2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大をきっかけに世界的な金融緩和時代に突入し各国の株式市場が大きく変わる年となりました。なかでも時価総額や取引金額が他の市場と比べて圧倒的に大きく世界の株式市場に日々多大な影響を及ぼしている米国の株式市場はどのように変化しているのでしょうか。

米国株式市場とは?

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(画像=JBOY/stock.adobe.com)

米国の株式市場とは、世界最大の経済大国となるアメリカ合衆国の株式市場のことをいいます。個人消費の構成比の高い米国は、移民の増加や平均年齢の引さなどの影響もあり主要先進国で比較すると潜在成長率が高くGDPについても世界最大です。日本の株式取引は、東京証券取引所(東証)などで行われます。米国の株式取引は、ニューヨーク証券取引(NYSE)とナスダック(NASDAQ)の2つです。

ニューヨーク証券取引所(NYSE)

ニューヨーク証券取引所は、1792年に設立され世界最古の取引所であるアムステルダム証券取引所(1602年設立)、ロンドン証券取引所(1802年)と並び、古い歴史を持つ証券取引所です。その伝統と取引所の評判を守るために世界一上場審査が厳しいとされています。上場企業には日本でもなじみのある「コカ・コーラ」や「マクドナルド」、大手投資銀行の「ゴールドマン・サックス」などさまざまです。

また米国最大級のスーパー「ウォルマート・ストアズ」などといったたくさんの大型優良企業や各国のグローバル企業が名を連ねています。日本からは「ソニー」「ホンダ」「トヨタ」のほか「三菱UFJファイナンシャル・グループ」などが米国預託証券(ADR:American Depositary Receipt)を発行する方式で上場している市場です。

米国預託証券とは、裏付けとして米国以外の企業や政府などが発行した株で、米国で発行された有価証券のことを指します。

ナスダック(NASDAQ)

ナスダックは、1971年に世界初の電子株式市場として設立された市場で新興企業向けとしては世界最大の規模を誇る株式市場です。例えばGAFAM(ガーファム)と呼ばれる「Google」「Amazon」「Facebook」「Apple」「Microsoft」など成長力のあるIT企業が多いのが特徴。ニューヨーク証券取引所と同様にナスダックにも「任天堂」「日産自動車」「三井物産」「三菱電機」といった日本企業が上場しています。

米国株式の主な指数には何がある? 

米国株式市場には「NYダウ」「ナスダック総合指数」「S&P500」という3つの代表的な指数があります。

NYダウ(INDU)

NYダウは、米国で1896年から算出されたもっとも古い株式指数で「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」が正式名称です。ダウ・ジョーンズ社が米国株式市場に上場している企業から、成長性や投資家の関心の高さなどから「アップル」「マクドナルド」「マイクロソフト」など30銘柄で構成されています。

ちなみに30銘柄については、時代の流れに合わせて1~2年に1社ほどの頻度で入れ替えが行われており2021年2月現在ではIT関連銘柄が多く採用されているのが特徴です。

ナスダック総合指数(CCMP)

ナスダックに上場している3,000を超える全銘柄を対象に時価総額加重平均方式で算出したものがナスダック総合指数です。1971年2月5日の時価総額を基準にその値を100として算出しています。今回のコロナ禍でテレワークやインターネット通販が普及・拡大したことに起因しハイテク関係そしてIT関連企業が急激に成長しました。

2020年6月には1万ポイントを超える水準にまで急上昇しその後も最高値を更新しています。

S&P500

S&P500は、NYダウとナスダックに上場している企業から代表的な500社をスダンダード・アンド・プアーズ社が選定して算出する株価指数です。米国における2つの株式市場の中から500社をカバーしており時価総額の約75%を占め株式市場全体の動きを表す指標として機関投資家などに広く利用されています。

では、過去20年間にこれらの指数や日本の株価がどのように動いたのか見てみましょう。

 1999年12月2009年12月2019年12月直近10年間における上昇率
NYダウ(ドル)1万1,4971万4282万8,538約273%
ナスダック総合4,0632,2698,972約395%
S&P5001,4641,1213,219約287%
日経平均(円)1万8,9341万5462万3,656約224%

各指数および株価における過去20年間の推移を見てみると2008年に起きたリーマンショックの影響で一時落ち込んでいるものの直近10年間では各指数および株価ともに200%以上の上昇率です。特にナスダック総合指数の上昇率は400%に迫る勢いで3つの指数の中でも際立っています。なぜならナスダックは、時代のニーズを取り込みながら銘柄の入れ替えを繰り返して成長してきた市場だからです。

採用されているハイテクやIT関連企業の株価が急上昇したことが起因となっています。また米国では、日本と違い単元株制度がなく「1株から投資できる」「確定拠出年金が普及している」などが特徴です。個人投資家による投資信託や株式への投資割合が約5割と日本の約3.5倍にも上り非常に高いことも指数の値が上昇した背景にあるといえるでしょう。

米国の金融政策と株式市場の動向について 

新型コロナウイルス感染症の拡大による市場急落を受け2020年3月以降米国では、ゼロ金利政策や量的緩和など積極的な金融緩和政策を実施。さらに新型コロナ経済対策法の成立など大規模な財政政策と相まって金融市場は少しずつ落ち着きを取り戻してきました。しかし経済活動の水準は、コロナ前を大きく下回っています。

なかでも雇用情勢については、著しく悪化しており依然として継続的な政策支援が必要な深刻な状態です。

具体的な政策内容

2020年9月に開催されたFOMC(米国連邦公開市場委員会)では「インフレ率が2%に上昇してしばらくの間2%をやや上回るとの見通しに沿うまでこの目標レンジを維持する」としています。政策金利(短期金利)を0~0.25%に据え置きました。あわせて量的緩和政策として国債や住宅ローン担保証券(MBS)の大規模な購入(米国債を月800億米ドル、MBSを月400米億ドル)も継続が決定しています。

また2020年9月時点で「2023年末まで利上げはない」との見通しを世界に対して発表し今後政策金利のゼロ水準が長期化する見通しとなりました。新型コロナウイルス感染症拡大による市場急落後、一連の金融緩和策が功を奏します。以下のナスダック総合指数の推移を見ても2020年6月にはコロナ禍前の水準にまで急速にV字回復しその後も一時的な下落局面はあるものの成長を続けています。

ナスダック100指数
(画像=YANUSY編集部)

これは、2020年3月に政策金利水準をゼロにまで引き下げたことにより米国債への投資興味が薄れ量的緩和による過剰な流動性資金が一気に株式市場に流れ込んだ結果といえるでしょう。なかでもデジタルや抗ウイルス医薬、そしてヘルスケア企業といったコロナ禍で高成長を遂げているナスダック採用銘柄に投資資金が集中していることがうかがえます。

今後注目しておきたい指数 

2020年の米国株式市場は、IT関連企業の急成長が見られた一方でエネルギーや金融などが出遅れた結果となりました。ただ2021年2月現在では追加経済対策や新型コロナワクチンの接種開始などから景気回復に対する期待が高まっています。2021年は、景気回復と企業業績の本格的な回復が期待されることからウィズコロナの概念のもと「堅調な展開が継続するのではないか」と予測されている状態です。

このような状況を鑑み米国株式市場において今後注目しておきたい指数を以下に紹介します。

ナスダック100指数

ナスダック100指数とは、米国のナスダック市場に上場する全銘柄から金融株を除いた時価総額上位100銘柄の株価から、時価総額加重平均方式を用いて算出される株式指数です。ナスダック100は、ナスダック市場に上場し時価総額が上位100位以内にあれば米国企業でなくとも指数を構成する銘柄となり得ることからS&P500よりも厳選された企業で構成される指数といえます。

また金融株を除いている特性からIT企業の動向を探る点でより正確な判断材料としての利用が期待されています。

S&P500ESG指数

S&P500ESG指数とは、S&P500の銘柄からたばこや武器に関与している企業を除くなどのESG要素を加味した銘柄で構成された指数のことです。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つを重視するESG投資では環境と企業統治への取り組みが中心でした。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大により従業員の健康・安全や雇用の維持など社会に対する注目が高まってきています。

今回の新型コロナウイルス感染症拡大を機に「ESG投資が好パフォーマンスにつながる可能性がある」という新たな事実が確認されています。そういった意味でもS&P500ESG指数はチェックしておきたい指数といえるでしょう。 (提供:YANUSY

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