会社員が不動産投資を始める場合、家賃収入にかかる税金が気になるのではないでしょうか。家賃収入は「不動産所得」に該当し、給与や賞与とは特徴が異なります。不動産所得の税金で困ることがないように、税務知識を深めておくことが大切です。

今回は不動産投資を始めたい会社員の方向けに、不動産所得の基礎知識について解説します。

不動産所得とは

不動産投資を始めたい会社員が知っておくべき不動産所得の基礎知識
(画像=successphoto/stock.adobe.com)

所得税法では、その性格によって所得を10種類に分類しています。勤務先から受け取る給与・賞与は「給与所得」です。一方、不動産投資で入居者から受け取る家賃収入は「不動産所得」に該当します。

所得税を計算するときは、収入の内容に応じて所得を分類しなくてはなりません。まずは、家賃収入は不動産所得に該当することを覚えておきましょう。

不動産所得は総合課税に該当する

総合課税とは、各種の所得金額を合計して税額を計算する方法です。不動産所得は総合課税に該当し、給与所得や事業所得などと合算して所得税を計算します。

総合課税の所得税率は5~45%の7段階に区分されており、所得金額が増えるほど税率が上がる仕組みになっています。不動産投資で家賃収入(不動産所得)を得ると所得税率が上がり、所得税・住民税の負担が増える可能性があります。

会社員の不動産所得は社会保険料には影響しない

会社員が不動産所得を得ると所得税・住民税は増えますが、社会保険料には影響しません。会社員の社会保険料(厚生年金保険料)は「標準報酬月額×保険料率」で計算します。

標準報酬月額とは、会社から毎月受け取る給与などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した金額です。標準報酬月額は給与額で判断されます。勤務先から受け取る給与に変化がなければ、不動産所得があっても社会保険料は変わりません。

会社員は給与所得と合算して確定申告が必要

会社員は勤務先で年末調整を受けられるので、収入が給与・賞与のみなら基本的に確定申告は不要です。しかし、不動産所得がある場合は給与所得と合算して税額を計算し、確定申告をしなくてはなりません。

毎年1月1日~12月31日の所得について、翌年2月16日~3月15日に確定申告を行い、所得税を納付します。期限内に申告を行わないと、通常納める税金のほかに無申告加算税などが課されます。自分で確定申告をするのが難しい場合は、税理士に依頼することも可能です。

不動産所得の計算方法

不動産所得の金額は以下の算式で計算します。

「不動産所得の金額=総収入金額-必要経費」

総収入金額から必要経費に含まれる費用を差し引くことで、不動産所得が求められます。

総収入金額に該当するもの

総収入金額は、家賃収入のほかに以下の収入も含まれます。

・名義書換料、承諾料、更新料、頭金などの名目で受領するもの
・敷金、保証金などのうち返還を要しないもの
・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代、掃除代など

該当する収入を総収入金額に含めないと、状況によっては脱税行為とみなされる恐れがあります。収入の内容を確認して、漏れのないように注意しましょう。

必要経費に含まれるもの

必要経費として計上できるのは、不動産収入を得るために直接必要な費用です。具体的には、収益物件にかかる以下の費用が含まれます。

・固定資産税
・損害保険料
・減価償却費
・修繕費
・管理費、修繕積立金(マンションの場合)
・賃貸管理委託料

減価償却とは、時の経過による建物の価値減少分を各年分の必要経費として配分していく手続きです。減価償却費は現金の支出を伴いませんが、建物の取得金額のうち一定額を毎年必要経費として計上できます。

収益物件がマンションの場合は管理費・修繕積立金、賃貸管理を管理会社に委託する場合は賃貸管理委託手数料も必要経費に含まれます。

不動産所得の節税ポイント

不動産投資で安定的に収益を得るには、節税をして税負担を減らすことが大切です。合法的な手段として節税に取り組めば、手元に残るお金が大きく変わってきます。ここでは、不動産所得の節税ポイントを紹介します。

経費に計上できるものは漏れなく申告する

不動産所得の節税では、経費に計上できるものは漏れなく申告し、少しでも所得金額を減らすのがポイントです。所得税額は所得金額に税率をかけて計算するので、所得金額が減れば節税につながります。必要経費に含まれるか判断できない支出がある場合は、所轄税務署や税理士に相談しましょう。

青色申告を検討する

青色申告とは、一定水準の記帳に基づいて正しい申告をする人について、所得金額の計算などで有利な取扱いを受けられる制度です。規模が大きくなって不動産の貸付けが事業として認められると、青色申告が可能となります。青色申告の主な特典は以下の通りです。

・青色申告特別控除
・青色事業専従者給与
・貸倒引当金
・純損失の繰越しと繰戻し

特に節税効果が大きいのが青色申告特別控除です。一定の要件を満たす確定申告書を期限内に提出すると、所得金額から最高55万円(e-taxによる電子申告の場合は最高65万円)を控除できます。

青色事業専従者給与は、配偶者や親族に支払った給与を必要経費に算入できる制度です。不動産投資を家族に手伝ってもらう場合は、節税対策として活用できる可能性があります。

青色申告の適用を受ける場合は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を所轄税務署に提出します。不動産投資の事業的規模の基準は「5棟10室」です。独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋ならおおむね5棟以上とされています。

最初から要件を満たすのは難しいかもしれませんが、将来の目標として事業的規模を目指してみてはいかがでしょうか。

不動産所得の確定申告の流れ

不動産所得の確定申告の流れは以下の通りです。

1.必要書類を準備する
2.決算書を作成する
3.確定申告書を作成する
4.確定申告書と決算書を税務署に提出し、税金を納付する

不動産所得の確定申告では取得した不動産や家賃収入、必要経費に関する書類を準備します。勤務先から受け取った源泉徴収票も必要です。必要書類が準備できたら日々の取引に基づいて帳簿をつけ、決算書や収支内訳書を作成します。

不動産所得の場合は「確定申告書B」という申告書を使用し、所得金額や税額を計算します。決算書と確定申告書の作成が終わったら期限内に申告を行い、税額を納付しましょう。

不動産所得を会社にバレないようにする方法

会社員の場合、社員の副業を禁止している会社もあるかもしれません。不動産所得を会社にバレないようにするには、以下の方法が考えられます。

不動産所得にかかる住民税を普通徴収にする

会社から不動産投資をやっていることをバレてしまう理由の1つが住民税です。会社員は、給与天引きで住民税を納めています(特別徴収)。不動産所得があると給与水準が変わらない他の社員より住民税が増えるため、会社にバレてしまいます。

会社にバレないようにするには、確定申告時に給与以外の住民税の納付方法を「普通徴収」にします。普通徴収とは、自治体から届く納付書で住民税を払う方法です。普通徴収を選択すれば、不動産所得にかかる住民税が会社に通知されないので、バレる可能性が低くなります。

不動産所得を赤字にしない

あわせて不動産所得を赤字にしないことも大切です。不動産所得は給与所得と合算して税額を計算します。不動産所得がマイナスの場合、給与所得にかかる住民税が低くなります。その住民税額が会社に通知されるので、会社にバレる可能性があります。

不動産を売却したとき所得は?

不動産投資では、所有不動産を売却することもあります。収益物件の売却益は不動産所得ではなく、「譲渡所得」に該当します。不動産の譲渡所得は、他の所得と切り離して所得税額を計算して確定申告を行います。

まとめ

会社員が不動産投資で家賃収入を得ると、不動産所得の確定申告が必要になります。必要経費を漏れなく計上して節税に取り組めば、税負担の軽減が期待できます。不動産投資を会社にバレたくない場合は、住民税の取扱いに注意しましょう。

(提供:Incomepress



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