アジア開発銀行(ADB)が26日、ブロックチェーンを活用し、国境を越える多通貨による証券決済システムの実証実験を行うと発表した。この実証実験はアジア太平洋地域で初の事例となる。ブロックチェーンなどの最先端技術企業であるソラミツ、富士通、R3、コンセンシスと共同で行う。
このシステムは東南アジア諸国連合(ASEAN)、日本、中華人民共和国、大韓民国(総称:ASEAN+3)の加盟国の中央銀行と、中央証券保管機関により形成されているアジア債権市場イニシアチブ(ABMI)の国境を超えた決済インフラフォーラム(CSIF)の目的を前進させるという。
今回の取り組みに参加しているソラミツによると、現在、加盟国のなかには国内証券決済や国境を越えた支払いについて、ブロックチェーンの活用をテストしている国がある。今回のプロジェクトでは、ブロックチェーンのネットワーク上で、複数の通貨での支払いではなく、証券が国境を越え、即座に送信されることを検証する。証券の即時送信を検証する今回の取り組みは、アジアで最初のプロジェクトとなる。
現在のアジアにおける国境を越えた証券決済は、主に米国とヨーロッパにあるセンターを介してリンクされているカストディアンとコレスポンデント銀行(外国為替取引上、自行の海外支店の役割を果たしてもらうという契約を締結している相手銀行)のネットワークを通じて行われている。したがって、隣接するアジア諸国の通常決済であっても、米国、ヨーロッパのタイムゾーンの関係により少なくとも2日は要するという。
このような国際決済に伴うリスクとコストを削減するため、今回のプロジェクトではブロックチェーンネットワークを使用することで、ASEN+3の地域の中央銀行と証券決済機関を直接接続する。ソリューションとしては、複数のブロックチェーン間でトランザクションをブリッジするソラミツの「リレーチェーン」という技術を用いる。
ソラミツはカンボジア国立銀行(NBC)と協力し、即時に銀行間決済やリテール取引を可能にするブロックチェーンベースのデジタル通貨および決済インフラストラクチャである「バコン(Bakong)」を設計、構築した。バコンは現在約800万人のカンボジア人に利用されている。昨今、カンボジア国立銀行とメイバンクは従来の数分の1のコストでデジタル通貨の国境を越えるリアルタイム送金に成功している。
今回のプロジェクトでは、すでにブロックチェーンによるシステムを利用するカンボジア国立銀行などにはリレーチェーンへのブリッジ接続を支援し、ブロックチェーンベースのシステムを使用していない参加者にはソラミツら4社が協力しブロックチェーンによるシステムを設計、テスト、実装してリレーチェーンへ接続させる。
最終的に全ての参加者がリレーチェーンに接続されると、トークン化された証券が即時に国境を越えて送信され、複数のトークン化された通貨での支払いが可能になるという。設計段階は2022年の第1四半期末までに完了し、2023年の第2四半期までプロトタイプの開発を手掛ける予定だ。(提供:月刊暗号資産)