2024年後半ごろから東京証券取引所の取引時間が70年ぶりに延長され、取引終了時間が現在の15時から15時30分となる見込みだ。日本株で資産運用をしている株式投資家であれば無縁とは言えないニュースだろう。営業時間延長による投資家への影響はあるのかについて解説していく。
現在の東京証券取引所の立会時間は?
投資家などへの影響を考える前に東京証券取引所の取引時間が延長される背景について解説していこう。まず取引時間は、正式には「立会(たちあい)時間」と呼ばれ東京証券取引所の現物株式の立会時間は9時~11時30分(前場)と12時30分~15時(後場)となっている。この後場の終了時間が「15時から15時30分に延長にされる」というのが今回のニュースだ。
この延長については、東京証券取引所を運営する日本取引所グループ(JPX)が2021年10月27日に正式に発表した。
立会時間を延長する背景は?
なぜ日本取引所グループは、東京証券取引所の立会時間の延長に乗り出したのだろうか。2021年10月27日に公表された「現物市場の機能強化に向けたアクション・プログラム」という資料でその理由が触れられている。
レジリエンス(対応能力)の向上
日本取引所グループがまず言及したのが「レジリエンスの向上」という観点だ。レジリエンス(resilience)とは、直訳すると「弾性」「回復力」となるがここでは「対応能力」といった意味でつかわれている。立会時間を延長することで仮に立会時間中に何らかの障害がシステムで発生しても当日中にシステムが復旧できる余地を増やしたのだ。
また2021年現在は、取引システムを再立ち上げしようとすると約3時間かかるが、この再立ち上げにかかる時間を1.5時間程度まで減らすことも目標の一つである。また前場や後場の前半でシステムトラブルが生じても立会時間中の復旧でその日の注文にその日のうちに対応できるようにする。
投資家の取引機会の拡大
詳しくは後述するが東京証券所の立会時間は、欧米の証券取引所などと比べて短い。そのため日本取引所グループには、立会時間を延長することで投資家の取引機会を拡大させる狙いもある。同資料の中でも以下のような明記がある。
「恒常的な立会時間の延伸には、投資家の取引機会を拡大し市場としての利便性を向上させるという面もある」
引用:株式会社東京証券取引所
立会時間延長が投資家に与える影響は?
ここまで東京証券取引所の現在の立会時間や立会時間を延長する背景について触れてきた。では、個人投資家にとってはどのような影響があるのだろうか。
デイトレードをする個人投資家への影響
デイトレードをしている個人投資家は「寄り付き」(市場が開いた直後)と「引け」(市場が閉まる直前)での取引を好む。なぜならこの時間帯は、取引が活発になるため、値動きが大きくなりやすくその値動きを狙えば大きな利益を出しやすいからだ。そのため例えばこれまで14時30分~15時にデイトレードをしていた個人投資家は、その時間帯を15時~15時30分にずらすことを強いられる。
長期目線での個人投資家への影響
長期目線で株式投資をしている人にとっては、2024年度における立会時間の延長はほとんど影響がないだろう。しかしあえて述べるならプラスの影響をもたらすかもしれない。短かった東京証券取引所の立会時間が少し長くなれば海外の投資家が積極的に日本市場に投資マネーを投じてくれる可能性もある。買いの需要が高まることで上値が軽くなることも期待できるだろう。
世界の主な株式市場の取引時間
最後に世界の主な株式市場の取引時間(現地時間)を紹介しておこう。
<世界の主な株式市場の取引時間の比較>
株式市場 | 国・地域 | 立会時間(現地時間) | 合計取引時間 |
---|---|---|---|
ニューヨーク証券取引所 | 米国 | ・9時30分~16時 | 6時間30分 |
ナスダック(NASDAQ) | 米国 | ・9時30分~16時 | 6時間30分 |
ドイツ取引所 | ドイツ | ・9時~17時30分 | 8時間30分 |
ロンドン証券取引所 | 英国 | ・8時~16時30分 | 8時間30分 |
東京証券取引所 | 日本 | ・9時~11時30分 ・12時30分~15時 | 5時間 |
香港証券取引所 | 香港 | ・9時30分~12時 ・13時~16時10分 | 5時間40分 |
上海証券取引所 | 中国 | ・9時30 分~11時30 分 ・13時~15時 | 4時間 |
出典:各取引所のホームページより株式会社ZUU作成
最も長いのは、欧州のドイツ取引所やロンドン証券取引所で8時間30分となっている。日本より3時間30分も長いのが特徴だ。米国の2つの株式市場も東京証券取引所より1時間30分長い。
いずれは欧米並みの立会時間の長さに?
前述の通り取引時間の長さが欧米の株式市場と同程度になれば日本市場に目を向ける海外の投資家も増えることが予測される。取引時間が延長されるのは、2024年度の後半の予定だが期待感が高まれば「さらに延長を」といった機運も高まる可能性もあるだろう。いずれは、欧米並みの立会時間になる日が来るのかもしれない。
(提供:manabu不動産投資 )
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