ストックオプション制度を活用して億越えの利益を上げた話題を耳にしたことがあるかもしれません。しかしながら、ストックオプション制度とはどんなものなのか、きちんと理解していない人もいるのではないでしょうか?今回は、意外と知らないストックオプション制度の内容や種類、メリット・デメリットまでまとめて解説していきます。

目次

  1. ストックオプション制度ってどんなもの?
  2. ストックオプションの種類
  3. ストックオプションが向いている企業は?
  4. ストックオプション制度のメリット
  5. ストックオプション制度のデメリット
  6. ストックオプションは夢のあるインセンティブ制度

ストックオプション制度ってどんなもの?

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(画像=taa22/stock.adobe.com)

まずは、ストックオプション制度がどんなものなのか、基礎知識を確認していきましょう。

ストックオプションとは

ストックオプションとは、会社が役員や従業員に向け、決められた期限内であれば決められた価格で会社の株式を取得する権利を与える制度のことです。期間や数に一定の規定がありますが、決められた範囲内であれば、ストックオプションを付与された社員は自社株を自由に購入することができます。

ストックオプションの仕組み

ストックオプションは、自社株の購入を強制するものではなく、従業員の頑張りにより利益が得られる可能性があるという、インセンティブ制度のひとつです。ストックオプションを株価が上昇したタイミングで行使することで、市場価格よりも安く株式を取得することができ、売却すれば購入価格と市場売却価格の差額が利益となります。

一例として、現在の株価が1株当たり500円だった場合、企業が従業員に対し「今後5年間はいつでも1株500円で購入することができます」とストックオプションを付与したとしましょう。

それを受け、従業員の努力が実を結び、1株当たり1,000円になった場合、1,000円の価値がある株を500円で買うことができます。権利行使して購入、すぐに売却すれば、1株当たり500円の利益が得られることとなるのです。

ストックオプションを付与された社員は、市場株価との差額が利益となり、差額が大きくなれば比例して儲けも大きくなります。上手く活用できれば従業員はもちろん、株価の上昇により、会社や株主にとっても利益となるのが、ストックオプションの仕組みです。

ストックオプションの種類

ストックオプションには、大きく分けて無償ストックオプションと有償ストックオプションがあり、その中でもいくつかの種類があります。代表的な4つのストックオプションについて確認していきましょう。

無償税制適格ストックオプション

無償ストックオプションは原則として、給与所得となります。そのため、ストックオプションで獲得した利益は、税金が発生するのが基本。それに対して、いくつかの税制適格要件を満たすことで課税を免れる優遇措置があるのが、無償税制適格ストックオプションです。

1年間の権利行使価格は1,200万円以下、社外の人への割り当ては不可など、さまざまな条件がある税制適格要件をひとつでも満たせなければ、税制非適格となり最大55%の累進課税が課せられることとなります。

1円ストックオプション

無償税制非適格ストックオプションの活用型で、権利行使価格を1円に設定されているのが1円ストックオプションです。権利行使時の株価から1円を控除した金額が利益となるため、株価とほとんど同じ利益が得られることとなるのが、1円ストックオプションの特徴。

株式で報酬を支払うときに用いられるケースが多いため、株式報酬型ストックオプションと称されることもあります。1円ストックオプションは退職金として用いられるケースが多いようです。退職金に使われる場合、給与課税よりも税率が低い、権利行使時の現金の負担がほとんどないなど、権利を活用しやすいのがメリットになります。

有償ストックオプション

権利を行使する際に支払いが発生するのが、有償ストックオプションです。会社が発行したストックオプションを従業員が購入することで、権利が付与されることとなります。

無償税制非適格ストックオプションの場合は給与所得とみなされ給与所得課税がかかりますが、有償ストックオプションの場合は、給与所得ではなく金融商品とみなされます。そのため、かかるのは譲渡課税のみとなっており、無償税制非適格ストックオプションよりも税率が低くなるのが特徴です。

信託型ストックオプション

有償ストックオプションの活用型として最近登場した仕組みが、信託型ストックオプションです。発行したストックオプションをまとめて信託すると同時に、従業員に対してストックオプションに交換可能なポイントを付与、満了時のタイミングでポイントに応じたストックオプションを割り振るというもの。

会社と従業員の間に受託者を挟む、間接的な給付となります。割当先を発行後に決められるのがメリットです。

ストックオプションが向いている企業は?

ストックオプション制度導入のメリットが大きいかどうかは、企業によって異なります。ストックオプション制度の利用が向いているのは、株式上場を目指している中小企業やベンチャー企業、成長中の上場企業です。

すでに成長しきっている企業の場合、株価は安定しているかもしれませんが、短期間で株価が上昇することはほとんどなく、ストックオプションにおける利益は少なくなります。そのため、報酬としての魅力は弱くなるでしょう。

反対に、成長途中のベンチャー企業の場合、短期間で株価が急上昇することもあり得るため、ストックオプションの価値も高くなります。

ストックオプション制度のメリット

ストックオプション制度のメリットについて、把握していきましょう。

優秀な人材確保につながる

ストックオプション制度があることで、将来的なインセンティブを狙う、優秀な人材の確保につながります。優秀な人材を、お金をかけずに確保することができるのが、ストックオプションのメリット。

権利を付与されれば、行使して報酬を得たいと考えるのは自然の流れなので、権利が行使できるまでは退社しないと考える人も多く、人材の流出を防ぐという側面もあるでしょう。

社員のモチベーションを高める

自社の業績と株価が上昇すればするほど、得られる利益は多くなるのが、ストックオプションの仕組みです。頑張りが株価という目に見える形で反映されるため、社員が会社の価値を上げるというひとつの共通した目標を持つことにつながります。

報酬と企業価値が連動していることにより、働くうえでの社員のモチベーションが自然に高まるのが、ストックオプションのメリットです。

権利を行使しなければ損はしない

ストックオプション制度は、権利を行使しないという選択も可能。そのため、購入しなければ、損失を被ることはありません。

ストックオプション制度のデメリット

メリットを理解したら、次はデメリットです。ストックオプション制度には、どんなデメリットがあるのでしょうか。

株価が下がる可能性がある

株価は必ずしも上がるわけではありません。自社の業績以外の要因により、株価が下がるケースもあるでしょう。会社の業績が下がり、株価が下落してしまうと、報酬としての効果がなくなってしまいます。その結果、社員の士気が下がってしまうことになりかねません。

モチベーションを下げてしまうことも

ストックオプションを付与する配分次第では、従業員のモチベーションを下げてしまう可能性もあります。対象をどう絞るのかは、ストックオプション制度の活用が上手くいくかどうかの重要なポイントです。

ストックオプションの権利を、取締役や管理職のみなどと限定してしまった場合、不公平感から職場の空気が悪くなったり、部下に利益追求を強制したりするといったことも考えられるでしょう。従業員のモチベーションの低下は、業績にも影響を及ぼしかねません。

ストックオプションは夢のあるインセンティブ制度

ストックオプションは、社員のモチベーションを高めて業績アップにつなげる、会社にも従業員にもメリットのある制度です。株価は必ずしも上がるわけではないなどのデメリットも考えられますが、もしかすると思わぬ報酬が得られる可能性もあり、働くうえで頑張る源にもなりえるでしょう。

ストックオプションの仕組みを理解して、権利を最大限有効に活用してみてはいかがでしょうか。

執筆者:佐々木佐奈

(提供:JPRIME


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