コロナ禍で明暗が分かれた東京都心と周辺エリアの空室率
(画像=PIXTA)

コロナ禍で明暗が分かれた東京都心と周辺エリアの空室率

(三鬼商事「オフィスマーケット情報」など)

データサイエンティスト 博士(経済学) / 久永 忠
週刊金融財政事情 2021年5月4日号

 コロナ禍を契機としたリモートワークの広がりにより、オフィスの空室率は上昇傾向にある。特に東京都心部オフィスの空室率には、変化がはっきりと表れている。

 三鬼商事「オフィスマーケット情報」によると、都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)におけるオフィス空室率(新築ビルと既存ビルの平均値)は、1回目の緊急事態宣言が発出される前の2020年3月(1.50%)までは緩やかな低下傾向にあったが、同月からわずかな上昇に転じた。緊急事態宣言が解除された直後の6月(1.97%)には前月比0.33ポイント上昇し、ここから毎月0.16~0.8ポイントの上昇が継続。2回目の緊急事態宣言解除後の今年3月には、空室率が5.42%に達している(図表)。この間、13カ月連続で空室率は上昇しており、国内で初めて新型コロナ感染者が発生した昨年1月(1.53%)と比較すると、実に3.5倍の空室率となっている。

 昨年8月には平均賃料が下がり始めている。7月に2万3,014円だった1坪当たり平均賃料は、8月には2万2,822円に低下。今年3月の2万1,541円まで下落が続いており、この期間で6%以上の低下となった。オフィスビルの賃料は、空室率が5%を超えると下がるといわれており、今年2月が5.24%、3月が5.42%となっていることから、しばらく下落が続くとみられる。

 他方、東京周辺エリアの空室率は低下している。三幸エステート「オフィスマーケット調査月報」によると、千葉・船橋エリアの大規模ビルの空室率は昨年5月に8.04%だったが、翌6月には6.19%まで大きく低下。7月に一度6.91%まで上昇したが、以降は低下傾向にあり、今年3月には6.77%になっている。

 横浜市とさいたまエリアにおいても、空室率の上昇は昨年秋ごろには天井を打って、低下傾向を示すようになっている。横浜市は昨年11月に2.23%だった空室率が、今年3月には1.80%まで低下した。さいたまエリアは昨年12月に1.55%だった空室率が、今年3月には1.3%になっている。

 これらのデータを見る限り、今後は賃料相場、ひいては不動産価格そのものが東京都心において下がり、周辺エリアで上がることが予想される。

コロナ禍で明暗が分かれた東京都心と周辺エリアの空室率
(画像=きんざいOnline)

(提供:きんざいOnlineより)