ブロックチェーンベースの文章セキュリティ企業・トランスクリプト(Transcrypts)社は11日の記者会見で、10月14日に開始した国境なき医師団(DWB)とのパートナーシップを発表した。現在、すでに6500件の予防接種記録をブロックチェーンにアップロードしており、2022年までには7万6000件に達すると予想されている。
記録された情報は新型コロナウイルスワクチンの接種情報であるが、同社は最終的な目標として、全ての医療記録をブロックチェーン上に保存し、医療従事者が世界中どこからでもアクセスできるようにすることを挙げている。
Transcryptsの最高技術責任者アリ・ザヒア(Ali Zaheer)氏は「これらの記録はインターネットの接続の有無に関わらず、患者がモバイル機器やパソコンからでもアクセスできて医療従事者と共有することができる。また文書が分散型台帳に保存されているからこそ、医療文書保存のための最高のセキュリティとプライバシー基準を満たすことができる」と述べた。
Transcrypts社は今回提供するシステムにIPFS(Inter Planetary File System)を採用。医療データを数百のパーツに分けて暗号化しハッシュコードの形で分散保存させることでハッキングや漏洩を困難にしている。ハッカーはファイルの各パーツが世界中のどのサーバにあるのか、どのパーツがどのファイルのパーツなのかを推測し、それぞれをハッキングする必要がある。そのためハッキングや漏洩のリスクを最小限に抑えることができるという。
Transcrypts社はカリフォルニアの新興企業であり、昨年、当時はまだサンノゼ州立大学の電気工学の学生だったザイン・ザイディ(Zain Zaidi)氏によって設立された。現在は、Paychex社、ADP社、Zoom社、Spirit Airlines社、Oracle社など有名企業が同社の顧客となっている。
人事担当者向けのCV(履歴書)不正防止対策ツールの開発を皮切りに、収入証明書作成ツールなどの開発にまで拡大した。現在、同社は自らをフルサービスのドキュメンテーションサービスと名乗っている。
今回のDWBとの提携は、医療記録への初の進出となる。ザイディ氏は発展途上国における患者の医療記録へのアクセス性について、ブロックチェーンは多くの患者の命を助けることになると述べている。
また同氏は「インドでは患者の医療記録にアクセスできないことが原因で毎年70万人以上が亡くなっている。医師が患者の完全な医療記録にアクセスできれば、これらの死の大半は防げたはずだ。今回のパートナーシップにより、国境なき医師団とTranscrypts社は、この人命の損失を軽減できる未来を築くことを願っている」と目標を掲げた。(提供:月刊暗号資産)