マジメな話、マイナーチェンジに留まらない改良が加えられている。
最大のポイントは兄貴分のアウトランダーPHEVに搭載されていたプラグインハイブリッドシステムの移植。
兄貴分はコレまでPHEVモデルとして世界最多の累計26万台を誇る人気モデル。そのパワートレインをさらにコンパクトで使い勝手のいいエクリプスクロスに移したわけで、しかも価格はアウトランダーより安いのだから気になる。
今、電動化が取り沙汰され、ピュアEVの日産リーフなども出ているが、価格にしてそれほど安くない上、コンパクトカーなので使い勝手も限られる。
しかし、このエクリプスクロスPHEVは、384万円台から買える価格にして、5名の大人がゆったり座れる居住スペースと、350L強のラゲッジ容量を備えている上、ピュアEVのような電欠もない。
たとえ車載電池を使い切ってピュアEVとして走れなくなっても、搭載したガソリンエンジンを使って効率の良いHV、それも便利なSUVとして使えるのだ。
加えて、三菱独自の電動四輪駆動制御による楽しいハンドリングも味わえる。まさに「使えて楽しい実質的EV」として秘かな大本命なのである。
●モーターによる超滑らかな発進加速
まず実車チェックだがスタイリングがいい。マイナー前も独特の角刈りっぽいエッジ感がセクシーだったが、今回前後セクションの変更により、より伸びやかでエレガントに生まれ変わった。
主に樹脂部の改良によるデザインチェンジとは思えない破綻の無さだ。
ヘッドライトは新たにフロント上部がデイタイムランニングライトとウインカーに置き換わり、LEDヘッドライトはフォグランプと一緒に下部に移った。昨今の三菱得意のユニークライト配置デザインだ。
インテリアは基本的なデザインに変更はないが、PHEVモデルに新色が追加されたのと、センタモニターが7インチから8インチに拡大。もっと大きくても良かったとは思うが、それなりにアップデートされている。
一方、ラゲッジだが今回のマイチェンでPHEV化されると同時に全長が伸びて、かつてあったリアシートスライドを廃止。ガソリン車が405L、PHEV車が359リッターの容量を備えることになった。
なにより走りの性能だ。エクリプスクロスPHEVは13.8kWhのリチウムイオン電池を搭載し、WLTCモードで57.3km走る。
一応アウトランダーと同じ128psの2.4Lガソリンエンジンを備えているが、それはほぼ発電専用。駆動は実質フロント82ps、リア95psの前後ツインモーターで行う。そしてこれが予想以上に楽しいのだ。
システム出力に勝るトヨタ流ストロングハイブリッドをベースにしたRAV4PHVと違い、加速はほぼ純粋に電気モーターのみで行うから発進から追い越し加速まで超滑らか。シフトショックのような振動は一切ない。
オマケに、かつてのランサーエボリューションの制御技術を取り入れた電動力ベースのS-AWC制御がすごい。
車重にして1.9トン、車高1.7m近いSUVでありながら、スポーツカーのようにスイスイ曲がるのだ。
ついでにいうと、5パターン選べるドライビングモードを、最もスポーティなターマックモードにするとよりグイグイ曲がる曲がる。ランエボを思わせる回頭性の良さなのだ。
もちろん300万円台後半スタートは決して安くないが、ピュアEV同様にフル充電状態から40km程度は完全EV走行ができる上、5名の乗員と十分な荷物、さらにハンドリングが楽しい"半分EV"の三菱エクリプスクロスPHEV。
価格的にも使い勝手的にも、ピュアEVに今ひとつ踏み切れないアナタ。意外に悪くない選択だと思うがどうだろうか?
(提供:CAR and DRIVER)